1.自民党の裏金問題と処分

 

自民党では、派閥の政治資金規正法違反事件の関係者を処分するらしい。

安倍派元幹部について、党規律規約の規定で2番目に重い「離党勧告」とする方向で最終調整に入ったとか。

 

自民党の処分は、重い順に〈1〉除名〈2〉離党勧告〈3〉党員資格停止〈4〉選挙での非公認〈5〉国会・政府の役職の辞任勧告〈6〉党の役職停止〈7〉戒告〈8〉党則などの順守勧告――がある。

 

 

 

かつて郵政民営化問題では、民営化に反対した議員を除名や離党勧告処分にしたこともある。

 

しかし、今回は4番目に重い「選挙における非公認」になるとみられていたが、世論の批判などを考慮してそれ以上になるかもしれない。

 

執行部は、4氏が不正還流を止められる立場にありながら対処しなかった点を重視しているらしい。

さらに、「非公認よりも厳しい対応が必要だ」とする党内の意見や、世論の反発が依然として強いことなどを踏まえ、「離党勧告」とする方向で検討している。

党籍をどうこうするという「離党勧告」を4人全員に科すか、一部にとどめるかなどを近く最終判断するとか。

シリアスな問題なのに、なんとあけっぴろげな議論なのか?

安倍派の会長代理を務めた塩谷立氏、下村博文氏、西村康稔氏、世耕弘成氏を含め、派閥のパーティー収入の還流分を政治資金収支報告書に記載していなかった議員は安倍、二階両派で82人に上る。

自民は派閥の役職などを踏まえ、3~4段階に分けて処分する方向のようだ。

不記載額や議員歴などを考慮し、若手などの一部には処分を行わないことも検討している。

 

 

 

この問題、国会や週刊誌がわーわー言っているが何が問題なのかを整理しておく。

 

結論から言うと、法律上は「政治資金規正法違反の虚偽記載」という罪だ。

 

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、安倍派と二階派について、東京地検特捜部は、おととしまでの5年間で、安倍派の会計責任者は合わせて6億7503万円、二階派の会計責任者は合わせて2億6460万円のパーティー収入などを派閥の政治資金収支報告書に収入として記載していなかったなどとして、政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で両派の会計責任者を在宅起訴しました。

また特捜部は、安倍派や二階派だけではなく、岸田派「宏池政策研究会」についても、元会計責任者は、2020年までの3年間で、合わせて3059万円のパーティー収入などを派閥の政治資金収支報告書に収入として記載していなかったとして、罰金刑を求める略式起訴をしました。

一方、特捜部は松野 前官房長官ら安倍派の幹部7人や、二階派の会長を務める二階 元幹事長など派閥の幹部からも任意で事情を聴いてきましたが、いずれも派閥の会計責任者との共謀は認められないとして、立件しない判断をしました。

 

 

で、どういう罰則があるかというとこういうことだ。

 

 

こういう問題は、共産党なら即除名だと思う。

 

そういう意味では共産党はクリーンな政党だと思う。

 

 

2.共産党の異論公開と処分

 

いっぽう共産党では去年何人かが除名や除籍処分になった。

松竹伸幸氏の除名処分をめぐってはこういう経緯だった。

 

除名処分を出した党京都南地区委員会と党京都府委員会も、今月6日にコメントを発表。党規約の「党内に派閥・分派はつくらない」、「党の統一と団結に努力し、敵対行為は行わない」、「党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない」などの規定に反したため除名したという。
 党内の猛反発に、松竹氏は6日の会見で「共産党に日本政治を良くする役割を果たせるようになってほしい、との強い思いで出版した」と反論。処分前に受けた党の調査では「本を出して、党員に同調を呼びかけている」として、分派活動と見なされたという。「あぜんとした。出版が分派活動で、処分されるなら憲法の言論、表現の自由は死ぬ。こんなことを進める党だって滅びかねない」
 党規約によると、処分は「警告」「権利停止」「機関からの罷免」「除名」と4段階あり、除名は最も重い。果たして松竹氏の言動に対する処分として、見合うのか。
 松竹氏によると、分派活動を理由にした除名処分は、1986年に宮本顕治・中央委員会議長(当時)の退任を求めた東京大大学院生の党員が受けたケースはある。今回の処分は「過去の歴史から見ても、異様だ」として今後、撤回を求めていくという。

 

 
共産党の場合、レーニンが作ったコミンテルンの民主集中制で「鉄の掟」として党中央の路線から外れるとすぐに除名していた。
スターリンが、トロツキー、ブハーリン、ジノビエフなどを除名した例が有名。
 
戦後、日本でも渡邉恒雄(1947年)、井上光晴、堤清二、中西功(1950年)、志田重男(1957年)、香山健一、福本和夫、森田実(1958年)、長洲一二(1959年)、安部公房、春日庄次郎、内藤知周、花田清輝、山田六左衛門(1961年)らが除名され、後に作家や評論家、企業経営者になっている。
佐多稲子、野間宏、丸木位里、丸木俊、出隆(1964年)たちを除名。核実験をめぐって、志賀義雄、鈴木市蔵、神山茂夫、中野重治(1964年)を分派活動で除名。
いいだもも、吉川勇一(1965年)、大塚有章(1966年)、安斎庫治、井上清、大隈鉄二、四代目河原崎長十郎、竹中労、西沢隆二、原田長司、福田正義(1967年)などが政治的な路線問題をもとに分派で除名されている。
袴田里見を規律違反で除名(1977年)。
宮地健一が規律違反で処分されるが、今回の松竹伸幸のように闘った。
 
スパイがばれて、除名になった伊藤律(1953年)なんかもいる。
ソ連崩壊で公文書が漏れて、スパイがばれたのは、共産党最大の大物・野坂参三(1992年)だ。
 
これらは今の除名・除籍問題とは性格を異にするが、1980年代からちょっと様相を異にする。
 
原水爆禁止運動で、市民運動に共産党が介入して、それに抗議した吉田嘉清(1984年)や古在由重(1984年)なんかが除籍措置となった。
市民連合の小田実と共産党の副委員長の上田耕一郎の対談を実現させた有田芳生(1990年)は除籍措置。
党幹部の昔の屈服を明らかにした元赤旗編集局員下里正樹(1994年)は権利停止処分後に党を公然批判し除名になった。
元赤旗特派員で不破哲三が朝鮮総連を褒め称えたことに抗議した萩原遼(2005年)も除籍された。
今田真人(2014年?):元赤旗記者、除籍措置。
赤旗記者の今田真人は吉田清治を擁護する証言を出版し、除籍(2017年?)
不倫で市川正一(2000年)は除名。
松竹伸幸、鈴木元(2023年)は除名。
 
 
1980年代以降は、市民運動との関係で党中央の管理下に置けなくなった場合ー①、ジャーナリストが真実名目で党中央とは違う報道をしたときー②、党中央が異なる路線だと判断した場合-③に党規律を乱したとか、分派活動だと除名・除籍処分を行っている。
 
共産党の管理しない市民運動に近づいたり、党幹部に都合の悪い報道をするジャーナリストが除名になるケースが目につく。
 
これらの人は、自民党のように政治資金規正法違反とか法を犯しているわけではない。
共産党独特の基準なのである。
 
自民党に例えると郵政民営化の是非が似ていると言えば似ている。
しかし、松竹伸幸氏も鈴木元氏も国会議員でもなく、議会かなんかで明確に路線に反対したわけではない。
 
自民党の基準と共産党の処分の基準は明らかに違う。
まあ、これも「結社の自由」なのではあるが。