(山下芳生副委員長)

 

1.証拠としての2024年1月17日の「しんぶん赤旗」の記事

 

2024年1月17日の「しんぶん赤旗」にはこういう記事がある。

 

日本共産党第29回党大会は16日、規律違反で除名処分となった松竹伸幸氏から提出された除名処分撤回を求める「再審査請求書」について大会幹部団が再審査し、請求を却下することを決定、代議員全体の拍手で承認しました。

 除名処分の再審査は、規約第55条「被除名者が処分に不服な場合は、中央委員会および党大会に再審査を求めることができる」との規定にもとづくもので、過去にも例があります。今回も過去の対応を踏襲して、大会幹部団が再審査し、山下芳生副委員長がその結果を大会に報告、代議員の拍手で承認されたものです。

 

 

同日の「しんぶん赤旗」には山下副委員長の報告も掲載されている。

 

そのなかには、こういう記述もある。

 

 以上、松竹氏の「再審査請求書」を検討したが、「除名処分決定文」のなかで除名理由とされたことについて、まったく反論できないことがその特徴となっている。また松竹氏は、処分の過程には「手続き上の瑕疵(かし)がある」とのべている。しかし、党規約第55条にもとづいて松竹氏に十分に意見表明の機会をあたえるとともに、党規約第5条の「自分にたいして処分の決定がなされる場合には、その会議に出席し、意見をのべることができる」については、処分を決定する会議の日程を松竹氏に伝えたうえに、松竹氏からも繰り返し日程確認の問い合わせがあったが、松竹氏は、会議に出席し、意見をのべる権利を行使しなかった。したがって、処分は党規約にもとづいて適正な手続きで行われており、何ら瑕疵はない。

 大会幹部団は、再審査の結果、松竹氏の除名処分は党規約にもとづいて適正に行われており、「再審査請求書」での松竹氏の主張は、除名処分の理由を覆すものではないことを確認した。そのことを踏まえ、大会幹部団は、松竹伸幸氏による除名処分撤回の請求を却下したことを報告する。

 

 

この記事でわかるのは2024年1月16日の党大会で松竹伸幸氏の除名処分問題に対する再審査請求は、党規約第55条「被除名者が処分に不服な場合は、中央委員会および党大会に再審査を求めることができる」との規定にもとづき、大会幹部団が再審査し、山下芳生副委員長がその結果を大会に報告し、代議員の拍手で承認されたということである。

もうひとつ、「今回も過去の対応を踏襲して、大会幹部団が再審査した」ことにも触れられている。

 

 

2.「過去の対応を踏襲」とはどういう意味なのか?

 

松竹伸幸氏は、これまで、「大会で再審査する」と規約で書いている意味を最近のメルマガでも「大会の正式の構成員である代議員(共産党の場合は約650名)による再審査が実施されると思うだろう。結果として満場一致で却下するにしても、大会の場で意見表明させたり、提出文書を代議員に配布するなど、私の意見も聞いたという形式を整えようとするものだ。」と捉えている。

 

ところが、2024年1月16日の党大会で行われた松竹伸幸氏の除名処分問題の再審査では、幹部団だけが決定に関与する方式となっている。

その理由について、m7854という方が共産党中央委員会に問い合わせた回答では、「審査については、『再審査請求書』が膨大な文書であったため大会幹部団で審査することを決定しました。」と言っている。

 

 

 

そして、この文書でわかるのは、「これまでの対応を踏襲することとした」というのは、党大会でどう扱うかは「大会幹部団(または議長)の責任で判断し決定するもの」ということなのだ。

 

 (1)「党の最高機関」である党大会は、最初に大会幹部団(または議長団)を大会代議員によって選出し、選出された大会幹部団(または議長団)が党大会の運営、議事進行などについて全責任をもちます。
 大会への除名処分「再審査」請求および、処分を不服とする「訴え」をどのように扱い、処理するかは、党大会で決めます。具体的には、大会幹部団(または議長)の責任で判断し決定するものです。実際、過去の党大会では、そのように対応がされてきました。山下副委員長の「報告」が、「これまでの対応を踏襲することとした」としているのは、その意味です。

 

つまり、党規約第55条で「被除名者が処分に不服な場合は、中央委員会および党大会に再審査を求めることができる」との規定をすべて「大会幹部団(または議長)の責任」で処理できると解釈したということなのだ。

審査方法の具体的な内容のことを言っているのではない。責任権限の問題をそう解釈したと言っているのだ。

 

 

3.「代議員の拍手で承認された」ことは正しい手続きなのか?

 

これに似た事案として東京土建の除名処分撤回の裁判があった。

 

これが最も詳しいのは松竹伸幸氏のメルマガであるが、東京土建での裁判では、判決文で手続き上の瑕疵が書かれている。

それは次の内容だ。


「そもそも令和2年10月1日の第7回中央執行委員会では統制委員会に対し統制処分の申立てをすることについて相当数の反対票が投じられ、統制処分の可否自体については慎重に賛否を集計すべき状況であったにもかかわらず、同年11月2日の第8回中央執行委員会においては、会場に出席した参加者からの拍手、ウェブを通じた参加者からの意思表示によって採決が行われ、賛成多数として統制委員会の答申を承認する旨議決されており、投票の秘密性も担保されず、また、賛成が多数か否かも不明瞭な投票方法によって、採決が行われたということができ、手続として不適正であったといわざるを得ない。」

 

この投票方法は手続きに瑕疵ありと裁判所は判決で述べたのだ。

そして、東京土建裁判の原告の島原氏らは東京土建の組合員としての地位を確認した。

 

この判例からわかるのは、まず、「①組織の除名処分においては、慎重に賛否を集計すべき」であったということである。

次に「②投票の秘密性の担保」である。

そして「③賛成が多数か否か明瞭な投票方法」が必要ということである。

 

しかし、日本共産党の除名処分問題の再審査請求では、まず、大会幹部団が再審査した結果の投票方法およびその投票結果の報告がない。

また、党大会での決定方法は「代議員の拍手で承認」となっている。

 

ということは、大会幹部団の審査も大会代議員の審査でも、

 

①組織の除名処分においては、慎重に賛否を集計すべき

②投票の秘密性の担保

③賛成が多数か否か明瞭な投票方法

 

が行われていないと推察される。

まあ、これまでの党大会での再審査も同様であった可能性はあるが。

 

 

4.2024年1月16日党大会の再審査は判例からみて有効なのか?

 

2024年1月16日党大会での拍手による再審査却下は有効なのだろうか?

 

東京土建の裁判は、最も新しい除名処分についての判例である。

しかし、これは組合員の除名処分についての判決であり、政党の党員の除名処分についての判決ではない、という意見もあるかもしれない。

日本共産党は「結社の自由」としてこの党大会での方法を有効と主張するのだろう。

 

しかし、除名処分にあたって本来規定すべきことが規定されておらず、適正な手続きが取られていないのである。

こういう場合、どういう判決になるのだろうか?

 

袴田里見の上告審の判決を再度見てみよう。

昭和63年12月20日に第三小法廷で行われた袴田里見と日本共産党による家屋明渡等請求事件の最高裁判決ではこう書かれている。

 

政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばないというべきであり、他方、右処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、右処分の当否は、当該政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限り右規範に照らし、右規範を有しないときは条理に基づき、適正な手続に則ってされたか否かによって決すべきであり、その審理も右の点に限られるものといわなければならない。

 

 

 

つまり、政党の案件でも「政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限り右規範に照らし、右規範を有しないときは条理に基づき、適正な手続に則ってされたか否かによって決すべき」と判例では認めているのである。

 

今回は再審査請求での責任権限について、「大会議員団にある」ことを手続き内容についてもあるものだと拡大解釈をしていると思われる。

しかし、東京土建の判決にあるように、通常除名処分について、①組織の除名処分においては、慎重に賛否を集計すべき、②投票の秘密性の担保、③賛成が多数か否か明瞭な投票方法という原則が一般的には認められている。

 

しかし、日本共産党の再審査請求の審査ではそれが行われていない。

これは「政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情」が存在すると思われる。

 

つまり、2024年1月16日の党大会での再審査却下は無効だろう。

 

しかし、再審査却下が有効か無効かに関わらず、日本共産党は相変わらず、「かく乱者」とか「党への攻撃」だと松竹伸幸氏の名誉を毀損を続けている。

その上に、裁判中の今も除名処分と再審査却下は正当だと言っている。

 

日本共産党は名誉毀損行為を即刻止めた方が、損害賠償額を増やさない賢明な方法であると思いますけど。