先日、パトラとソクラが『「しんぶん赤旗」はファクトチェックをすべきでないのか?』というブログを書いたら、日本共産党員を名乗るchocolateさんがそれを批判してきて、40回を超えるコメントの応酬となった。

 

chocolateさんはヒラの党員を名乗っている。

実際はどうかは知らないが、今、松竹さんがブログで「3つの非」と批判している山下芳生氏の考え方と共通する点があることに気付いた。

 

党幹部とヒラの党員にも共通する点。

それは今の党のマインドと言ってもよい。

「さざ波通信」という日本共産党の左派が作っているブログを読んでいて、それは確信になった。

 

今の共産党に、昔のマルクス・レーニン主義のような体系的な思想はない。

それが「さざ波通信」の人たちが今の共産党を批判している点だ。

 

例えば、カール・マルクスが後期の著作で使った「物象化」批判というような考えが今の共産党には通用しない。

物象化とは、人と人との関係が物と物との関係として現れることである。

資本主義の生産関係の構造に注目したマルクス自身は断片的な記述しか残していないが、ルカーチや廣松渉が重要視したために注目されるようになった。

それは商品の物神性批判にも繋がるが、マックス・ウエーバーの官僚主義批判への系譜ともなっている。

 

そういう哲学的な考えはもはや日本共産党には残滓もない。

 

 

1.一つ目の地雷としての「安保政策」

 

そういう日本共産党で起きているのが、綱領への物神崇拝なのだろう。

 

たとえ、日本周辺で安全保障について危険性が高まろうと、ウクライナみたいな侵略が起きようと、安全保障について語ることをしてはいけないのだ。

それは宮本顕治体制で作られた日本共産党綱領は、日米安保廃棄、自衛隊解消がマインドであるので、その逆方向の安全保障や国防について党員が考えるべきことではないのだ。

平和運動をいくら語ってもよいが、国防を語ってはいけないのだ。

 

chocolateさんとこういうやり取りがあった。

 

 

>chocolateさん

質問は、共産党の基本政策としての安保政策は何か?ですね。

この場合、安保政策というのは国家の安全保障政策ということでいいですか?

通常、安保政策というと国家の安全保障政策のことですので、それが一番現実的な形で示されたのは、2015年の志位委員長のこの発言だと思います。

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 「日本有事のさいに在日米軍の出動をどうするか」という質問もありましたが、私は、「戦争法廃止を前提として、これまでの条約の枠内で対応することになります。日米安保条約では、第5条で、日本に対する武力攻撃が発生した場合には、(日米が)共同対処をするということが述べられています。日本有事のさいには、連合政府としては、この条約にもとづいて対応することになります」とお答えしました。

 「日本有事のさいに自衛隊を出動させるのか」という質問もありましたが、私は、「戦争法を廃止した場合、今回の改悪前の自衛隊法となります。日本に対する急迫・不正の主権侵害など、必要にせまられた場合には、この法律にもとづいて自衛隊を活用することは当然のことです」とお答えしました。

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-10-30/2015103002_01_1.html
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それから、国際関係と核兵器のことでは、非核三原則と核兵器禁止条約に共産党は積極的ですね。

これらをひっくるめて「核抑止抜きの専守防衛」と言ってもいいのかもしれません。

ただ、国防として自衛隊の装備をどうすべきか、軍事同盟として日米安保条約や日米地位協定をどう変えていくのかということについて、共産党の安保政策はよくわかりません。


パトラとソクラ2024-02-12 22:06:41

 

 

それに対するchocolateさんの答えはこうだった。

 


>パトラとソクラさん

 質問に対して回答いただき、ありがとうございます。核心部分については外してお答えになったかなという印象でした。

 党のHPに「政策」が詳細に語られています。外交・安全保障分野に関する政策もたいへん詳細に示してあります。松竹さんの主張なさっておられる内容だけでなく、HP等に記載されている党の主張にも目配りをしていただき(必ず読むべき、などというつもりはありません。)、できましたらあまり一面的・決めつけ的なメッセージとならないように留意していただければと、厚かましいお願いですが申し上げます。
 もし読んでいただければ、これまでのあなたの見解に新たな要素が添加されることになるかもしれないと、僭越ながら思ったりもします。

 松竹さんと党との政策上の相違点については、1月から2月にかけて党が発信した「松竹伸幸氏の除名処分をめぐる論説」が一番よくわかります。
 私のつたない話ではお判りにならないことでしょうから、時間がございましたら、再度その諸論文をお読みいただくことで党の見解を把握していただけたらと思います。

 あなたと党の方針は180度に近く真逆の立場だと思いますので、読んでいただいても納得していただけないことが予想されますが、現段階での党の見解としてお受け取り下さい。


chocolate2024-02-12 22:38:50
 

 

chocolateさんは答えられなくなるとだいたい何かのコピペである。

今回は「週刊金曜日」コピペだった。

こういう内容だ。

 

>パトラとソクラさん

私が言っているのは『党としての基本政策は、「安保廃棄・自衛隊違憲」です。松竹さんの主張とは違います』です。
 「連合政権」時のことではありません。

※ご参考までに
松竹氏は自著や会見で「国民の目から見ると共産党は異論を許さない政党だと見なされる」などと危機感を表明。その異論の核心が日米安保・自衛隊の堅持・容認論だった。専守防衛は自衛隊合憲を前提にして初めて成立する。

 一方の共産党側は「今や専守防衛さえ覆す岸田内閣の大軍拡に反対する国民多数派をつくる」ために、自衛隊を合憲と考える人々とも協力、譲歩を重ねてきたとも言える。しかし、「国民多数の意思で日米安保を廃棄」「9条の完全実施による自衛隊の解消」が「綱領の根幹」であることは変わらない。

 松竹氏自身が「党内の安保・自衛隊への拒否感は著しく強いものがある」とし、たとえ党首公選が実現して自分が立候補できても、「安保・自衛隊即時廃棄」の対立候補が出たら「圧勝するだろう」との見方を示した。党支持者からは「野党共闘のためとはいえ、立憲民主党や保守リベラルへのすり寄りではないか」との批判も出ている。

 党執行部や多数派の許容量を超えるような提案をあえてした理由について松竹氏は「立憲やリベラルに近づくというのではなく、党の政策が初期段階では安保・自衛隊堅持を認めているのだから考え方は共通している。立憲や自民・リベラルの専守防衛論も米国の核抑止の傘に頼っているから『核抑止なき』というところが異なり、私の考えで党の政策を豊かにしていくという立場だ」と説明した。

 処分を不服とする松竹氏は「中央委と党大会に再審査を求めることができる」との規約に則り、来年1月の党大会に向け、処分撤回とその場での党首公選実施をあくまで求めていくという。

(『週刊金曜日』2023年2月17日号)


chocolate2024-02-12 09:21:07

 

これで、党の基本政策が松竹氏は違うと言われても理解しようがない。

そう言ったら、最後は党の政策をコピーしてきた。

トホホである。

 

共産党の「基本政策」としての「安保政策」とは、「安保廃棄政策」なのであって、決して「安全保障政策」ではないのだ。

そう考えると、chocolateさんと山下芳生氏が言っていることを理解できる。

 

「安全保障政策」や「国防政策」を語ること、それは綱領を批判していることになるのだ。

この人たちは自分がリアルにウクライナにいる姿など想像できない。

そういう時代に生きていることがわからないのだ。

 

松竹伸幸氏は、柳澤協二氏や伊勢崎賢治氏らと「自衛隊を活かす会」の活動をしている。

そういう活動をしていると本気で日本の安全保障について考える。

そこで、2015年の志位和夫氏の発言や『新・綱領教室』などから日本共産党の安全保障の考え方も整理した。

それが「核抑止抜きの専守防衛」の考え方だった。

それは、けっして、明文化されている綱領をはみ出したものではない。

しかし、今、中枢部にいる共産党の幹部の目には、「あの安保政策は、安保廃棄政策ではない」と映った。

だから綱領を攻撃しているということになった。

これを考えたのは志位和夫氏なのか、最初に「しんぶん赤旗」に除名のための批判文を書いた赤旗編集局次長の藤田健氏なのか、パトラとソクラにはわからない。

 

藤田健氏は、2023年1月26日の「しんぶん赤旗」にこう書いた。

 

松竹氏は新たに出版した本のなかで、次のようにのべています。

 「共産党が現段階で基本政策として採用すべきだと私が考えるのは、結論から言えば、『核抑止抜きの専守防衛』である。日本は専守防衛に徹するべきだし、日米安保条約を堅持するけれども、アメリカの核抑止には頼らず、通常兵器による抑止に留める政策である」

 これは、日本共産党の綱領の根幹をなす、国民多数の合意で日米安保条約を廃棄するという立場を根本から投げ捨て、「日米安保条約の堅持」を党の「基本政策」に位置づけよという要求にほかなりません。

 

 

 

 

これで松竹伸幸氏の著書が禁書であるという方向性は決まったのだろう。

 

それ以降、●●の一つ覚えみたいに松竹伸幸氏とは「基本政策が違う」「基本政策が違う」と党の上から下までの大合唱である。

 

 

 

 

2.もう一つの地雷「党首公選制」

 

もう一つの地雷が「党首公選制」である。

いや、実際に踏んではいけなかったのは、「宮本顕治体制が作った民主集中制」であって、「党首公選制」はそれにつながる「雷管」のようなものだったのだろう。

宮本顕治体制が作った民主集中制とは、六全協の前後で宮本顕治氏が政敵をどんどん排除して作り上げた党中央による集権体制のことだ。

これは、かつてスターリンがトロツキーやブハーリンなどを排除、処刑していって作り上げた体制と似ている。

一度こういう中央集権体制を作ったら同じような指導部が再生産され、党官僚による官僚主義が維持される。

「民主」集中制と、頭に「民主」がついているので党員がその仕組みに騙されてしまう。

意見を言うのが自由だと言ってもそれは閉じられた「支部」のなかの話で、あとは直接党指導部に手紙が書けるという程度のものだ。

そういう仕組みはあるが、選挙結果など本質的な批判をすると、実際には手紙の返事が来ないことに怒って、鈴木元氏は『志位和夫委員長への手紙』を出版した。

 

たとえ松竹伸幸氏が提唱している「党首公選制」を実施しても、即「分派」が出来たり、今の指導部が席を失うわけではない。

松竹伸幸氏が主張しているのは、まず今の規約のなかで「党首公選制」を実施することだ。

選挙は党大会で行うのだ。

ただ、候補者は党大会参加者でなくてもいいということなので、松竹伸幸氏も候補になれるという些細な変革だ。

そうなれば実際に選ばれるのは、旧指導部から立候補する人たちが多数派になるし、おそらく幹部会委員長に選ばれるのは田村智子氏らになるだろう。

でもそれでも、ある種の人々は、あることが許せないのだ。

 

chocolateさんとのやり取りでそれがわかった。

 

こういうやり取りがあった。

 

>パトラとソクラさん

 私は党員であり、今次の党大会決定を支持する立場の者です。私の考えは基本的に党大会決定に合致します。自分自身の言葉と党の見解が相違することはほぼありません。
 したがって、繰り返し申しますが、党大会決定を読んでいただいて、あなたの党への不信がまだ残る箇所があるのならば、その点をご指摘いただけるのが私としてはありがたいです。

 そのうえで何点か申し述べます。
・「党としての基本政策」と「連合政権での党の対応」とは違う。
・「自衛隊の活用」については、松竹さんと党とでは平時における自衛隊の位置づけが異なる。(松竹さんは明言はされていませんが、おそらく「敵基地攻撃能力を自衛隊が保有することに否定的ではない」と思います。)
・「党首公選制」は「民主集中制」の放棄またはこの原則を弱めることに繋がる。
・「大会結語」についての私の以前のコメント
→一般組織の中で、今回田村さんのような発言があれば、「パワハラ」と捉えられるケースはあるかもしれません。しかし、今回のケースは、長期に渡り重層的に議論を積み重ねてきた経過というものが存在し、しかも今後の活動方針を確定するという、党にとって最重要な場である党大会での発言であり、大会のまとめとなる「結語」において、党としての見解・方向性を明確にする必要上、適切な内容であったと私は思います。


chocolate2024-02-12 07:07:39

 

その後のやりとりで、「民主集中制」の部分だけを取り出すとこうだ。

 

>chocolateさん

 

>・「党首公選制」は「民主集中制」の放棄またはこの原則を弱めることに繋がる。


③松竹さんは「党首公選制」を今の規約の範囲内で実施することを『シン・日本共産党宣言』で書いていますよね。
「民衆集中制」の原則を弱めるとはどういう日本語ですか?
 もしかしたら、民主主義が強まると、党中央による集中制が弱まると言いたいのですか? あなたは党内民主主義が強まることに反対なのですか?

パトラとソクラ2024-02-12 07:21:41

 

 

これに対するリプライがあった。

 

 

>パトラとソクラさん

③について…直接の回答ではないですが、再度以前のコメントの一部を述べさせていただきます。
《 ※参考までに①…Wikipediaに記載されている「日本共産党の代表選出プロセス」です。
代表に関して一般党員による直接選挙の結果を用いる規定を持たない。 代表は党規約に基づき以下のプロセスで選出される。
2 - 3年に1回開かれる党大会で、全国から選出された代議員による選挙で中央委員会を選出する(全員が選挙で選ばれる)。
中央委員会は、1年に2回以上行われる中央委員会総会で議長(必ずしも置かなくても良い)、幹部会委員全員、幹部会委員長、幹部会副委員長若干名、書記局長の全てを選挙によって選出する。
このため、「党首」と言っても直接選挙制で選出される「党首」のように絶対的な権限が付与されることは無く、いわゆる「党首」にあたる幹部会委員長も、議論を経て合意を得た党大会決定、中央委員会決定、幹部会決定、常任幹部会決定に拘束される。幹部会委員長は党の決定、党員の総意から離れて、勝手な言動を行うことは許されない。 》

 「党首公選制」の実施は、この組織運営に齟齬をきたす、と党員は判断し党大会において確認しています。

chocolate2024-02-12 07:50:10

 

パトラとソクラはこう反論した。

 

 

>chocolateさん

>③について…直接の回答ではないですが、再度以前のコメントの一部を述べさせていただきます。
・・・
 「党首公選制」の実施は、この組織運営に齟齬をきたす、と党員は判断し党大会において確認しています。


要するに中国共産党と同じ仕組みを崩したくないということですね。
中国共産党は、労働者階級の支配する社会=プロレタリアート独裁、そのための前衛党の指導、国家における党の影響力、鉄の規律である民主集中制、特権階級である党員というシステムになります。
この思想、この組織で党首公選制は実施できません。


パトラとソクラ2024-02-12 08:11:35

 

 

これに対してはこういう答えだった。

 

 

>パトラとソクラさん

③について…私たちの組織上の問題として、私たち自身が判断していることです。党員以外の人に権利侵害とならないとすれば、私たち自身の判断を尊重していただきたいと思います。
 私たちの組織原則が「民主集中制」を採ることによって具体的に日本国民の権利侵害・社会不安を引き起こしている事実があるならばお示し願えたらと思います。

chocolate2024-02-12 08:29:09

 

要するに、われわれが決めているルールだ。

部外者のお前に何か文句あっか?

 

ということだ。

 

宮本顕治体制が作った民主主集中制。

それはスターリニズムの変種である。

今の中国共産党のシステムとよく似ている。

専制的な組織なのに、党指導部は民主的に選ばれているという幻想がある。

 

「安保政策」を「安保廃棄政策」と勘違いしている党幹部と党員。

「宮本顕治体制が作ったシステム」から自由になれない党幹部と党員。

 

そして、松竹伸幸氏はこれら二つの地雷の犠牲になった。

 

という仮説はどうでしょうか?