デザインする企業・マリメッコ

 

フィンランドの有名な企業にマリメッコがあります。

マリメッコは、フィンランドのアパレル企業で、同社が展開するファッションブランド名 (marimekko) でもあります。

鮮やかな色の大胆なプリント柄をデザインした商品ラインナップが特徴です。

 

マリメッコの創業者はアルミ・ラティア夫妻です。

1951年にマリメッコが設立されました。


ジョン・F・ケネディ候補夫人のジャクリーン・ケネディがマリメッコのドレスを愛用していたことが報道されたことで、アメリカでの知名度が急上昇しました。

マリメッコは世界各地に100以上の直営店を持ち、約40の国でその商品が販売されています。

マリメッコを代表するデザインのひとつである花柄の「ウニッコ」(Unikko)柄を特別塗装したエアバスも有名です。

 

 

マリメッコは繊維企業でもありますが、多くの芸術家を輩出しているデザイン重視の企業でもあります。

 

 

スマートフォン市場に乗り遅れたノキア

 

フィンランドを代表する企業にノキアがあります。

 

フィンランドは携帯電話の普及率が世界一の時代があり、主な携帯電話会社にノキア(NOKIA)とSONYERICSSONがありました。
どちらも日本でも販売されていました。

NOKIAはカバーを取り替えられるものが多く、ムーミンのカバーやマリメッコの花柄のカバーが人気でした。

 

 

 

しかし、iPhoneが出現してから、ノキアのシェアは減り続け、2014年4月には携帯事業をマイクロソフト社に売却しました。

ノキア社は経営悪化のため、

今ではiPhoneのマリメッコバージョンも登場しています。

 

 

 

 

デンゼル・ワシントンの映画で使われたスントのウォッチ

 

フィンランドにはほかにもスポーツ用デジタルウォッチで有名な スント社があります。

スント社は1936年に創立さました。

1939年に 冬戦争が始まりフィンランド国防軍に大量のコンパスと傾斜計を納入しました。

 

1960年代にから世界で最初のダイビング用コンパスを作り、ダイビング分野に参入し、1972年にはフィンランド大統領から年間輸出大賞を授与しました。

世界最大のダイビング・ベストのメーカーだったシー・クエストやスイスのコンパスメーカーであるレクタを買収しましたが、1999年にはアメア・グループ(現・アメアスポーツコーポレーション)に買収されました。2019年にアメアスポーツは中国のスポーツウエアメーカーの安踏体育用品に買収されています。

 

2014年公開の『イコライザー』で、元CIAエージェントのロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)が着けていたのが、SUUNTO ALL BLACK。

 

 

ロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)は、昼はホームセンターの従業員、夜は闇の仕事請負人として活躍するこの作品。
どんな裏の仕事も19秒で完遂するこのデンゼル演じる主人公のしている時計が、スント社のものだったのです。

 

スント社はこの映画を宣伝に使っているようです。

 

 

ノキア社の復活

 

ところで、携帯電話で世界を席巻したノキアは今、ネットワーク会社として蘇っています。

ノキアは2010年代に入って、スマートフォン市場では大きく出遅れ、アップルのiPhoneやグーグルが開発したアンドロイドOSにシェアを大きく奪われていました。携帯電話の成功体験からそのビジネスモデルから逃れらなかったのです。
携帯事業に可能性を見いだせなくなったノキアは、マイクロソフトに同事業を約54億ユーロで売却することを決断。その後は通信機器メーカーとして再出発を果たし、当時ささやかれた倒産危機を逃れ、現在は次世代通信「5G」の重要プレーヤーとして注目されています。
この大変革期に同社を率いたのが、2012年に就任した取締役会会長のリスト・シラスマ氏です。

シラスマ氏は自ら起業した会社のCEOを務めた後、ノキア取締役に就任し、その後会長として、起業家精神と客観的な視点でノキアを率いてきました。

 

2013年の夏、マイクロソフトと交渉していたノキアはシーメンスとも交渉を進ていました。

シーメンスは通信機器の合弁会社「ノキア・シーメンス・ネットワーク(NSN)」の株を売却したいという意向を示し、ノキアはマイクロソフト社に携帯事業を売却し、シーメンスからネットワーク会社を買収するという離れ業で復活しました。

 

さらに2015年にはフランスの通信機器メーカー、アルカテル・ルーセントを156億ユーロで買収しました。


起業家マインドがノキアを変えた

 

シラスマ氏は、会長に就任し、巨大企業であるノキアを変革するした原動力を起業家マインドだったと言っています。

 

――会長に就任し、巨大企業であるノキアを変革するには、多大な労力を必要としたと思います。シラスマ会長を駆り立てた原動力は何だったのでしょうか。


私は1988年にセキュリティのテクノロジー企業を立ち上げ、18年間CEOを務めた。今でもその会社の最大株主であり、会長だ。物事が間違った方向に行かないように、頭の中でシナリオを作らないわけにはいかない。ノキアでも同じ気持ちだった。会社が正しい文化を醸成できていれば、従業員は皆プライドを持つ。プライドを持っていれば、会社がうまくいくために何ができるかを考える。たとえ外部から招かれた経営者であっても、傍観者にはならず、起業家として責任を持たなければならない。そういうマインドを、私は自分で持とうとした。

――現場の社員とのコミュニケーションも重視しているようですね。

私は純粋に、会社の中で何が起こっているかということに興味があった。そして誰かが私の部下だと思ったことはない。私が創業した会社では皆平等だ。私がボスではなく、皆が一様に同僚だった。単に、私には特定の役割と下すべき意思決定があっただけだ。

だからノキアの本社では今でも、私はカフェテリアに座り、紅茶を飲みながらメールをチェックする。なるべく近づきやすい雰囲気を出すよう努めていた。通りかかった人々と話す。時には会ったことのない社員とも。彼らが取り組んでいるプロジェクトのことを効き、議論を交わす。そうすれば、うまくいっていること、いっていないことがよくわかる。

 

 

復活を果たしたノキアですが、今、このネットワーク市場の変化にも直面しています。

 

米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)や米マイクロソフトといった大手クラウド事業者が、通信機器市場に進出している点だ。通信機器のソフトウエア化の進展に伴って、これまでハードウエアで構成していた通信機器をクラウドサービス上で実現できるようになってきた。一部の通信事業者はクラウドサービスを活用した通信機器を導入しつつある。

 

これら大手クラウド事業者の通信機器市場への進出は、ノキアのような通信機器大手のビジネスの一部を奪う可能性がある。

この点について、ランカスターレノックス社長は「大手クラウド事業者は我々の競合である一方、我々の顧客でもあり、我々の協業相手でもある」と打ち明ける。

実はノキアはAWSやマイクロソフトなどと協業し、クラウドサービスを活用した基地局製品も提供している。「クラウドサービスを使った通信機器は、通信事業者にとっても緊急時のバックアップとして有効だ」とランカスターレノックス社長は続ける。

 

 

そして、2023年10月には大規模なリストラを発表しました。

 

フィンランドの通信機器大手ノキアは19日、従業員の約16%に当たる最大1万4千人の人員削減を実施すると発表した。高速大容量の第5世代(5G)移動通信システム向け事業が振るわず、大型リストラで経営の立て直しを図る。

ノキアは2026年末までに8億ユーロ(約1260億円)から12億ユーロのコスト削減を目指す。現在8万6千人の従業員数は7万2千~7万7千人に減少する見込み。

 

ペッカ・ルンドマルク最高経営責任者(CEO)は声明で「市場がいつ持ち直すかは不透明だ」と指摘。コスト削減は「不確実性に適応し、長期的な収益性と競争力を確保するために必要なステップだ」と述べた。

 

 

 

ノキアでの8時〜16時の勤務。残業や休日出勤はしない

 

ノキアは、日本で言えばトヨタのようなフィンランドをリードするエクセレントカンパニーです。

 

この会社の働き方はどうなのでしょうか?

 


 ーーー現在の仕事内容を教えてください。


フィンランド第2の都市で近年イノベーション都市として注目を集めているエスポー市で、電気通信機器メーカーのノキアに勤めています。携帯電話用の5G基地局装置のソフトウエア開発を担当しています。

複数の外資系メーカーの日本法人で働いた経歴があるのですが、昔から欧州で働きたいという強い思いがあり、ノキア日本法人の社内公募を通じてフィンランドの開発ポジションに採用されました。2018年から、妻と一緒にフィンランドで暮らしています。

ーーーノキアでの働き方について教えてください。


こちらでは一般的なフルタイムの労働時間が1日8時間、または週40時間を超えてはいけないと定められており、ノキアの場合は1週間に37.5時間が標準の勤務時間です。私は8時〜16時に勤務して、そのうち30分を食事休憩としています。勤務開始・終了時間は個人で調整できますが、8時〜9時に開始して17時前に帰宅するのが一般的だと思います。

「残業しない」のが通常であり、時間内に必要な業務が終わるよう、時間配分しながら働いています。私の場合、通勤は車で片道15分なので、プライベートの時間も十分取れています。新型コロナウイルスのパンデミックが起きてからは、いつでも在宅勤務ができるようになったので、通勤しない日も多いですね。

ただ、ラインマネージャー(日本でいう管理職)になると働き方が変わり、夜間や週末に働くこともあるようです。彼らは一般社員とは給与水準が異なりプレッシャーもあるため、自身の裁量で責任を持って働きます。

 

2018年、フィンランド大手の電気通信機器メーカー・ノキアソリューションズ&ネットワークスの日本法人からフィンランド・エスポー市の本社に移った阿部寿徳さん。携帯電話用5G基地局装置のソフトウエア開発を担当しています。

 

 

ノキアでも管理職になると、夜間や週末に働くこともあるのです。

一般社員とは給与水準が異なりプレッシャーもあるため、自身の責任と裁量で働くところは日本と同じなのでしょう。

 

『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ社新書)の著者・堀内都喜子氏はフィンランド人はプライベートな時間のために仕事のあり方も考えると言っています。

 

「フィンランドには、人間らしく健やかに生きられる環境があると思います。それはほとんどの人が仕事を定時で切り上げて、家族と過ごすことや趣味に時間を使っているから。そして、これは、配偶者や子どもの有無に関わらず、すべての人に認められた『休む権利』なんです」

休むことは、健康に暮らすために必要不可欠な権利。同時に、フィンランドの人々はその権利を享受するための努力も欠かさない。

「彼らは休むための効率化や体制づくりを、ものすごく努力して実践しています。デジタル化を推進して手間を省くことはもちろん、誰かが休んだときに『その人の仕事を誰が請け負うのか?』もあらかじめ決めることで、誰がいつ休んでも大丈夫な環境を作っているんですね。もちろん、誰もが『休みたい』とオープンに言うための社内の雰囲気づくりにも力を入れています。社内の満足度調査は毎年ありますし、社内体制を改善するための話し合いは年に2~3回行われます」

 

 

 

 

SISU(シス)とは何か?

 

フィンランドが連続して幸福度世界一になってから、「SISU(シス)」という言葉が世界中で知られるようになりました。

SISUは「フィンランド人の心」や「フィンランド人の魂」と呼ばれることもあり、フィンランドの国民性を象徴する言葉です。

 

「SISU(シス)」について、Joanna Nylund氏が『Sisu: The Finnish Art of Courage』を2018年に出版しています。

 

著者のNylund氏によると、この「SISU(シス)」という「行動志向の考え方」は、少なくとも500年以上根付いているもので、「毅然とした決意、強さ、勇敢さ、意志力、忍耐力、不屈の精神」というような意味になります。

 

また、フィンランディア大学による「SISU(シス)」の説明もわかりやすいです。

 

「SISU(シス)」とは、つかの間の勇敢さではなく、勇敢であり続ける能力のことです。十分に意味を伝える同じような単語はありません。フィンランド人やフィンランド人の気質を説明するもので、犠牲があってもやるべきことをやるという哲学を表しています。

 

「SISU(シス)」とは、フィンランド人の持ち前の気質です。気骨、根性、根気、気力、忍耐、不屈などと言えるかもしれません。

 

困難をしのぎ、最後までやり抜く、誠実さや高潔さの尺度です。

 

「SISU(シス)」とは、過去の失敗から学び、勇気を持って前進する性質のことです。歯を食いしばって、戦いの犠牲をすべて払う気概です。

 

つまり、信じられないようなことを数多く成し遂げる、フィンランド人を際立たせる、不屈の精神です。

 

 

気骨、根性、根気、気力、忍耐、不屈。

フィンランドの歴史を考えるとこれらの言葉の意味がなんとなくわかります。

 

ノキア社の復活もSISUの表れと考えられます。

徴兵制に賛成するのもそういう精神かもしれません。

 

何よりも人生の目標をプライベートの時間に置き、そのために仕事の時間も効率的に設定する。

集中して働き、オフの時間を充実させる。

 

フィンランドSISUは、よりリアルに此岸を生きていく知恵なのかもしれません。