日本共産党福岡県委員会が神谷貴行の除籍と解雇について発表した。

 

パトラトソクラは公表しないものと思っていたが、すでに本人にも通知を送っているので、それが公表される前に発表したのだと思われる。

 

まず、その中身を紹介し、簡単な即興解説を行いたい。

 

                               2024年8月19日

神谷貴行氏の除籍と解雇について
                               日本共産党福岡県委員会



日本共産党福岡県委員会は、2024年8月6日に開催した県常任委員会で、元県常任委員の神谷貴行氏が日本共産党員としての資格を自ら喪失したと判断し、除籍を決定しました。

また、党員としての資格を有することを前提とした県委員会勤務員規程にもとづき、8月16日付で神谷氏に解雇を通告しました。

神谷氏には、8月6日付で除籍理由を送付し、9日に設定した協議は、本人の申し出を受けて16日に行いました。神谷氏は協議の場で、「承服できません」と述べましたが、除籍理由への反論はありませんでした。

県委員会が神谷氏に通告した除籍理由は以下の通りです。



神谷貴行 様

県常任委員会の6月26日付の文書に対し、あなたから、7月12日付の文書が提出されました。私たちは、6月26日付の文書の中で、あなたが調査の場に来られないのであれば、提出された文書を審査し、それをもって規約にもとづく対応を判断することを伝えています。
県常任委員会は、この間に行われた2回の対面調査の内容および今回のあなたの文書について、慎重に検討しました。その結果について、お伝えします。

(1)あなたは、2023年3月5日付のブログ記事で、2月24日の県委員会総会の議論の内容を県常任委員会の了解を得ることもなく独断で公開し、そのなかで、県委員会総会で否定された「松竹伸幸さんの除名処分決定の根拠となった4つの理由はどれも成り立っていない」とする自分の意見を発表しました。

県常任委員会は、6月21日、あなたのこの行為が、党規約第五条(五)「党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない」および、第五条(八)「党の内部問題は、党内で解決する」に反することを確認しました。同時に、あなたに対し、党規約第四十八条にもとづく権利制限をおこなって、規約とその精神に反する行為について調査することを決定しました。そして、あなたにブログ記事の削除と自己批判を求めました。
ところが、あなたは、「そのような制約は規約に明記されていない」などと言って受け入れず、自己批判もしませんでした。

(2)あなたの県委員会総会での発言内容は、批判の対象とはなりますが、私たちはそれを規律違反としているのではありません。県委員としてのあなたの発言の自由、権利を保障し、発言の機会を認め、県委員会総会での自由な討論が行われました。しかし、あなたは、県委員会総会で誤りであると退けられた自分の意見を、県委員会総会の議論とともに、勝手にブログで発表したのです。県委員会総会での討論の内容を、それぞれの県委員が個人の判断で公開することを認めれば、総会での自由な討論を阻害することにもなります。県委員会総会の内容を公開する場合は、県常任委員会の責任で発表すべきことがらです。県委員会総会での討論内容を個人の判断で公開する行為は、党内での自由な発言、討論を保障した党規約の精神を踏みにじる行為です。

あなたは、さらに2024年3月7日にも、問題のブログ記事を再掲示し、規約に反する行為をくり返しました。そして、「(県常任委員会が)『ブログ記事を削除せよ』という決定を行えば、それに従う」と述べながら、削除を求めた県常任委員会の決定を受け入れず、ブログ記事をいまだに削除していません。
あなたは、2024年5月7日付のブログ記事(※注)を「創作」であると述べていますが、一連のブログ記事と照合すれば、党と党員を誹謗中傷したものであることは、誰の目にも明らかです。

(3)以上から、あなたは、規約を自分勝手に都合よく解釈しているのであって、実際には規約を守って活動する意思がないものと判断します。
県常任委員会は、党規約第十一条「党組織は、第四条に定める党員の資格を明白に失った党員、あるいはいちじるしく反社会的な行為によって、党への信頼をそこなった党員は、慎重に調査、審査のうえ、除籍することができる」にもとづき、あなたが自ら党員の資格を喪失したものと判断し、除籍とすることを決定しました。
つきましては、8月9日午前11時より、福岡県委員会事務所にて、除籍にあたっての協議の場を設けますので、出席を求めます。

2024年8月6日
日本共産党福岡県常任委員会

(※注)党の調査を「戦前の天皇制の法廷やスターリン時代のソ連法廷と同じだ」と攻撃し、党会議代議員を「発言しろって命じられても拒否すればいいのに、なんで引き受けるのかね。アイヒマンだからか」、「幹部の顔をした人が『銀行を襲え』って言ったら、何の迷いもなく銀行を襲うんだろうね」と、まじめに活動する党員を侮辱した。
 

 

 

 

 

【パトラとソクラによる即興解説】

 

ざっと声明を読んだ限り、次の点が今後の裁判で争点になりそうな気がします。

 

1.除籍の正当性について

 

(1)元県常任委員の神谷貴行氏が日本共産党員としての資格を自ら喪失したと判断したことは正当なのか?

 

今回は除名ではなく、除籍である。

 

〇日本共産党規約


 第十一条 党組織は、第四条に定める党員の資格を明白に失った党員、あるいはいちじるしく反社会的な行為によって、党への信頼をそこなった党員は、慎重に調査、審査のうえ、除籍することができる。除籍にあたっては、本人と協議する。党組織の努力にもかかわらず協議が不可能な場合は、おこなわなくてもよい。除籍は、一級上の指導機関の承認をうける。
 除籍された人が再入党を希望するときは、支部・地区委員会で審議し、都道府県委員会が決定する。

 

 

規約違反での除名処分ではなく、今回は「党員の資格を明白に失った党員」であるとの判断が正当かどうかが争点になるだろう。

 

県委員会は神谷氏が「規約を自分勝手に都合よく解釈しているのであって、実際には規約を守って活動する意思がないものと判断します。」としている。

規約違反というより、「規約を守って活動する意思がない」という判断の根拠が問題になる。

というのは、規約違反について県委員会は軽度であると判断したと思われ、県委員会は「党規約第四十八条にもとづく権利制限をおこなって、規約とその精神に反する行為について調査することを決定」したと考えられる。

規約違反が明白であれば、松竹伸幸氏のように即除名処分ということも考えられたからである。

 

 第四十八条 党員が規約とその精神に反し、党と国民の利益をいちじるしくそこなうときは規律違反として処分される。
 規律違反について、調査審議中の党員は、第五条の党員の権利を必要な範囲で制限することができる。ただし、六カ月をこえてはならない。

 

そして、県委員会は次のことを問題視した。

 

「神谷氏は活動制限中に自己批判をせず、ブログを削除しなかったこと」

 

このことが除籍理由として正当かどうかと言うことになるだろう。

 

神谷氏は、2023年3月5日付のブログ記事で、2月24日の県委員会総会の議論の内容を県常任委員会の了解を得ることもなく独断で公開した。そのなかで、県委員会総会で否定された「松竹伸幸さんの除名処分決定の根拠となった4つの理由はどれも成り立っていない」とする自分の意見を発表した。これを県委員会は、党の決定と反することを党外に発表したとみなし、党規約第五条(五)「党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない」および、第五条(八)「党の内部問題は、党内で解決する」に反することを確認し、党規約第四十八条にもとづく権利制限をおこなって、規約とその精神に反する行為について調査することを決定した。そして、神谷氏にブログ記事の削除と自己批判を求めた。しかし、神谷氏は「そのような制約は規約に明記されていない」などと言って受け入れず、自己批判をしなかった。

 

神谷氏は、県委員会総会で誤りであると退けられた自分の意見を、県委員会総会の議論とともに、勝手にブログで発表した。県委員会としては、総会での討論の内容を、それぞれの県委員が個人の判断で公開することを認めれば、総会での自由な討論を阻害することにもなるため、県委員会総会の内容を公開する場合は、県常任委員会の責任で発表すべきことがらであると考えている。県委員会総会での討論内容を個人の判断で公開する行為は、党内での自由な発言、討論を保障した党規約の精神を踏みにじる行為であるというのが県委員会の見解である。さらに神谷氏は、2024年3月7日にも、問題のブログ記事を再掲示し、規約に反する行為をくり返した。そして、「(県常任委員会が)『ブログ記事を削除せよ』という決定を行えば、それに従う」と述べながら、削除を求めた県常任委員会の決定を受け入れず、ブログ記事をいまだに削除していない。

 

さらに神谷氏は、2024年5月7日付のブログ記事を書き、それを「創作」であると述べている。しかし、一連のブログ記事と照合すれば、党と党員を誹謗中傷したものであることは、誰の目にも明らかである。

 

「誰の目にも明らかである」とか「みんな知っている」みたいな主張はひとつの例外を持ってこられるだけで崩れる論理構成であるので、この最後のところは論外だろう。県委員会は早々に削除すべきだ。

 

 

調査審議中で、規約違反となれば、除名処分になったと思われる。

しかし、県委員会は、神谷氏を「規約を自分勝手に都合よく解釈しているのであって、実際には規約を守って活動する意思がないものと判断」したのである。

このことについて、かぴぱら堂は声明の中で、神谷氏は「除籍直前まで、党福岡市議団事務局員として、政策立案や議会対策等の重要な任務に従事してきました。もし本当に氏が「党員としての資格を喪失」している人物でしたら、昨年の時点で事務局員の任を解いていたはず」と主張している。

 

これらのことから、神谷氏は党規約のすべてについて守って活動する意思がないのではなく、特定の条項についてだけ従う意思がなかったとも思える。

そういう党員を資格なしとして除籍する権利が県委員会にあるのかどうか?

それがポイントのひとつだろう。

 

 

(2)県常任委員会決定に従わないならどうして除名処分ではないのか?

 

県委員会は、神谷氏が、「削除を求めた県常任委員会の決定を受け入れず、ブログ記事をいまだに削除していない。」としている。

上級機関の決定を受け入れないなら除名処分できるのではないかと思われる。

 

 

第十六条 党組織には、上級の党機関の決定を実行する責任がある。上級の機関がさらにその決定の実行をもとめたときには、意見を保留して、その実行にあたる。

 

 

この規定をよく読むと、「党組織には、上級の党機関の決定を実行する責任がある。」とある。「その決定が実情にあわないと認めた場合には、上級の機関にたいして、決定の変更をもとめることができる。」ともある。これは個人が上意下達でなんでも従うということを定めた規定ではない。

たぶん、この規定で除名処分にはできないと判断したのかもしれない。

 

こういう規定もある。

 

 第五条 党員の権利と義務は、つぎのとおりである。
 (一) 市民道徳と社会的道義をまもり、社会にたいする責任をはたす。
 (二) 党の統一と団結に努力し、党に敵対する行為はおこなわない。
 (三) 党内で選挙し、選挙される権利がある。
 (四) 党の会議で、党の政策、方針について討論し、提案することができる。
 (五) 党の諸決定を自覚的に実行する。決定に同意できない場合は、自分の意見を保留することができる。その場合も、その決定を実行する。党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない。

  ※太字はパトラとソクラによる

 

この規定をそのまま読むと、決定に同意できない場合も決定を実行しなければならない。しかし、最初に「党の諸決定を自覚的に実行する。」とある。あくまで自覚的に実行するのが党の方針といいうことなのか? こういう規定のつくり方をすると解釈が何通りもできるような気がする。

 

いずれにしても、これでは除名処分にできないと県委員会が思ったのだろう。だから、「規約を守って活動する意思がない」という判断で除籍処分としたのだ。

 規約違反とはいえないが、規約を守って活動する意思がない。

 だから除籍とした。

 日本共産党にとって規約を守るとはどういうことなのか?

 市会議員団の事務局の仕事を卒なくこなしていた。しかし、ブログの件は承服しかねた。それは規約違反とはいえない。そういう党員には党員の資格があるのかないのか?

 これも、1.と同じ論点になってしまう。

 それが裁判のポイントなのだろう。

 

 

2.契約解除の正当性について

 

県委員会は、「党員としての資格を有することを前提とした県委員会勤務員規程にもとづき、8月16日付で神谷氏に解雇を通告しました。神谷氏には、8月6日付で除籍理由を送付し、9日に設定した協議は、本人の申し出を受けて16日に行いました。神谷氏は協議の場で、「承服できません」と述べましたが、除籍理由への反論はありませんでした。」と述べている。

 

つまり、除籍と勤務員の身分はセットである。

神谷氏は「承服できません」と言ったが、「除籍理由に反論はありませんでした」というのがよくわからない。

いずれにせよ、党籍と勤務員資格は一致しているということなのだろう。

 

したがって、除籍に正当性があれば、契約解除も正当性があるということになる。

 

とりあえず、即興の解説をしました。

 

もう少し時間をかけて検討したいと思います。

 

検討するのは以下の点を想定しています。

 

1.党員がブログで公開する意見は日本共産党ではどこまでが許容されるのか?

 

2.除籍事由の「党員の資格を明白に失った党員」に市議団事務局の仕事をこなしていた神谷氏は該当するのか?

 

3.党員資格を失った党勤務員は自動的に解雇されることが許されるのか?

 

などです。