(神戸地方裁判所)

 

この裁判は、日本共産党の兵庫県議会議員候補として選挙にも立候補したことがある東郷ゆう子氏が灘民商から不当解雇され、その上日本共産党には裁判により党内のことを党外に持ち出したとして、規約違反で除籍された案件である。

 

(東鄕ゆう子さん)


しかし、東郷氏側の弁護士が反ワクチン運動に関わっているとか、最近東郷氏が旧統一教会とXで密接に繋がり、ほとんど支持を表明しているとか、また共産党の被災地カンパで東郷氏がデマを流しているとか周辺情報のほうがネット上は多い。

 

(一番左が弁護士の木原くにや氏)


それで、この裁判の本質が見えにくくなっているが、東郷ゆう子氏側の訴状(訴への変更申立書を含む)と日本共産党側の反論を読むと、この裁判の争点がわかる。

 

ひとつは、部分社会の法理の問題と日本共産党の規約に沿って公正に除籍手続きがなされたのかどうかが焦点である。
つまり、松竹伸幸氏が除名処分を不服として、日本共産党を提訴しようとしている裁判と争点がとてもよく似ているのだ。
※東郷ゆう子氏側の弁護士はいろいろ変わっていて、訴状などを旧仮名遣いで書くため、「訴え」を「訴へ」と書いたりする。

東郷氏側の「訴への変更申立書」では提訴による除籍の不当性を争点の一つとしている。

 

提訴を理由に除籍処分したのは正当な本訴が「不当な口実」による訴訟とはいへない

 

 また「それに絡めて日本共産党に対し不当な口実で2023年6月30日に訴訟を起こしました」とあるが、「不当な口実」であるかどうかは裁判所が判断すべきであつて被告日共らが判断すべき事柄ではない。

 

原告には憲法32条に定める「裁判を受ける権利」が保障されてゐるのだから、被告日共地委がその独断と偏見により原告の提訴を「不当な口実」と決めつけ、原告が提訴したこと自体をもつて除籍処分にしたことは、つまるところ原告の裁判を受ける権利を侵害するものといはざるを得ない。

 

被告日共らは、日常の対外的な政治活動では「憲法を守る」と主張するので、当然のことながら憲法32条に定める国民の裁判を受ける権利を擁護すると主張するのであらうが、いざ党内の問題に至つては、党員の裁判を受ける権利を平然と侵害する反憲法的行為に及ぶ政治団体であり、それが被告日共らの民主集中制(党規約3条)の実態なのである。 


https://kiharalaw.jp/wp-content/uploads/2023/09/8c388550453253e4ceb8e0165a4881a1.pdf


これに対して、日本共産党側が1月21日に第二準備書面を裁判所に提出した。

それにはこの争点について、こう書かれている。

昭和63年最判は、「政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばないというべきであり、他方、右処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、右処分の当否は、党外政党の・・・」とし、「処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題」にとどまらない場合とは、「処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合」であることを判示している。

 

すなわち、党員が、一般法人法78条(政党法人法8条)によって、「『損害』を与えられた第三者」になるのは「一般市民としての権利利益に何ら「損害」が生じるものではないのである。


https://kiharalaw.jp/wp-content/uploads/2024/01/fd3a5fe63019485ef2f2ba3c34ef30df.pdf

つまり、日本共産党の候補になるのではなく、別の政治活動もあるので、東後氏に「損害」はない。だから、訴えの利益はない、というのが日本共産党側の主張なのだ。

 

あと適正に除籍されたかどうかは、日本共産党側は東郷氏が調査の求めに応じなかったと主張し、東郷ゆう子氏側は弁護士の同席のもとで調査に応じると言っていたと主張し、日本共産党側はそれは内部問題だとかどうとかで争っている。


でも、日本共産党はスゴい論理だ。


これでは不当な除名や除籍で精神的損害を被ったという東郷氏の立場がない。

でもまあ、これは昭和63年の袴田里見氏の裁判から引用しているようで肝心なところをわざと抜いていると思う。

最高裁昭和63年判決では、袴田里見氏のほうが手続きを踏んでいないことで敗訴した。
しかし、判決ではこうも書かれていた。

 

他方、右処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、右処分の当否は、当該政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情がない限り右規範に照らし、右規範を有しないときは条理に基づき、適正な手続きに則ってされたか否かによって決すべきであり、その審理も右の点に限られるといわなければならない。



政党内部の問題は自立権があるので、特段の事情がない限り裁判所は介入しないということだ。
しかし、「当該政党の自律的員定めた規範が公序良俗に反する」場合はどうなのだろうか?

裁判を起こしたから除籍というのは会社などではありえないことだ。
例えば、懲戒処分で停職になった従業員がそれで提訴したとして、それが社外に問題を持ち出したとして、解雇するみたいなものだ。
これは裁判を受ける権利を侵害するのでありえない。

では、日本共産党が規約の第五条(八)で「党の内部問題は、党内で解決する」ということに裁判所への提訴は抵触するのかどうかということだ。

https://www.jcp.or.jp/web_jcp/html/Kiyaku/index.html

 

 

内部問題は党内で解決するってのは、裁判も禁止です!ってことが日本社会で通じるのだろうか?

これはいくらなんでも日本共産党が負けると思うがどうなのだろうか?