自民党大会で除名はどうなる?

 

国民のほとんどが興味ないと思うが、自由民主党第91回大会が明日、開催される。

 

1月以降、日本共産党では大会で除名の再審査請求がどうなるかが焦点だった。

しかし、今回の自民党大会でも「除名」が話題になると思われる。

ただ、共産党に比べて、自民党の除名問題は緊張感に欠けるが。

 

先日、こんなニュースがあった。

 

 県議会第一会派の自民党県議団は、政務活動費を不正支出した疑いがあるなどとして、東2区(羽生市)選出で当選5回の諸井真英議員を15日付けで除名処分としました。

 諸井議員をめぐっては、今年度の勉強会の会費38万5000円を昨年度の支出として計上していた疑いがあるとして、自民党県議団が政務活動費管理委員会を開き、諸井議員から事情を聞くなどして調査をしていました。

 その結果、今年度の支出分を昨年度に付け替えて支出していたほか、日付が改ざんされた領収書を提出したと認定しました。

 

 

まあ、除名は当然だろう。

この除名は、異論を唱えるとか、その異論がどうとかいう問題ではない。

しかし、裏金問題なんかのシリアスな問題もある。

 

裏金問題ではさすがに関わった者を除名処分にしないといけないと言う人もいる。

 

自民党安倍派に所属した西田昌司参院議員は14日、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けて開かれた参院政治倫理審査会(政倫審)に出席し、安倍派幹部が裏金問題についてまったく説明責任を果たしていないとして、離党や議員辞職を含めて責任を果たすべきとの考えを示した。 日本維新の会の音喜多駿参院議員の質問に答えた。

西田氏は、安倍派幹部の離党や除名を望むかと音喜多氏に問われると、西田氏は「それ(離党や除名)も含め、まずは関わった方が正しく事実関係を報告し、その上で自らの責任の重さを考え、出処進退を考えるべきだ」と指摘した。

 

 

 

ゆるゆるな自民党の党則

 

明日の党大会で自民党は党則などを改正する予定である。

会計責任者が政治資金規正法違反で逮捕・起訴されたら、議員本人に「離党の勧告」や「党員資格の停止」などの処分を行える。また会計責任者の有罪が確定し、議員も関与するなど政治的・道義的責任がある時は「除名」か「離党の勧告」を行うことになる。

 

しかし、この改正もあまり意味があるとは思えない。

 

処分の規約は既にあり、重い順に「除名」「離党の勧告」「党員資格の停止」「選挙における非公認」「国会および政府の役職の辞任勧告」「党の役職停止」「戒告」「倫理憲章などの規定の順守の勧告」などがあるが、他党と比べても極めて身内に優しい。今回の裏金事件の処分が決まらないのは、旧安倍派や旧二階派からの反発が多いからとか。当事者が意見することがおかしいが、一番厳しい除名にあったとしても痛くもかゆくもないだろう。こちらもゆるゆるなのだ。

元国家公安委員長・松本純は21年1月、コロナ禍で緊急事態宣言の中、銀座のクラブにいたとして離党。自民党神奈川県連幹部は「除名の次に重い離党勧告を受けた人。2度と戻ることはない」としていたが、同年10月の衆院選では無所属で出馬し落選。翌月、党幹事長・茂木敏充は復党させ、県連が抗議し白紙に戻ったが結局22年1月、復党した。ポスト岸田とちやほやされている外相・上川陽子は、00年6月の衆院選に自民党員だったが、自民党公認候補がいながら無所属で静岡1区から出馬し初当選。出馬強行で党を除名になったが、翌年には復党している。つまり除名とは、ほとぼりが冷めるまでの待機期間でしかない。除名になってもすぐ帰ってくるよ。

 

 

 

自民党も党員拡大が課題だが、党勢は後退

 

130%の党勢拡大を目標にして、後退を続けているのが日本共産党だ。

自民党の場合、そこまで気合いだけの目標ではないが、後退しているのは同じだ。

 

政治とカネの問題に揺れる自民党の党員数がおよそ3万人減少したことがわかりました。

自民党によりますと、去年の年末時点の党員数は109万1075人で、前の年と比べて3万3688人減りました。

金子組織運動本部長は、「12月に派閥の政治資金をめぐる問題が表面化し、国民や党員の不信を招いたこと」などが原因だと分析しました。

さらに、「今年は厳しい状況での党員獲得運動となる」と指摘したうえで、目標としている党員の120万人の達成に向け、「粘り強く取り組んでいく」としました。

 

 

112万人の党員を120万人にする目標があったとういうことだ。

107%増の目標だったのが、3%弱後退したことになる。

 

 

自民党が党員を増やす理由とは?

 

自民党が党員を増やす理由は共産党は大きく異なる。

 

議員政党として出発した自民党か、党員数を増加させるきっかけになったのは、1977年の総裁予備選挙の導入であった。各派閥が国会議員の個人後援会などを通じて投票権を持つ地域党員を増やしたからである。さらに、1983年の参院選から拘束名簿式の比例代表制が導入され、各候補者の名簿の順位が獲得党員数を考慮して決められたため、友好団体か職域支部を設け、職域党員を積極的に増大させた。その結果。参院選の前年にピークをつけつつ、党員数が底上げされていった。

 

○中北浩爾『自民党』中公新書

 

議員中心の政党が自民党だった。

議員がお金を集め、選挙組織としての後援会が票を集めていた。

しかし、自民党が党員拡大を初めて、1991年には543万人を超えた。

 

ところが、自民党の党員数は、1991年に5,439,890人に達した後、一転して減少に向かう。その大きな原因は、1994年の政治改革によって派閥や個人後援会の弱体化が進み、総裁選挙での動員効果が弱まったことにある。また、2001年に参議院の比例区が非拘束名簿式に変更され、友好団体が職域党員を増やすノルマを負わなくなった結果、自民党の党員数の減少は加速していった。さらに、2009年の政権交代か、それに追い打ちをかけた。

 

○中北浩爾『自民党』中公新書

 

2014~15年にかけて、自民党は従来の300の小選挙区すべてに4000名の党員を確保することを目指す「120万党員獲得運動」を実施した。

自民党の党員数は、ピーク時から大幅に減少している。その背景には、国会議員の個人後援会の弱体化がる。そこで、党員獲得をてこにして個人後援会を強化しようとしたのである。
 

国会議員は一律に1000名の党員獲得がノルマとして課された。自民党の綱領や政策に賛同する18歳以上の日本国民であれば、他党の党籍を持たない限り、党員になることか可能であるか、すべての党員には紹介者が置かれ、それを示す管理コードがつけられている。
したがって、新規党員あるいは継続党員のうち、それぞれの国会議員か紹介者であるのが何人なのかは、直ちにデータとして引き出すことかできる。かなり厳格な党員管理がなされているのである。
1000名の党員獲得のノルマを達成できなかった国会議員には、未達成分について一人あたり2000円の罰金か科されたが、達成できたのは二分の一であったという。

つまり、半数の国会議員は罰金を都道府県連に支払ったのである。一般党員の党費か年額4000円なので、名前を借りて自腹を切るよりも、罰金のほうか安かった。しかし、党員の確保は、「候補者選定基準」などにも努力すべき事項として明記されており、罰金を支払えば済むということでもなかった。 何人かの若手議員に聞くと、1000名のノルマの達成は厳しかったようである。個人後援会の会員の間では党員になることへの抵抗感か少なくないし、4000円の党費のメリットを説明することも容易ではない。衆参両院議員か競合しただけでなく、都道府県議会議員も当選回数などに応じて100~500名程度の党員獲得が地方組織ごとに目標として設定されていたため、それとも重なった。パーティー券の販売とは違い、党費を二重に支払ってもらうわけにいかないという困難か党員獲得には存在した。
都道府県別の党員獲得の達成率をみると、国政選挙などでの強さかそのまま反映している。達成率の平均は82.3%であり、党員数は987,182となったが、富山県の259.8%をはじめ、100%を超えているのは北関東、北陸、中国、四国、九州など自民党か強い地域に多い。また、ある県連のデータをみると、県議会議員の達成率か国会議員より二倍以上も高かった。地方議員が強い県連の例であるとしても、国会議員に比べて都道府県議会議員のほうか、比較的よく個人後援会を維持していることを示している。
 

○中北浩爾『自民党』中公新書

 

 
そして、現在120万人には達していないが、自民党の場合、党員数は総裁選にも影響する。
 
石破さんは国会議員のウケがよくないので、国会議員票が半分入ると、まず総裁・総理にはなれない。でも、党員投票だけにしたら、石破さんが総裁・総理になる可能性も出てくる。たぶん党員投票だけにはならないが、絶対とは言い切れない。今回の総裁選のやり方がまだ決まっているわけではない。というのも、今年4月に行われる補欠選挙の結果次第で、党所属の国会議員の数が変わったりするので、制度も決められない。

石破さんは本音で言うと、国会議員投票なんか次の総裁選ではやめて、党員投票だけでやってくれたら「俺は総理になれるのに」というくらい意欲があります。
 
国会議員にノルマを課して党員拡大を行い、未達成には罰金も辞さない。
 
議員政党だった自民党は、派閥で大きくなり、その派閥の国会議員が増やした党員が総裁選に影響を与えるようになっている。
 
 
 
ゆるゆるの党内民主主義
 

除名処分がゆるゆるなのも党員の要件がゆるゆるだからだ。

党則で締め付けるよりも、総裁を選ぶときに投票が影響するほうを優先しているともいえる。

 

 

 

石破議員などは総裁選に向けた政策を発表しているようだ。

 

自民党の石破茂・元幹事長は26日、衆院予算委員会集中審議で質問に立ち、持論の「防災省」設置などについて岸田首相(党総裁)の見解をただした。秋の党総裁選を見据え、自身の政策をアピールした格好だ。

 

 

共産党のように党員中心の政党である政党もあれば、自民党のように議員中心の政党もある。

共産党と違い、自民党では定期党大会が大きな意味をもたない。

総裁選とそのまえの政策提示、それこそが自民党の重要な選択の機会だろう。

 

自民党では党員の除名は、贈収賄などの刑事事件、政務活動費の不正支出では問題になる。

しかし、路線の対立で除名されることが稀なのはそういう理由によるのだ。

 

このゆるゆるな党則、党内民主主義の考え方、これは共産党とは対極にある。