ババアの時間は | 浮気願望、始めまし…

ババアの時間は

2015年9月4日

 

昼過ぎの収録を終えた時点で

 

社長からの電話がなった

 

「夜の録りバラシになったから」

 

「イエス マイロード」

 

「あとで事務所寄って。精神病院に紹介状書いてあげるから」

 

紹介状を胸ポケットにそっとしまい

 

空を見上げた

 

9月か

 

そうか…

 

夏も終わる…

 

32℃か

 

そうか…

 

わりかし夏…

 

絶好調だったわ…

 

ミンミンミンミン

 

うるせーんだよ

 

餃子屋じゃねーんだぞ

 

ニチレイの冷凍技術なめんなよ

 

二人前に白米…

 

いや白米は駄目だな冷奴にして

 

ザーサイも欲しいな

 

と脳内餃子スパーリングで額から肉汁を流し

 

東京駅から新幹線で岩手県の新花巻駅

 

 

新花巻駅前の日本レンタカー

 

「こんにちわタイヤが四ついてて走ったブゥゥゥゥンンだけガソリン入れて返さなきゃいけない面倒くさい鉄クズ一台貸してください」

 

「クレカ払いです」

 

「この俺を360°彩り豊かにガン見しやがれ。クレカなんて持ってる風にみえんのか?」

 

「現金前払いでいいすけど、担保が必要です」

 

「担保でも◯◯ぽでも置いてってやるわちょっと待ってろ」

 

軒先にひっそりと

 

しかし強く美しく咲いたタンポポ

 

をブチ抜き担保にし

 

俺は鉄クズに乗って釜石市へと向かった

 

 

これは年に一回の恒例来訪

 

京都 観光古都

 

北海道 でっかいどう

 

釜石市 なんにもねえよ

 

鉄鋼産業での栄枯盛衰を経て

 

今 岩手県釜石市に何よりも強く残るのは

 

被災地という側面だ

 

それ以外は 今は何もねえよ

 

こう言っては釜石住民に叱責を賜りそうだが

 

俺もかつては釜石住民だった

 

許してくれ

 

 

釜石新道を抜け

 

釜石駅前に着き 適当なホテルにチェックイン

 

用件は明日だ

 

付近でも散歩でもしようか

 

昔住んでいた地域周辺にでも行ってみようか

 

いや

 

昔の記憶が無駄に蘇っちまう

 

その今昔の比較が

 

気分に影を落とすだろう

 

多分

 

その影ってのは

 

東日本大震災とかではなく

 

ただの郷愁の念であって

 

「むかしはよかった」とかいう類の

 

大人の中二病

 

正直

 

東日本大震災に関しては

 

未だ実感は無く

 

大きな揺れの後

 

周囲の変化

 

情報の錯綜

 

住んだことのある街2つが波に飲まれる

 

それらを横目で追っているうちに

 

なんとなく実感した程度だ

 

東日本大震災の体験は

 

被災者にしか語れない

 

「明日は来るよ!」

 

「がんばれ!」

 

”家に帰ればベッドもご飯も仕事もある人達の言葉は響かない”

 

被災した知り合いの弁

 

なんだか考えるのも疲れた

 

夜飯はどうしようか

 

 

 

 

 

気がつけば21時

 

少し寝ちまった

 

なんでパンツ一丁なんだ

 

おっとなめんなよ

 

俺だってドリフ世代

 

KATO・CHAばりの弁えはあるつもりだ

 

やっとくか

 

へぇーーーっ  くしっ!

 

腹へった

 

駅前の商店街に向かう

 

 

釜石はまゆり飲食店街「呑ん兵衛横丁」

 

津波で本チャンは全部流されちまったからよ

 

今でも仮設店舗

 

外からフラッと覗いてみると

 

常連らしき作業服姿のおいちゃんらが点々

 

ちょっと入りづらいな

 

気不味いな

 

オレ ヒトミリシ

 

ミセ ハイラナイ

 

とネイティブアメリカンの吹き替えでその場を立ち去った

 

ちなみにこの時点ではパンツ一丁ではない

 

ちゃんとブラも着けている

 

ふう

 

少し早いがしょうがない

 

スナック瀬里奈へ行くしかあるまい

 

スナック瀬里奈

 

『こんばんわ♡戦後生まれの17歳♡』のご挨拶でお馴染み

 

キャストはほぼ大江戸の年齢×2という

 

最高のナイトスポットだ

 

「おらだらから見だら、おにーちゃんなんか精子だよ精子」

 

名言製造マシーン『ホタテのトミ子』60代

 

何故このピチピチギャルがホタテのトミ子かと言うと

 

ホタテを送ってくるからだ

 

店に来ただけの客に住所を聞いて

 

いきなりホタテを送りつけるのだ

 

「この住所でよく届いたな!」という

 

東京区 六本木区 (以下記載無し) みたいな

 

謎の住所で力強く送ってくる

 

クロネコテレフォンバンバン鳴ったわ

 

「ホタテありがとね!でも住所!名刺渡したろ見ろよババア!」

 

と言うと

 

「だってー、おらさ東京の住所よぐわがんねがらー♪」

 

ならしょうがない

 

待て

 

断っておくが

 

ババアと呼ぶのに許可は貰っている

 

能力者達はうすうす感づいているかもしれないが

 

 

この世の中は既に

 

ババア・ゾーンのインサイドにある

 

正確にはBBAではない

 

 

次世代型単式蒸留酒自動瓶類保持マシーン

 

~ V V A ~ だ

 

客のボトルを勝手に呑むという精密作業を

 

超ハイスピードで行う

 

一杯しか呑んでないのに半分無くなってる理由はここにある

 

地方のスナックには振り幅がある

 

「大江戸さん 最終的にはスナックなんですよ」

 

かの有名な殺し屋&ナレーターであるトビー上原氏の弁である

 

カウンターで静かに佇んでも良し=BAR

 

そこでカウンターのおねーちゃん(VVA)と談笑しても良し=ガールズBAR

 

ソファ座っておねーちゃん(VVA)と呑んでも良し(おねーちゃんは座らないけど)=キャバクラ・クラブ

 

出てくる軽食(たまに本気飯)を食べても良し=居酒屋・飯屋

 

カラオケを歌ってもよし=カラオケ屋

 

大江戸よし々

 

しかしこの店

 

お世辞にも活気があるとは言えないが

 

キャスト一人一人のテンションが高く

 

笑いに包まれている

 

妙なぎこちなさもないし

 

振り切っている感がある

 

居心地がいいのだ

 

流石は年の功といったところだろうか

 

俺はどうだ?

 

多種多様な経験を経て維持も拘りも削ぎ落ち

 

奔放に生きられるのだろうか

 

VVAを見ていると 自分もそうなりたいと思う

 

「あんたいくつだっけ?」

 

「平成生まれの34歳だよいい加減覚えろババア」

 

「ウチの子と同じだー 千葉の大学行ってたんだ」

 

「前に聞いたわ こっち帰ってきたんだっけ」

 

「うんだ 結婚してこっちさ帰ってきてたんだー」

 

「あーそうだそうだ」

 

「子供も産んでさー」

 

「前にも聞いたっつの!」

 

「んだっけがー?」

 

時刻は0時前

 

「ほんじゃ帰るわ また来年来るからボトル残しておいてよ」

 

「まだホタテっこ送ろが?」

 

「住所だけ本気で頼む!東京区なんて無いから!近未来の住所だからそれ!」

 

店を出る

 

 

 

ママは小学4年生

 

いや

 

ババアの娘は同い年

 

 

 

 

正確には

 

現在38・39歳

 

同い年で止まった

 

旦那も

 

孫も

 

ババアの家族全員が海に飲まれ

 

娘が同い年だった頃から歳をとっていない

 

この店のキャストのほとんどが

 

自分だけ歳を取り続けている

 

 

 

 

 

 

 

 

ババアは笑っている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

諸用を済ませ

 

昔住んでいた場所の近所を歩いてみた

 

毎日通った駄菓子屋も もう無い

 

家の裏のゲートボール場も埋め立てられた

 

街はただただ風化していくばかりだ

 

郷愁の念は強まるが

 

今から20年経ったら

 

今現在そのものに郷愁を抱くのだろう

 

同じ事を繰り返す

 

至極個人的で他愛ない想いだ

 

 

 

 

 

 

 

ババアは笑っている

 

ずっと笑っているという