子供の頃、僕はよく透明人間になった。
 空き地で野球をしていた。
 僕はバットをかまえる。
 だけど、二塁ベースにも僕がいるのだ、透明人間な僕が。
 僕が打つとその透明人間が三塁へ走る。
 5人だけでも空き地でやる野球は大賑わいだ。 


 隣りの家の同級生のなっちゃんは女の子だからかくちが達者だ。
 おままごとにつきあわされたことはしょっちゅうだ。
 そのときなっちゃんにママがとりつき、
 透明人間のパパに、
 “お帰りのキスわ?!”と言ったのだ。
 なっちゃんは目をとじて、くちを少しだけとがらした。
 そのくちびるに透明人間のパパはキスをする。
 僕はなんだかとてもいけないところにいるような気がした。
 子供の頃、よく透明人間があらわれた。


 大人になった今でもたまに。
 グラマラスな女性が僕を抱きしめる。
 電気を消したなんにもみえない部屋で。
 君にはみえる?



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ねたあとに/長嶋 有
¥1,785
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 新聞に連載されていたそうだ。
 その書籍化。


 オチなんかない。
 物語がないかもしてない。
 あれ?でも、なんかおもしろいかも?!
 そんな本に思える。 
 意外とこれが心地よい。
 なんでだろう?