(味口としゆき市議)

 

東郷ゆう子氏が日本共産党から除籍処分されたことを無効だと訴えている裁判で、いま準備書面が交わされているハラスメントの争点があります。

 

 

1.ハラスメントの争点

 

2023年6月30日の訴状ではこう書かれていました。

 

必勝ポスターの破棄


原告と被告味口の合同選挙事務所には、告示日当時、被告日共中委の志位和夫委員長及び山下芳生副委員長それぞれから、原告及び被告味口に宛てた必勝ポスター(為書き)が掲示されてをり(甲7の1乃至甲7の2)、原告宛ての必勝ポスター(志位委員長、山下副委員長の各顔写真入り1枚)の所有権は原告にあつた。
原告は、選挙が終はつたら原告宛ての必勝ポスターを持つて帰りたいと考へ、告示日である3月31日、近藤秀子・日共地委副委員長と別の党員(高齢女性)がゐた折に近藤に対して「選挙終わったら家に持って帰っていいですか?」と訊くと、近藤が「わからん」と述べ、原告が「終わったらください」と述べた。
それにもかかはらず、選挙運動期間中の4月2日、原告のみならず被告味口の前記必勝ポスターがなくなつてゐた。このことについて原告が近藤に理由を訊くと、近藤が「味口が捨てろゆうてたんやから捨てたんや、私に言われても知らん」と言ひ放つた。なほ、これを聴いた前記党員(高齢女性)が「この子、欲しいゆうてたやん、なんでそんなかわいそうなことをするの」と述べた。
その際、偶々被告味口がその場に通りかかつたので原告が被告味口に訊いたところ「貼り方が汚い、しわくちゃになってるし、捨てろ」と述べ、原告が「きれいに切って持って帰りたかったのに」と苦情を言つても被告味口は無視し、原告は、度重なる被告味口の酷い仕打ちへの悔しさのあまり、ひそかに涙したのである。

 

https://kiharalaw.jp/wp-content/uploads/2023/06/nada-minsho-jcp_2.pdf

 

 

要するに、東郷ゆう子氏が日本共産党の県議会候補として、志位委員長と山下副委員長から宛名入りのポスターをもらったのを、味口市議が無断で捨てたという一件です。

このハラスメントの一件が最近の準備書面の応酬でテーマになっています。

 

味口市議による東郷ゆう子氏へのハラスメントについて、訴状には、味口市議が、東郷氏と不貞関係にあるとの風評が存在することをLINEに投稿をしたりしていたことが書かれています。

そのほかにも、選挙中に東郷氏が味口市議に「他党の攻撃をするのは嫌われますよ」「それなら王子公園のことで大学誘致により市民が困ることを言ったらどうですか」と意見を述べると、味口市議が「自分なんも分かってへんなあ」「王子公園の話なんて、ぶっちゃけどうでもええねん」「俺らは、みんなの関心があることを使って、神戸市を攻撃することやから」と言って、「いつまでそんな低い目線で物言うとるねん」とか「もっと勉強しな」などと東郷氏が侮辱されたとか。

ほかにも味口市議は、東郷氏を日常的に「自分」とか「あんた」と呼び、「自分言っとくけど知名度全然ないから」と侮辱し、県議選及び市議選の選挙運動期間中、王子公園での街宣活動の際、ビラを配る選挙隊員(90代の男性、80代の女性)の配置が気に入らなかったため、東郷氏に「なんで俺の前に立たせるねん!」「そんな何人もビラ配りはいらんねん!」と怒鳴りつけたらしい。

そういう下世話なハラスメントの事例が書かれた中では、まあ裁判で審議するのに比較的相応しい案件が、ポスター廃棄だったのです。

まあ、どれもささいな案件ではありますが。

 

これを東郷氏の弁護士は、「被告味口の前記ハラスメント等は不法行為を構成するにとどまらず、被告日共らも使用者責任(民法715条類推)を負ふ。」と訴えています。また、「さらに、原告と被告日共らとの間には、入党契約に付随する「活動環境配慮義務」があり、被告日共らには党員間のハラスメント等を防止すべき義務がある。」とも訴状で述べています。

 

しかし、日本共産党側は2024年3月29日の準備書面(3)でこう切り返していました。

 

活動環境配慮義務について


(1)被告味口による原告に対するハラスメント自体が存在しないのであるから、「活動環境配慮義務」自体が本来問題にならない。


(2)原告がいう入党契約に付随しての「活動環境配慮義務」は、雇用契約において使用者が労働者に対して負う場合のある職場環境配慮義務を想定しているようである。被告中央委員会および各級機関は雇用契約における使用者の立場ではなく、雇用契約における職場環境配慮義務同様の義務を負うものではない。
 日本共産党の組織の性格は、自発的に結ばれた個々人が尊重される組織で、党員は平等であり、役職も任務の違いにすぎず、本来、党員相互の関係では権力関係や優越関係は存在しない。党活動のルールを決めている党規約には、ここの党員の義務として日本共産党規約5条(一)において「市民道徳と社会的道義をまもり、社会に対する責任をはたす」としている、
 この規定は、党員相互の義務を定めるものである。被告中央委員会は、あらゆる機会において、市民道徳と社会的道義を守る規約で掲げている党として党員の一層の努力、個人の尊厳とジェンダー平等などの社会的国際的到達点を学び、あらゆるハラスメントを根絶することを呼びかけている。
 各県委員会、地区委員会も同じように取り組んでいる。しかし、本来のあり方に反し、ハラスメントが発生することも一般的にはあり得るので、各県委員会、地区委員会をもそれぞれ問題が生じたとき担当者を決め対応出来るようにしている。被告中央委員会としては、党内にハラスメント防止をよびかけるとともに、党員からの申し出などに対しては訴願委員会、人権委員会などに窓口を設け、解決を図ることにしている。
 なお、政党が内部的にどのような組織形態・党員の権利義務関係を定めるかは、政党の自律権の問題である。最高裁昭和63年12月20日判決の「政党に対しては、高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をなしうる自由を保障しなければならない。」という判示により、司法審査の対象とならない。

 

https://kiharalaw.jp/wp-content/uploads/2024/04/1ad1ed6a4950edbcc551f240f56a85c6.pdf

 

 

要するに、日本共産党中央委員会および各級機関は雇用契約における使用者の立場ではなく、雇用契約における職場環境配慮義務同様の義務を負うものではない、というのです。

まあ、そりゃそうでしょう。

 

また、日本共産党側はこうも主張しています。

 

中央委員会は、あらゆる機会において、市民道徳と社会的道義を守る規約で掲げている党として党員の一層の努力、個人の尊厳とジェンダー平等などの社会的国際的到達点を学び、あらゆるハラスメントを根絶することを呼びかけている、と。

 

しかし、本来のあり方に反し、ハラスメントが発生することも一般的にはあり得るので、各県委員会、地区委員会をもそれぞれ問題が生じたとき担当者を決め対応出来るようにしているのだそうです。

中央委員会は、党内にハラスメント防止をよびかけるとともに、党員からの申し出などに対しては訴願委員会、人権委員会などに窓口を設け、解決を図ることにしているとか。

 

なお、政党が内部的にどのような組織形態・党員の権利義務関係を定めるかは、政党の自律権の問題である。最高裁昭和63年12月20日判決の「政党に対しては、高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をなしうる自由を保障しなければならない。」という判示により、司法審査の対象とならない。

 

ここでも出してきました「結社の自由」の最高裁判例。

これは袴田里見裁判なのです。

 

 

2.政党にハラスメントの管理責任はあるのか?

 

この反論に対して東郷ゆう子氏側の弁護団はこう言っています。

 

被告日共中委は「被告中央委員会および各級機関は雇用契約における使用者の立場ではなく、雇用契約における職場環境配慮義務同様の義務を負うものではない。」と主張し、被告県委・地委も同一の主張をする。
 しかし「雇用契約における職場環境配慮義務同様の義務を負うものではない」との主張は、被告日共らが党員間の各種ハラスメント(セクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメント等)を防止すべき義務を負ふのかについて、明確に主張してゐると
はいへない。
 もつとも、「被告中央委員会は、あらゆる機会において、市民道徳と社会的道義を守る規約で掲げている党として党員の一層の努力、個人の尊厳とジェンダー平等などの社会的国際的到達点を守り、あらゆるハラスメントを根絶することを呼び掛けている」「被告中央委員会としては、党内にハラスメント防止をよびかけるとともに、党員からの申し出などに対しては訴願委員会、人権委員会などに窓口を設け、解決を図ることにしている」と主張し、党員に対してハラスメントの防止を「呼び掛けて」ゐるといふのである。
この「呼び掛け」が、党規約上いかなる位置付けであるのか不明であるが、民主集中制(民主的中央集権制)(党規約3条柱書)を採用する被告日共らとしては、被告日共中委が末端党員に至るまでハラスメント防止を「呼び掛けて」ゐる以上、党員同士のハラスメントは禁止されてゐたとともに、被告日共らは党員間のハラスメントを防止すべき義務を負つてゐた(活動環境配慮義務があつた)ことを自認してゐるに等しいといへる。

 

https://kiharalaw.jp/wp-content/uploads/2024/04/cf4fe357433c087db4e2ea1492a843bf.pdf

 

 

パワハラを防止する活動環境配慮義務が政党の党中央にも、雇用関係に類似してあるのではないかと東郷氏側が言っているのに対して、共産党側は「雇用契約における職場環境配慮義務同様の義務を負うものではない」と主張します。

でも、日本共産党は「あらゆるハラスメントを根絶することを呼び掛けている」し、「党内にハラスメント防止をよびかけるとともに、党員からの申し出などに対しては訴願委員会、人権委員会などに窓口を設け、解決を図ることにしている」と言っているが、それは「党員間のハラスメントを防止すべき義務を負つてゐた(活動環境配慮義務があつた)ことを自認してゐるに等しいといへる」でしょ、と反論しているのです。

 

ここで、東郷氏の弁護団は2022年11月に小池晃書記長が田村智子副委員長(当時)にパワハラをして謝罪した件を取り上げます。

 

その実例として、被告日共らでは、令和4年11月5日に開かれた全国地方議員・候補者会議の席上で、報告者を務めた小池晃事務局長が、報告で候補者の名前を間違へて発言し、司会の田村智子政策委員長(現・被告日共中委委員長)が間違ひを訂正した際、小池氏が田村氏に近づき「訂正する必要はない。ちゃんと読んでいる」などと強い口調で叱責したことがパワー・ハラスメントにあたるとして被告日共中委から警告処分(党規約49条)を受けた例がある。
この件について、志位和夫委員長(当時)が「ハラスメント根絶を大方針にしている日本共産党にとって絶対にあってはならない言動です」「二度と、とりわけ指導的立場にある者がこうしたことを繰り返さないこと、見逃さないこと、曖昧にしないこと。これが大事だということを常任幹部会では強く確認をしました」などとの談話が党機関紙である「しんぶん赤旗」に掲載され、これが全党員に閲読させて学習させる事態となつた。
 以下は、被告日共らの機関紙「しんぶん赤旗」の記事である。
(令和4年11月15日付け赤旗(甲11))

 

小池氏のパワー・ハラスメントに対し、被告日共中委が警告処分をなし、さらに被告日共中委委員長が再発防止を「強く確認した」のは、被告日共らが党員間のハラスメントを防止すべき義務があることを認めてゐるからに外ならない。

 

これはなかなか鋭いツッコミです。

 

その証拠書類として、2022年11月15日の「しんぶん赤旗」を引用しています。

 

 

記者会見での記者との一問一答は次の通りです。

 記者 小池氏が間違っていたのに、それは違うと指摘したことがハラスメントなのか。

 小池 そういうことではない。私の指摘が間違っていたことも問題だが、同時に、ああいう会議の場で強く叱責するような形で物を言った。田村さんの言ったことが仮に間違っていたとしても、会議の場であのように叱責するという態度自体が、パワハラの定義である「優越的地位を背景にした業務上必要かつ相当な範囲を超えるもの」だ。二重の意味で誤っていたと言わなければいけない。

 記者 共産党の体質だという指摘もあるがどうか。

 小池 共産党の体質ということではなく、ひとえに私自身の重大な弱点があらわれたという問題だ。

 記者 共産党の地方議員などからも批判の声があがっているが。

 小池 わが党はハラスメントの根絶を掲げている政党だ。そういう点でやはり党員の中から批判の声が出るのは当然だと思う。党中央で重要な役割を担っている私のような者が、この問題をあいまいにしてはいけないと思っている。そういう点でも今回こういう形で全容について報告もさせていただいたし、処分という形できちんとけじめをつけるという対応がとられたということだ。

 記者 書記局長と副委員長は上司、部下の関係にあるのか。

 小池 そういうわけではない。われわれに上下の関係はない。ただ、私があの会議を主催し、報告者をしていて、田村副委員長は司会をやっていた。そういう意味でハラスメントの基準である「優越的な地位」ということになる。今回の会議における、それぞれの役割という点からみて、これはパワーハラスメントにあたると判断をした。

 

 

 

そして、東郷氏の弁護団はこう主張しています。

 

 

被告味口の行為はパワ―・ハラスメントである。


被告味口は、被告日共地委の副委員長を務める神戸市会議員であり、公職選挙への立候補が初めてであつた原告を指導する立場であつたことから、原告に対して優越的な地位にあつたといへる。
それゆゑ、原告に対する日常的な侮辱行為(訴状請求の理由第5.2(8頁))や必勝ポスターの破棄などの一連の嫌がらせ行為は、パワー・ハラスメントにあたる。


求釈明申立て


 前述のとほり、被告日共中委は「被告中央委員会および各級機関は雇用契約における使用者の立場ではなく、雇用契約における職場環境配慮義務同様の義務を負うものではない。」と主張し、被告県委・地委も同一の主張をする。
 しかし「雇用契約における職場環境配慮義務同様の義務を負うものではない」との主張は、被告日共らが党員間の各種ハラスメント(セクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメント等)を防止すべき義務を負ふのか、明確に主張してゐない。
 よつてこの点を明確に答弁するやう、求釈明を申し立てる。

 

https://kiharalaw.jp/wp-content/uploads/2024/04/cf4fe357433c087db4e2ea1492a843bf.pdf

 

まあ、共産党の言い逃れは許さないってことです。

 

実際に小池書記長も優越的地位について、記者会見でこう言ったんだもんね。

 

私の指摘が間違っていたことも問題だが、同時に、ああいう会議の場で強く叱責するような形で物を言った。田村さんの言ったことが仮に間違っていたとしても、会議の場であのように叱責するという態度自体が、パワハラの定義である「優越的地位を背景にした業務上必要かつ相当な範囲を超えるもの」だ。二重の意味で誤っていたと言わなければいけない。

 

あの記者会見でパワハラの責任を認めていて、共産党がその選挙事務所で起きている党員間のパワハラの管理責任がないなんておかしいですよね。

 

勝手なときだけ、「日本共産党の組織の性格は、自発的に結ばれた個々人が尊重される組織で、党員は平等であり、役職も任務の違いにすぎず、本来、党員相互の関係では権力関係や優越関係は存在しない。」なんていうのは間違っています。

 

この小池書記長、第29回党大会で田村智子氏が大山奈々子氏を公然と批判したことについてはこう言っていました。


 

「党大会は党の最高機関であり、討論のなかで出された発言のなかに重大な誤りがある場合、『結語』でそれを批判して、大会として採決に付して決着をつけることは当然必要な対応です」と述べました。

 

小池氏は、「田村氏の結語は『叱責』ではなく発言内容への批判です。発言者の人格を傷つけるようなものではありません」「結語の案は中央委員会総会で真剣に集団的に議論したもの。打撃的な表現は避け、発言のなかのどこが綱領と規約に照らして問題があるのかを、理を尽くした言葉で語っています」と指摘し、「パワハラという指摘は違います」と述べました。

 

 

 

つまり、田村氏の結語がパワハラでないのは、態様において、「打撃的な表現は避け、発言のなかのどこが綱領と規約に照らして問題があるのかを、理を尽くした言葉で語っています」からなのだと。

 

でも、訴状に書かれていることが事実だとするなら、味口市議が東郷ゆう子氏に対して、自分と東郷氏が不貞関係にあるとの風評が存在することをLINEに投稿をしたり、「いつまでそんな低い目線で物言うとるねん」「もっと勉強しな」などと東郷氏を侮辱することとか、ビラを配る選挙隊員のことを「なんで俺の前に立たせるねん!」「そんな何人もビラ配りはいらんねん!」と怒鳴りつけたり、挙句の果てには東郷氏に贈られたポスターを無断で廃棄するのは明らかにパワハラですよね。

その管理責任は党にあるし、それは党市議団総務会長でもあり、選挙の共同事務所で影響力のある味口市議自身にあると言えるでしょう。

 

 

3.どうして「ハラスメント撲滅の党」を掲げながらハラスメント行為を堂々と行うのか

 

日本共産党は、ハラスメント撲滅をうたっている党らしいです。

 

2022年1月には小池晃書記長が国会で代表質問を行っています。

 


ハラスメントは人権侵害――ジェンダー平等へ禁止を法律に明記し、条約の早期批准を


 職場におけるジェンダー平等実現のために、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメントの根絶もきわめて重要です。

 2019年6月のILO(国際労働機関)総会で、ハラスメント禁止条約が採択された時には、日本政府も賛成しましたが、いまだに批准していません。国内法でも、日本は、先進国で唯一ハラスメント行為の禁止規定がない国になっています。

 「連合」の調査によれば、「職場でパワハラの内容・方針の明確化や周知・啓発に関して何も行われていない」とこたえた方が40%、32・4%が「職場でハラスメントを受けたことがある」と回答しており、事態は深刻です。

 総理には、職場でのセクハラ・パワハラが、被害者の心身に重大な打撃を与える人権侵害であり、ただちに是正すべきという認識はありますか。一日も早くハラスメント禁止条約を批准し、法律にもハラスメント禁止を明記すべきではありませんか。

 

 

 

これ、おかしいですよね。

 

言行不一致。

建前と本音。

ダブルスタンダード。

二枚舌。

 

いろいろな言葉が浮かびます。

 

このあたりのことを元党員の大野たかしさんがNoteに書いています。

自身も共産党内でハラスメント受けたことがあることも述べている人です。

 

 自分たちができないことを政府に求め、しかも、ハラスメントが何であるかっも理解せずに「ハラスメント批判」をしていたわけです。
 これが「ハラスメント根絶の党」の正体なのです。他の政策にも言えることですが、共産党の「主張」には、「政府に求める前に、まず自分たちが改めるべき」というものが多々あります。(参考・ジェンダー不平等な政党が「ジェンダー平等の党」を僭称した結末)
 「ハラスメント根絶」も、その象徴と言えるでしょう。
 「ハラスメント」や「ジェンダー」など、「革新支持層」に受けそうな概念が出てくれば、意味も理解せずにそれに飛びついて共産党の政策にします。
 一方で、党内にはびこっているハラスメントやジェンダー差別を改める気など毛頭ありません。
 改めるどころか、何がハラスメントで何がジェンダー差別なのか、理解する事すらしないのです。
 この事からもわかるように、共産党中央には「政策」を具体的に実現させる意志などありません。

 

 

 

 

票が取れる「革新支持層」に受ける言葉に飛びつくというのはこの党に限らないかもしれません。

しかし、これほど建前と本音が違う党も珍しい。

その理由を大野たかしさんはこう言っています。

 

 いったい、なぜこんなにハラスメントに寛容なのでしょう。
 何度か書きましたが、現在の共産党中央が目指しているのは社会変革でも革命でもありません。「共産党という組織並びに、長年続けられてきた、党の体制を維持すること」だけです。
 ここで示した「党の体制」というのは、「党の代表をはじめとする最高幹部を同一人物が長い期間続ける」「男性優位」「上意下達かつ、厳しい上下関係の存在」などを意味しています。
 この最後の「上意下達かつ、厳しい上下関係の存在」が共産党の党運営の本質です。
 「上」が決めたことは、どんなに間違っていても従わねばなりません。
 最近の例で挙げれば「党員と赤旗を4年前の1.3倍にする130%の党づくり」です。
 ちょっと思考力とデータ分析能力があれば、そんな事が絶対に不可能であることくらい、すぐにわかります。
 しかし、それを表明する事などできません。そこで、幹部は「130%の党を実現させよう」と「指導」するよりないのです。
 このような、理不尽な事に従わせるような上下関係を身に付けさせるには、ハラスメントは大変有効なのです。
 自衛隊のような上下関係が絶対な組織で、防衛大学校に入学するとまず強烈なハラスメントが発生するのと根は同じです。

 

共産党中央が目指しているのは社会変革でも革命でもない。

共産党という組織と長年続けられてきた党の体制を維持することだけ。

 

まあ、そう言われれば納得するところもあります。

 

東郷ゆう子氏への反論で今回の準備書面で共産党側はこう述べていました。

 

 各県委員会、地区委員会も同じように取り組んでいる。しかし、本来のあり方に反し、ハラスメントが発生することも一般的にはあり得るので、各県委員会、地区委員会をもそれぞれ問題が生じたとき担当者を決め対応出来るようにしている。被告中央委員会としては、党内にハラスメント防止をよびかけるとともに、党員からの申し出などに対しては訴願委員会、人権委員会などに窓口を設け、解決を図ることにしている。
 なお、政党が内部的にどのような組織形態・党員の権利義務関係を定めるかは、政党の自律権の問題である。最高裁昭和63年12月20日判決の「政党に対しては、高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をなしうる自由を保障しなければならない。」という判示により、司法審査の対象とならない。

 

パワハラかどうかを判定するのも共産党だし、その対策をどう作るのかも共産党の勝手なのだ、と言いたいのでしょう。

だから、小池書記長の読み間違えで田村智子氏を公然と叱責したのは謝ります。

だけど、田村智子氏が大山奈々子氏を公然と「党員としての主体性を欠き、誠実さを欠く発言だ」「全く節度を欠いた乱暴な発言」「党外から出版という形で党の綱領と規約を攻撃した者を除名処分にしたことは当然だ。この政治的本質を全く理解していない発言者に大きな問題がある」は間違っていないのだと言い張ります。

そしてルールを決めるのは「結社の自由」で守られている共産党なのだ!と。

 

でも、そのルール、小池書記長はパワハラの定義を記者会見では「優越的地位を背景にした業務上必要かつ相当な範囲を超えるもの」って認めていますよね。

 

 

4.政党がハラスメント問題で考えるべきこと

 

雇用関係のパワハラ規定が当てはまらないケースって結構あります。

雇用関係のパワハラ対策は労働法のなかで整備がされました。

でも、労働法の範囲からはみ出すものも多いのです。

 

宗教団体もそうだし、スポーツ界でも同じようなことが問題になっています。

 

たとえば宗教法人では、ある教団がこういうふうに定義したりしています。

 

ハラスメントとは、イエズス会員が、信徒およびその他のイエズス会関係者に対して、その優越的な関係に基づいて、使徒職としての適正な役割の範囲を超えて、身体的もしくは精神的な苦痛を与えることであり、次に掲げる行為を含む。

①身体的虐待(体罰など)
②身体的酷使
③精神的虐待(辛辣、強制的、威嚇的、威圧的、凌辱的、軽蔑的、
   侮辱的、屈辱的発言および第三者にそう解釈される発言をすることなど)
④人間関係からの切り離し
⑤個の侵害(プライバシー)

 

 

 

また、スポーツ界ではこうなっています。

 

⑴ パワーハラスメントとは、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって,業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第30条の2第1項参照)と定義される。


⑵ そして、スポーツ界におけるパワーハラスメントとは、「同じ組織(競技団体、チーム等)で競技活動をする者に対して、職務上の地位や人間関係等の組織内の優位性を背景に、指導の適正な範囲を超えて、精神的若しくは身体的な苦痛を与え、又はその競技活動の環境を悪化させる行為・言動等」であるとされている(文部科学省「スポーツを行う者を暴力等から守るための第三者相談・調査制度の構築に関する実践調査研究協力者会議報告(2013年12月19日)のスポーツ指導における暴力等に関する処分基準ガイドライン(試案)」。
  公益財団法人スポーツ仲裁機構のJSAA-AP-2020-001事案ⅲにおける仲裁判断においても、被申立人である日本パラ水泳連盟のコンプライアンス規程及び処分規程にパワーハラスメントの定義がないこと、被申立人が前記の定義を前提として申立人に対する処分の決定を行ったことや両当事者が仲裁において前記の定義を前提に主張を行っていることを理由として、前記の定義を前提にパワーハラスメント該当性を判断している。

 

 

 

 

雇用関係にあてはまらない分野では、それぞれがすでにハラスメントを定義して、ガイドラインや対策のための組織を作っているのです。

 

共産党が今行うべきとは、ハラスメントの防止のために、雇用関係ではなく政党で起きるハラスメントの定義を自ら設定すること。

そして、「結社の自由」で守られる「部分社会の法理」に頼ることではなく、市民社会と同じように有効な対策を講じることなのです。

 

もし、日本共産党がスポーツ界にならって、「同じ組織(競技団体、チーム等)で競技活動をする者に対して、職務上の地位や人間関係等の組織内の優位性を背景に、指導の適正な範囲を超えて、精神的若しくは身体的な苦痛を与え、又はその競技活動の環境を悪化させる行為・言動等」を参考にするならどうすべきでしょうか。

 

たとえば、ハラスメントの定義はこういうものです。

 

「同じ組織で政治活動をする者に対して、職務上の地位や人間関係等の組織内の優位性を背景に、指導の適正な範囲を超えて、精神的若しくは身体的な苦痛を与え、又はその政治活動の環境を悪化させる行為・言動等」

 

これをもとに、ハラスメントを見直して委員会やガイドラインを整備してはどうでしょうか?

 

そうすれば、田村智子氏が結語で大山奈々子氏に「党員としての主体性を欠き、誠実さを欠く発言だ」「全く節度を欠いた乱暴な発言」「党外から出版という形で党の綱領と規約を攻撃した者を除名処分にしたことは当然だ。この政治的本質を全く理解していない発言者に大きな問題がある」って述べたことを反省し、謝罪することになるでしょう。

 

味口市議の東郷ゆう子氏に対するハラスメントを認め、なにがしかの損害賠償を支払い、謝罪することになるのだと思います。

 

「結社の自由」で守られているという「部分社会の法理」は、ハラスメントの市民社会の基準で穴があけられるかもしれません。

これを「ハラスメント・ドリル」とでも呼んでおきましょう。

 

そして、東郷ゆう子氏の裁判で、「部分社会の法理」がハラスメント・ドリルによって破られることを期待します。