『東洋経済オンライン』 (2024年3月1日)に中北浩爾氏(中央大学教授)の記事が載った。

 

 

 

 

後半から引用するとこんなことが書いてある。

 

党大会では、十分な討論もなく松竹氏からの再審査請求が却下された。重要なのは、田村委員長が、松竹氏らの求める党首公選によって選ばれたわけではないことだ。

共産党の組織原則は、民主集中制である。戦前、ソ連共産党が指導したコミンテルン(共産主義インターナショナル)の日本支部で会った時代の名残であり、革命を実現するための「鉄の規律」を本質とする。その下では、党内で派閥(分派)とつくることも、党内の問題を党外に持ち出して論じることも禁じられている。現在はかつてに比べて緩和されているが、それでも松竹・鈴木両氏は出版の相談をしたことが分派と見なされ、除名されたのであった。
この閉鎖的でトップダウンの民主集中制が、パワハラを生み出しやすい土壌であることは間違いない。田村委員長は党大会後、「パワハラではなく派告げに対する批判だ」と反論したが、SNS上では、各地の党組織でもパワハラが起きているという告発が相次いでいる。また、党大会の前後に複数の党員が匿名で記者会見を行い、「被害者を泣き寝入りさせることが常態化している」などと告発した。
党大会では、多数者革命を実現するために、民主集中制の組織原則を維持することが確認された。しかし、その下で党員の除名や除籍が頻発し、各地でパワハラが起きている。正規の手続きに従って党大会で異論を述べただけで党指導部から厳しい糾弾を受けるようでは、国民の共感は得られず、多数者革命など夢のまた夢だ。


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【追記】以上の原稿を書き、入稿した後の2月21日、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」は、「日本共産党を論ずるなら事実にもとづく議論をーー中北浩爾氏の批判にこたえる」と題する論文を掲載した。これは東京新聞などでの私の論評に対しての批判を加えたものである。
この場を借りて、執筆に当たった谷本諭氏(同党理論委員会事務局長)に感謝するとともに、私の反論文を「しんぶん赤旗」の同一面に同じ分量、かつ無料で掲載するよう求めたい。万が一、共産党が拒否する場合、その理由を明らかにしていただきたい。
なお、サンケイ(現産経)新聞1973年12月2日付朝刊に掲載された自民党による共産党批判の意見広告をめぐって、共産党は憲法21条に基づく「反論権」を主張し、同一分量の反論文の無料掲載を請求して、裁判を起こしたことがある。それとの整合性が問われることを付言しておく。
 

 

なお、中北浩爾氏が述べているサンケイ新聞の事件は、『憲法判例百選』にも載っているこういう裁判。

 

産経新聞社は、翌年予定されている参議院議員選挙を前にして、1973年12月、「サンケイ新聞」に自民党を広告主とする意見広告を掲載・頒布した。

その広告の内容は、日本共産党が定めた「民主連合政府綱領についての提案」は日本共産党の党綱領と矛盾しているとし、ゆがんだ福笑いの絵とともに指摘、批判したものであった。

 



日本共産党は産経新聞社に対し、日本共産党の反論文を朝刊に原文どおり無料で掲載することを求めたが、産経新聞社は有料の意見広告としてであれば応じるが、無料では応じれないとして拒否した。

日本共産党は反論文の無料掲載を求める仮処分を申請したが、却下された。そこで日本共産党は同一スペースの反論文の無料掲載を求める訴訟を提起した。

【判決】

 

憲法21条によって、反論文掲載請求権(反論権:アクセス権)は保障されない。

 

まず、憲法21条(表現の自由)は、私人相互の関係については適用ないし類推適用されるものではない。その趣旨からすると、憲法21条の規定から、直接に、反論文掲載請求権(意見広告や反論記事の掲載を求める権利)が他方に生ずるものではない。

 

また、民法723条の名誉回復処分または人格権としての名誉権に基づく差止め請求権も、不法行為の成立を前提として初めて認められるものであって、この前提なくして反論文掲載請求権を認めることはできない。

 

反論権の制度が認められるときは、新聞を発行・販売する者にとって、その掲載を強制されることになり、また、そのために本来ならば他に利用できたはずの紙面を割かなければならなくなる等の負担を強いられる。

 

そして、これらの負担が、ことに公的事項に関する批判的記事の掲載をちゅうちょさせ、憲法の保障する表現の自由を間接的に侵す危険につながる恐れも多分に存する。

 

したがって、反論権の制度について具体的な成文法がないのに、反論文掲載権(反論権・アクセス権)をたやすく認めることはできない。

 

中北教授は、無理筋の要求をしている。

 

「しんぶん赤旗」の文章の中で自分のことを「日本共産党を論ずるなら事実にもとづく議論をーー中北浩爾氏の批判にこたえる」と題する論文を執筆した谷本諭氏(同党理論委員会事務局長)に「感謝するとともに」なんて書いている。

 

そうとう怒っているのがわかる。

 

おお、こわ!

 

さて、日本共産党は、中北教授の要求に応えて、同一分量の反論文の無料掲載するのだろうか?

 

【追記】

ああ、谷本諭氏の文章を日本共産党はあろうことか、政治の素人さんも多く読んでいる「しんぶん赤旗日曜版」にも載せたみたい。

 

 

 

ここにも中北氏の反論を載せることになるのか?