ドイツの大統領による今年の復活祭談話 | いいかげんにっき

ドイツの大統領による今年の復活祭談話

昨年、南ドイツ新聞に掲載されたドイツ連邦共和国大統領の復活祭談話(内容はコロナパンデミックに関するもの)を読み、授業担当していた大学生にも紹介しました。

今年の、2回目のコロナパンデミックに関する復活祭談話についての同じく南ドイツ新聞の記事を読みました。ただし談話の全文ではなく、南ドイツ新聞の記者によるまとめです。「民主主義への信頼とは、“自分自身を信頼すること”に他ならない」など、印象的な言葉があります。

 写真についたキャプション:ベルビュー宮殿(ドイツ連邦共和国の首都ベルリンのミッテ区にある宮殿であり1994年以降、ドイツ連邦大統領官邸である)でのコロナ・パンデミックにおける現在の状況に関するテレビ談話の録画中の 連邦大統領、フランク-ワルター・シュタインマイアー

 

以下翻訳です。

南ドイツ新聞 2021年4月3日の記事

 連邦大統領のアピール「皆で一緒に頑張ろう!」

 フランク-ワルター・シュタインマイアーは統治者たちを叱っている。あなたがたの争いとあなたがたの誤りはパンデミックのなかで信頼の危機をもたらすかもしれないと。市民たちのためにも、かれは助言している。

 (ベルリン駐在のニコ・フリート著)

 連邦大統領は、ドイツ人が普段聞かされていることから離れるためには、「13か月も経つと、我慢しなさいという標語はもはや役立たない」というほんの僅かな文章しか必要としないと語る。土曜日(4月3日)の晩にいくつかの放送局から放映される予定のコロナ・パンデミックに関するテレビ談話のなかで、フランク-ワルター・シュタインマイアーは、原稿によれば、そのように語る予定である。忍耐と理性と規律にたいするアピールのすべては「この気力を萎えさせる時代のなかではうつろ」に響くのでは、と国家元首である連邦大統領は述べる。無力と欲求不満の感情が広まっており、「そして健康、学校、労働、経済についての心配に、もうひとつの次元が加わります。すなわち信頼の危機が。」

 コロナ・パンデミックに関するシュタインマイヤーのテレビ談話は、1年前の復活祭での最初の談話に続いて2回目であるが、「信頼の危機」という批判的なトーンでの談話は初めてである。これは、従来、日々の政治を評価する際には控えがちだった連邦大統領の注目すべき所見である。シュタインマイヤーはそのことを次のように根拠づけている。すなわち、信頼は民主主義においては、「市民と国家の間の非常に脆弱な合意、すなわち国家であるあなたはあなたの役割を果たし、市民であるわたしはわたしの役割を果たす」ということにもとづいていると。そしてその後の文脈のなかで連邦大統領は、この合意の一方の当事者があまり正しく行っていないと、かなり明白にほのめかす。

「論争が自己目的になってはいけない」

 「あなたがた市民はこの歴史的危機のなかであなたがたの役割を果たしています」とシュタインマイヤーは言う。「あなたがたは多くのことを実行し、そしてあなたがたは多くを断念しています。」若干の人にあっては、ロックダウンにおいて久しくもはや失われた収入は重要ではなく、「存在感」が重要となっている。そうなるとその人はそれだけ「過去数ヶ月間の挫折についての焦りや欲求不満」をもっと理解していると、連邦大統領は述べる。多くが行われ、多くが達成された。「とはいえ、検査、予防接種、デジタル化にはミスがありました。」

 今後の数週間はもう一度「過酷な制限を求める」であろうとシュタインマイヤーは述べる。しかしパンデミックが市民に多くを求めるように、市民もまた多くを政治に要求しなければならない。「統治者へのあなた方の期待は明確です。すなわち“一緒に頑張ろう!”です。」シュタインマイヤーは、最近の連邦政府と各州、首相と各州首相との間の争いに加えて、将来への野心を持った政府首脳同士の対立についても、率直に言及している。

 パンデミックに王道はないゆえに、民主的な論争は必要である。「しかし論争が自己目的になってはいけません」とシュタインマイヤーは述べる。「連邦か州か、政党か連立政権か、世論調査のアップかダウンか、そのようなことは今、主要な役割をはたしてはならないのです。」明確性と徹底性が必要である。「わたしたちは分かり易く、かつ実践的な規制を必要としています。それによって人々が指針を持ち、それによってこの国が再び、その潜在力を引き出すことができるように。」

「世界チャンピオンでもなければ、完全な失敗者でもない」

 その後、談話の後半において連邦大統領はすべての市民の公共心に訴える。「他の人たちや、上にいる人たちに憤慨するだけでなく」、シュタインマイヤーは、あたかも自分は上にいる人たちに属していないかのように述べる。「いつも何がうまくいっていないのかを示すばかりではなく、皆がそれぞれの役割を果たせばうまくいくことを示そう。」 結局、民主主義への信頼とは、「自分自身を信頼すること」に他ならない。

 木曜日(4月1日)にベルリンの連邦軍附属病院において自身、1回目のアストラゼネカのワクチンを接種したシュタインマイヤーは市民に、予防接種を受けるように強く訴える。「予防接種はわたしたちがパンデミックから脱出するための最重要のステップです。-それゆえその可能性を利用しましょう!一緒にワクチン接種を受けましょう!」

 かれの談話の最後に、さらにシュタインマイヤーは白黒を強調し過ぎることを警告している。「数か月前、第一波の後、わたしたちは確かに満足感とともに自分たちをパンデミックの世界チャンピョンであるとみなそうとしていました」と、連邦大統領は回想する。そしてこの間にその気分は逆転していると連邦大統領は指摘する。「わたしは自分自身に問いかけます。なぜドイツでは常に最上級でなければならないのでしょうか-空高く歓喜するか、あるいは死ぬほど悲しむか。」ドイツはパンデミックの世界チャンピオンでもなければ、完全な失敗者でもない。「わたしたちは多くを疑っていますが、多くのことをすることもできています」とシュタインマイヤーは述べる。そして、そのことが今、肝心なのである。