1.北欧の教育はどこが優れているのか?

 

フィンランドの学校

 

フィンランドはOECDの学習到達度調査「PISA」で毎回、上位にあり、「教育大国」として知られています。

 

フィンランドの学校には基本的に部活動はありません。

授業以外のスポーツや文化活動には、習い事として学校外で取り組むことになっています。

子どもたちは学校が終わって帰宅してから、練習やレッスンに出かけて行きます。

多くの自治体では、国の援助を受けて学校の施設を使って、週1~2回のクラブ活動が試験的に行われています。

基本的に参加は自由で無料。クラブ活動の監督は必ずしも教師ではなく外部に依頼し、活動費は国や自治体がカバーします。親のためというより、子どもたちが授業以外の楽しみや新たな趣味を見つけてウェルビーイングを向上させることが目標なのです。

 

部活動がないことは、教師にとっては大幅な負担軽減につながります。

2018年のOECDの「国際教員指導環境調査」(TALIS)によると、中学校教師の教育での指導時間数は日本が週18時間、フィンランドは20.7時間と日本の方が短いのですが、総合労働時間となると、日本は約56時間なのに対してフィンランドは33.3時間と圧倒的に短い。調査国平均の38.3時間よりも少ないのです。

日本では圧倒的に課外活動や学校運営に教師が費やす時間が多く、フィンランドは授業以外に費やす時間がOECD平均よりも少ないのです。学校運営に関わる仕事や事務処理は極力少なくして、各専門家が担当しています。

スクールカウンセラーや給食の栄養士、事務担当者と連携は取りますが、教師は基本的に授業に集中できます。

三者面談なんかもないのです。

フィンランドでは進路は家庭の問題という考え方です。

 

フィンランドはPISAなどの学力調査の順位にこだわっているわけではありません。

中国はPISAの調査を上海や北京に限定してランキングを上げようとしたり、日本では学校間で学力テストを競わせようとしたりします。

フィンランドはそんなこととは無縁で、移民が多くなって、移民も受けたら順位が下がったりしています。

PISAの順位より、子どもたちにどんな大人になってほしいか、どうなることが国にとって望ましいのかといったことを長期的な視点で考えながら、フットワーク軽く試行錯誤を繰り返すところがフィンランドの良さでしょう。

 

フィンランドには日本のような学習塾も存在しない。勉強は学校と家ですれば十分で、子どものウェルビーイングと、機会の平等の観点から必要ないと考えられている。ただ、厳密に言うと医学部や建築、アートといった特殊で狭き門の学部を受験する学生のため、最近は入試対策コースのような有料講座が存在する。それについて教育大臣は「由々しき問題」とコメントしている。お金の有無で機会の不平等があってはならないという理由からだ。

そして、この考え方は教育にだけ及んでいるわけではない。全ての人たちに平等で公平な機会をつくるという発想は、フィンランドの社会や福祉サービス全ての根幹になっている。

 

 

 

 

教育と財政

 

フィンランドの教育を支えているのは教育にお金をかけているからでしょう。

GDPに占める公財政教育支出は、北欧5カ国がすべてOECD平均を超えています。

日本との違いは歴然です。

 

 

国内総生産(GDP)に占める教育に関する公財政支出(2017年)は、初等教育から高等教育まででOECD平均は4.9%で、日本は4.0%と低い水準です。

最も比率の高いノルウェーは6.7%、アイスランド5.8%、デンマーク5.5%、スウェーデン5.5%、フィンランド5.2%と北欧はどの国も高い水準です。

 

 

高等教育費への支出

 

高等教育の家計支出は、OECDの加盟国で、日本の教育はGDP比52.7%(2016年)でした。これはチリに次いで高い負担でした。

OECDの平均値は23.4%です。

 

 

アイスランド7.4%、ノルウェー3.5%、、スウェーデン0.9%、フィンランドに至っては0.0%と、北欧諸国は公的教育費支出の対GDP比が高く、家計負担割合が低いのです。

 

これは先ほどの図のように日本政府が教育に配分する支出が少ないからで、高等教育の支出がとくに低いのが日本の特徴になっています。

 

 

 

フィンランドの教育費無償化

 

フィンランドなど北欧諸国は教育への公的支出の高さから、教育無償化を実現しています。

北欧が教育に力を入れるのは、日本に比べ人口が少なく、それだけ人材養成に力を入れている表れとも言えます。

 

フィンランドは小中一貫の教育で、小中学校は基礎学校と呼ばれ9年生まである。教育で最も基本的な原則は無償、ウェルビーイング、子どもの権利、平等に要約できる。
教育費は小学校から大学まで無償。給食は保育園から高校まで無償。教科書と教材は、小学校から高校まで無償だ。小中学校では、ノートなど学用品ももらえる。従来、高校の教科書は有償で親が買う必要があったが、2021年秋から高校まで義務教育になったことに伴って無償化された。

また、日本の学校にあるような学級費やPTA会費、お揃いの体操服、家庭科キット、算数セット、習字道具、卒業アルバムなどさまざまな出費も一切ない。無償は、貧富の差による教育格差を広げないための政策だ。給食は教室で食べるのではなく、小学校から高校まで学校の食堂で供される。

 

フィンランドで、教育が無償になったのは1970年代。公立学校の運営は、クンタと呼ばれる自治体(日本の市町村に相当)が出費し、県は教育には関わらない。私立学校も、政府またはクンタなどからの公的資金で経営されるのが特徴だ。基本教育法第7条によって私立学校が利潤を得ることは禁じられており、授業料はないのが普通だが、親が多少必要経費を払うことはあるようだ。
日本やアメリカ、イギリスなどでは公立学校の教育は質が悪いが、私立学校は経済的に余裕がある家庭の子どもに質の高い教育を行う傾向がある。しかし、それは平等を重視するフィンランドの教育思想が嫌うことで、そうした差はほとんどない。

 

 

 

 

フィンランドだけでなく、北欧のどの国も教育無償化を実現しているのです。

 

 

奨学金も給付型の比率が高くなっています。

 

 

大学の学費は無料です。

 

 

 

2.社会保障を支える北欧の財政

 

社会保障支出

 

年金や医療費など社会保障も同様です。
 

社会保障のGDPに占める割合では、デンマーク30.8%、フィンランド29.5%、ノルウェー26.5%、アイスランド25.6%、スウェーデン25.5%です。

 

 

医療費と満足度

 

しかし、医療費の国家支出について、北欧と日本ではあまり変わりません。

 

 

むしろ、日本のほうが低いとも言えます。

しかし、その負担制度が異なります。

 

日本は社会保険料で運用しているのですが、北欧では税負担の比重が高いのです。

また、医療費の窓口負担が多いのも日本の特徴です。

 

 

 

では、こういう教育と社会保障が北欧で実現できているのはどうしてなのでしょうか?