去年、乗り物ファンのこんな記事がありました。

 

特に完全民営化を果たしたJR本州3社とJR九州は、公共交通を担う公的な存在でありながらも、株主価値の最大化を目指した経営が求められます。極端に利用の少ない「鉄道としての役割を終えた路線」に、巨額の資金を投じて維持し続けることはできないわけです。

 とはいえ公共交通機関を収支採算性だけで語ることはできません。「廃線やむなし」といった動きに対し、ローカル線は国の重要なインフラであるとして、JRの再国有化を検討してはという声が一部で聞かれます。再国有化は可能なのでしょうか。

 

 

国鉄民営化の歴史を辿り、そのメリットとデメリットを綴ったなかなか読み応えのある記事です。

ぜひ皆さん、一度お読みください。

 

この記事の最後はこう結ばれています。

 

もうひとつの問題は民営化に際して行われた「分割」です。それまで首都圏の通勤路線や新幹線の利益が地方をカバーする「内部補助」がありましたが、地域分割により東海道新幹線の生み出す巨額の利益が北海道や四国の赤字を埋めることはなくなりました。

 厳密にいえば経営安定基金がその役割を担っているのですが、低金利の影響で十分に機能していません。しかし今更、新たな枠組みを創設し、上場済みの4社の利益から赤字を補填することは困難でしょう。

 そうであれば国民に広く薄く「交通税」を課し、それを財源に地方ローカル線を補助する仕組みなども考えられますが、単なる赤字補填になってしまっては意味がありません。ローカル線が地域にとって必要であること、それにより地域が活性化すること、ひいては国民全体の利益につながることを示さなければ、鉄道利用者以外に負担を求めることなどできません。それこそが「鉄道国有論」の最大のハードルのように思います。

 

 

赤字路線を解決するのはなかなか難しい問題で、国民に広く薄く「交通税」の創設なんて言っています。

まあ、地方の赤字路線のことを都会の満員電車で通勤している人が考えるにはいいのかもしれませんが。

 

パトラとソクラのブログでは、これまで社会主義国の失敗を分析したコルナイ・ヤーノシュという経済学者が『資本主義の本質』という本で、社会主義と資本主義の本質を考察していることを紹介しました。

ヤーノシュは、社会主義の本質を「イノベーションを生まないこと」と「欠乏の経済」であると書いています。

そして、資本主義の本質を「イノベーション」と「余剰の経済」だと言っています。

資本主義は「利益」を生む経済です。利益を生むためにイノベーションを考え、市場に消費を余剰に供給しようとします。

しかし、社会主義では「利益」は労働者階級の「搾取」になるので「悪」だと考えます。

だから、生産手段を公有化や国有化すべきと考えるのです。

しかし、その結果が社会主義国で環境基準を満たさない時代遅れの車が走ったり、モスクワでは火を噴くテレビから多数の火災が起きたりしました。

利益を否定することは、イノベーションを否定することになるのです。

国鉄を民営化して、JRにしたのは資本主義的な考えの復活です。

利益優先=経営の効率化です。

民営化のお陰もあって、JR九州なんかは面白い車両や路線の開発も行われました。

イノベーションの発揮です。

 

 

しかし、全国ではいくつかの赤字路線を切り捨てることにもなりました。

 

国鉄について、日本共産党はどう考えているのでしょうか?

 

そう思ってネットで探すと、一昨年、田村智子氏がJRに関する提言を「しんぶん赤旗」に乗せていました。

そこで田村氏はこう書いています。

 

全国鉄道網を維持・活性化し、未来に引き継ぐためには、「民間まかせ」「地方まかせ」を根本から改め、国が責任を果たすことが不可欠です。完全民営のJRの鉄道網を国有民営に改革します。国が鉄道インフラを保有・管理することで、鉄道事業を安定させ、運行は、現行のJRが引き続き行います。

 

 

ああ、「国有化、民間運営」なのか。

 

これは珍妙な案ですね。

でも、わからないでもない。

 

整備新幹線は、国の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が建設・保有し、JRに貸し付ける形態なので実質的に上下分離がすでに導入されており、全国鉄道網の維持・活性化の方式として十分活用できます。

 

 

 

すでに整備新幹線は「上下分離」を行っているから、それでいいのだという理屈です。

 

しかし、もともと国鉄の問題は設備投資と資金回収のバランスが取れないこと、赤字路線の費用を誰が負担するのかという採算と利益の分配問題がありました。

 

それにまた国有化した管理会社で組合運動が活発化するかも知れません。これはちょっと違う問題ですが。

 

 

しかし、田村氏の言うように、上下分離で民間が運営したとしても、赤字路線は生まれます。その際にその民間会社の赤字を誰が負担すべきなのか? 同じ問題とも思えます。

 

 

ところで、JRの運営で廃線が生まれても経営は効率化を優先すべきで今のままでいいというのは、自由主義的資本主義の支持者でしょう。フリードマン、ハイエク的な考えです。

 

路線の国有化は社会主義的考えです。日本共産党がそういうのも頷けます。

 

今のままで、赤字路線は地方自治体に任せ、路線を維持するかバス路線かすればいいというのはケインズ主義的考えでしょう。

それでさらに地方に雇用が生まれるという理屈です。

 

さて、JRはどうするのがいいのでしょうか?

 

それは、社会主義、資本主義の本質について、その人がどういう思想にシンパシーを感じるのかと似た問題です。