最近、ある政党が労働者が自由時間を資本家から取り戻すために社会主義革命が必要だと言っています。

労働時間を短くしたい → 社会主義革命 という短絡的な発想に驚くのですが、それを支持している人々もいるようなので、労働時間を短くするためにはどうすればいいのかを、パトラとソクラがステップを踏みながら考えてみます。

 

1.日本の労働者の労働時間はどのくらいなのでしょうか?

 

まず、日本の労働時間は本当に長いのでしょうか?

 

OECD(経済協力開発機構)の2021年の調査によると、日本の平均年間労働時間は1607時間で、これはOECD加盟国全体の平均年間労働時間1716時間よりも少ないのです。OECD加盟国中、日本は27位にランクしており、最も労働時間が長い国はメキシコで2128時間、最も短い国はドイツで1349時間です。

 

 

 


しかし、これらの数字は全ての労働者(フルタイム、パートタイム、非正規雇用など)を含んでいます。特に日本では、短時間労働者の割合が高く、その影響で平均労働時間が短く計算されている可能性があります。また、OECDの2020年の調査によると、有償労働時間が長いのは日本男性(452分)で、これはOECD平均の男性317分よりも長いのです。

 

 

 


したがって、日本の労働時間が他の国と比較して長いかどうかは、どの労働者のグループを見るかによります。

全体としてはOECD平均よりも少ないですが、特定のグループ(例えば、フルタイムの男性労働者)については、他の国よりも長い可能性があります。

 

 

2.労働時間が長いのはすべて経営者の責任なのでしょうか?

 


日本の労働者の労働時間が長い原因は多岐にわたります。経営者の責任だけではなく、以下のような要素が絡み合っていると考えられます。

生産性が低い:日本の一人あたり労働生産性は他の国に比べて低いとされています。生産性が低いと、同じ成果を出すためにより長い時間を働かなければならないことになります。

 

 

 

 

 

業務量の多さ:従業員一人あたりの業務量が多い場合、労働時間が増えてしまう傾向があります。これは、マネジメントの問題である可能性もあります。

 

 

 


人手不足:人手不足が深刻化している業界では、一人あたりの労働時間が増える傾向があります。


進捗管理がうまくできていない:プロジェクトの進捗管理がうまく行われていない場合、労働時間が増える可能性があります。


無駄な会議・ミーティング:効率的でない会議やミーティングが多いと、労働時間が増える可能性があります。


これらの要素は、経営者だけでなく、労働者自身や社会全体の問題とも言えます。したがって、日本の長時間労働の問題を解決するためには、これらの要素を全て考慮に入れた対策が必要となります。具体的な対策としては、業務の効率化、評価制度の見直し、勤務制度の見直しなどが挙げられます。また、法改正による労働時間の上限規制も進められています。これらの取り組みにより、労働時間の削減と労働環境の改善が期待できます。

 

 

3.労働時間を短縮して自由時間を増やす方法

 

(1)経営者が行うべきこと


経営者が行うべきことの一つに、個々の従業員の業務量を減らすことがあります。その方法の一つとして、従業員を増やすことが挙げられます。これにより、タスクをより多くの人々に分散させることができ、個々の従業員の負担を軽減することが可能です。

ただし、従業員を増やすことは、給与や福利厚生などのコスト増加を伴うため、経営者としてはその費用対効果を慎重に考える必要があります。また、新たな従業員を採用し、適切に教育するためには時間とリソースが必要となります。

その他にも、業務のアウトソーシングや業務の自動化など、従業員の業務量を減らすための方法はいくつかあります。これらの方法は、特定のタスクを外部の専門家に委託したり、ルーチンの作業を自動化することで、従業員がより重要な業務に集中できるようにすることを目指しています。

これらの方法を適切に組み合わせることで、経営者は従業員の業務量を減らし、生産性を向上させることができます。それにより、従業員はよりバランスの取れた働き方を実現し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。労働時間の短縮は、組織の持続可能な成長に寄与します。それぞれの組織に最適な方法を見つけることが重要です。

 

 

(2)労働者が行うべきこと

 

労働時間を短縮するために労働者が行うことが出来る方法はいくつかあります。

タスクの優先順位をつける:全てのタスクが同じ重要度を持つわけではありません。タスクの優先順位をつけ、最も重要なものから取り組むことで、時間を効率的に使うことができます。


タイムマネジメントの技術を使う:ポモドーロテクニックやタイムボクシングなどの時間管理のテクニックを使うと、作業時間を効果的に管理できます。


デジタルツールを活用する:プロジェクト管理ツールやタスク管理ツールを使うと、作業の進行状況を一目で確認でき、労働時間を短縮することができます。


デリゲーション:自分一人で全てをこなす必要はありません。他の人にタスクを任せることで、自分の時間を有効に使うことができます。


休憩を取る:一見、時間の無駄に思えるかもしれませんが、適度な休憩は集中力を高め、生産性を向上させます。


それぞれの方法が各人の仕事やライフスタイルにどのように適応するかを見つけることが重要です。

労働時間を短縮することで、より多くの自由な時間を得ることができます。

 

 

4.社会主義革命によって労働時間は短くなるのでしょうか?

 

ソ連では1917年の社会主義革命によって労働時間は一日8時間になりました。この短縮は、労働者にとって一般的にはプラスの側面でしたが、一部の副作用もありました。

○プラスの側面


労働時間の短縮: 社会主義革命は、労働者の労働時間を短縮することを目指しました。これにより、労働者はより多くの自由時間を持つことができ、仕事と家庭のバランスを取りやすくなりました。


労働条件の改善: 労働者の権利と福祉が向上し、労働環境が改善されました。安全基準や休暇制度の導入などが行われました。


○マイナスの側面


経済的影響: 社会主義革命による経済の再編は、一部の産業や企業に影響を及ぼしました。一部の企業は国有化され、経営の効率性が低下することもありました。


生産性の低下: 労働時間の短縮は、一部の産業で生産性の低下をもたらすことがありました。これは、労働者が同じ時間内でより少ない仕事をこなすことになったためです。


総じて、社会主義革命は労働者の権利と生活条件を改善しましたが、経済的な課題も存在しました。

 

 

5.社会主義革命では自由な時間を手に入れられるのでしょうか?

 

社会主義国においては、一般的には経済的な平等を目指す思想・社会体制ですが、実際には経済格差が生じています。

社会主義国では、生産手段が公有され、土地も国有とされています。企業は国有・国営または協同組合が所有していることが多いのですが、小規模企業の私有や私営も認められている場合もあります。ただし、社会主義国においても経済格差が拡大する傾向があり、一部の特権階級に富が集中する状況が生じています。

 

 また、ソ連・東欧のように社会主義国は計画経済を推進していた時期もありましたが、現在は中華人民共和国のように市場経済への移行が進められています。市場経済では、国家計画ではなく市場の価格調整メカニズムによって資源が配分されます。しかし、競争原理が不完全な形で導入されていることもあり、格差が生じる要因や発生のメカニズムは資本主義国とは異なる特徴を持っています。 社会主義国においても、経済・社会の安定的かつ持続的な発展のために、格差の是正が重要な課題となっています。

ソ連・東欧の経済は「国家による計画経済」で運営されていました。企業は国有化され、全ての勤労者は公務員となり、国家が経済を統制していました。しかし、この中央集権的な体制は非効率で、物資の品質が悪化し、技術の進歩も鈍化しました。さらに1980年代には原油価格の下落も影響し、経済の停滞と物資の欠乏が深刻化しました。

 

 

 


社会主義国家で自由が抑圧される場合があります。

 

例えば、ソルジェーニツィン氏は、ソ連(ソビエト連邦)の強制収容所制度や政治的抑圧を告発した作家であり、彼の経験は社会主義国における表現の自由の制約を浮き彫りにしました。

 社会主義国でも表現の自由は重要な権利とされていますが、具体的な制約や規制は国によって異なります。

 ソルジェーニツィン氏のように政治的な批判を行うことは、当局にとって脅威となり、収容所送りになることもありました。

 

どうしてそうなるのかというと、社会主義革命によって生まれるプロレタリア国家は、資本家(ブルジョアジー)とブルジョア思想を排除しないと成立しないからです。

労働者階級しか存在しない国家と実現するはそういうことを意味します。

 

そして、労働者階級の社会主義国をつくるには共産党が主導的な役割を果たす必要があります。

そうしないと反革命により資本主義国家に逆戻りするからです。

そのために社会主義的な法律に作り替え、軍隊や警察も社会主義国家に従うようにすることになります。

その実現ため一党独裁になります。その理由は複雑ですが、以下の要因が影響しています。

イデオロギーと指導者の役割: 社会主義国家では、共産主義的なイデオロギーが強調され、共産党が指導的役割を果たします。指導者は一党のトップであり、国家の方針や政策を決定します。


組織的構造: 社会主義国家は中央集権的であり、政治的権力が共産党に集中しています。他の政党や政治的対立勢力は制限され、共産党が唯一の合法的な政治組織となります。


歴史的文脈: 社会主義国家の成立過程には革命や戦争が伴い、指導者はその過程で強力な地位を築きました。このような歴史的背景が一党独裁を助長することがあります。


安定性と統制: 一党独裁は政治的安定性と統制を維持する手段として機能する場合があります。指導者は政治的反対勢力を排除し、国家の方針を一貫して実行できると考えられています。


ただし、一党独裁は民主的な原則とは相容れない側面もあり、市民の権利や自由が制限されることがあります。

 

ソ連は社会主義革命で労働時間の短縮は進みましたが、「自由」という意味では社会主義革命によって、失ったことのほうが大きかったのです。