オレたちのイタトマ | 浮気願望、始めまし…

オレたちのイタトマ

こんぼんら

幼なじみの俺だ

分かるのか?

全ての収録を終え

青山通りを反復縦飛びで家路に向かっている途中

俺はなぜか昔を思い出した

なぜだ

ミーンミンミン

中国ではセミが高値で売買されている

くまもんがサーキット場でキアヌ・リーブスとランディングしたらしいんだよ

俺は耳を疑ったね

夏になるといろんな音が聞こえる

匂いがする

それが郷愁を誘い 過去の記憶が頭をよぎるのだ

12年前

どっかの声優事務所に通っていた頃の話

一人の天才に出会った

いやどうだろう

天才?

少なくともその時点での俺からすれば天才だった

ただ 明らかに社会性の無い男で

その点を含めてギリギリ感がすごかった

俺はその男にとにかくまとわりついた

当時の彼女よりも会っていた

ちなみに 後に彼女は大学の先輩とやらと浮気して消えたが

置き土産にPS2を残していったからドッコイドッコイだと思った

その男は事務所のレッスン前

いつも俺をイタトマに呼び出した

イタトマとは ファミレスチェーンの一つだ

お互い余りにも金が無かったので

250円で無限に湧き出るコーヒーを啜っていた

たまに魔法瓶に溜めてた

レッスン前の議題はいつも同じだ

「今日のレッスン、仕掛けようよ」

仕掛けるとはつまるところ

何かしら爪痕を残そうという魂胆

無知・未熟故に、傷跡にもなりかねなかったが

当時はとにかく俺が俺が主義

もちろんレッスンの流れに則った仕掛けを画策していたのだが

その日は少し違った

「よっちゃん(大江戸)さ、そろそろラジオドラマのオーディションじゃん」

「そっすね。選ばれたいっすね」

「んで今日多分さ、レッスンで2人で組んでのエチュードあるじゃん」

「多分あると思います」

「そん時さ、俺さ、内股掛けていい?」

「え?は?」

「だからさ、柔道してさ、やろうよエチュードをさ」

「サイトウさん、ちょっとよく分からないんですけど…」

「いや俺も分かんないんだけど、なんかワァーって、こう、投げてさ」

「は…?」

「いやエチュードは心でやるよ?でも身体は柔道でさ」

「…いや、よくか分かんないスけど、とにかくまぁ柔道やるんすね」

「俺絶対オーディション受かると思うんだ。柔道でさ」

「いや…目立つでしょうけど、それはオーディションとは別に…」

そしてレッスンのエチュード

俺はサイトウさんと組み

待ち合わせをする男友達というエチュードをリアルにやることになった

最終的には地獄車でぐるぐる回りながら

レッスン場から出てフェードアウトするという

全く意味の分からないものになった

講師は大激怒し

その日 レッスン上への立ち入りを禁止されたが

翌週のラジオドラマのオーディションで

サイトウさんは主役を勝ち取った






俺が言いたいのはつまり

特に無い






ぱーぷりんぱーぷりん♡

余談だが

彼を天才だと自覚したのは

ある日突然声優を辞め

住んでいた実家も出て

行方不明になった時だ

未だにどこにいるか分からない











作戦は以上だ

練るぜ

あばよん太