(右)平裕介弁護士、(中央)松竹伸幸氏、(左)伊藤建弁護士

 

いよいよ松竹氏が裁判を行う。

その記者会見があった。

 

具体的な訴えの内容は今後詰めるが、会見に同席した平裕介弁護士によると「地位確認と損害賠償請求については、確実に起こす」。伊藤建弁護士は、名誉毀損をめぐる損害賠償請求について「実際にやった行為よりも少し大きく表現されている部分があるので、そのあたりについて十分な検討の余地がある」とした。

 

 

 

YouTubeが、そのすべてを伝えている。

 

 

 

この会見のビデオを見て、以下のことがわかった。

 

①裁判は東京地方裁判所で提訴する。

 

②名誉棄損(または信用棄損)の損害賠償請求訴訟であるが、共同不法行為として除名処分を行った日本共産党京都南地区委員会常任委員会および京都府委員会常任委員会の除名処分を訴訟対象とする

 

③どの言動を名誉棄損(または信用棄損)の対象とするかは今後詰める

 

以上が訴訟の概要だ。

 

 

質疑の中で、争点とするであろういくつかのポイントがわかった。

 

a.袴田里見裁判(昭和63年)との関係について

 

・除名処分について、撤回を求めた袴田里見訴訟では部分社会の法理を用いて、党内部の問題には立ち入れないとなったが、除名処分の手続きなどで今回は争える余地がある

 

・袴田裁判のときに判例の前提となった昭和35年裁判は令和2年に判例変更されているので、今回の判決でどうなるかはわからない

 

 

b.令和4年の自民党での除名撤回裁判は影響するか?

 

自民党の裁判では慰謝料請求が認められなかった。しかし、今回の松竹裁判のケースには妥当しない。

 

 

c.党員からの党の内部事情を暴露する資料などは裁判で有効か?

 

民事裁判では違法収集証拠とされるハードルは低い。つまり、証拠として採用される可能性は高い。

 

 

d.どういう事例が名誉棄損となるのか?

 

実際の行為以上のことを表現されている場合などだ。

 

 

争点はまだあるだろうが、大きくはこういうところなのだろう。

 

ただ、d.の名誉棄損の判断は問題になるだろう。

名誉棄損裁判は、名誉を棄損する行為だとされても、それを真実だと思う「真実相当性」があれば、名誉棄損が棄却される。

 

「真実相当性がある」とは、真実であると信じるべき正当な理由や根拠があることをいいます。 つまり、公共性があり、公益を図る目的であって、その内容が真実、または真実だと信じるべき正当な理由や根拠があれば「名誉毀損罪」として処罰することが出来ないということです。

 

 

 

 

真実性判断は,あくまで客観的な判断ですので,色々調べても,結果的に真実ではないことはありえます。
  そのような場合に,その真実に近づく努力を評価したといえましょうか。真実と誤信したことについての要件です。
  真実相当性判断は,一般に言われているのとは違い,単に真実と盲信した,または,安易に信じたでは認められる要件ではありません。その厳しさ,たとえば,資料を得る努力は,相当に必要になります。真実相当性も,証明可能な程度の厳しい真実性が要求されることになります。
  真実性と真実相当性との違いは,最高裁判決が述べましたが,資料の判断時期の違いとなります。真実が,裁判上の真実,つまり,判決に取り入れることの精一杯の制限範囲となる口頭弁論終結時までの資料を問題にする反面,真実相当性は,「名誉毀損行為時」が基準になります。

 

 

 

 

まず、名誉棄損行為が認められ、真実相当性でも棄却されないことが重要だろう。

 

幸か不幸か「しんぶん赤旗」で、えらい人たちが無茶苦茶書いているし、そもそも除名処分の理由自体がこじつけともいえるのでそこはクリアするかもしれない。

 

除名処分理由は簡単には以下の4点だった。

 

①「党首公選制」という主張は、「党内に派閥・分派はつくらない」という民主集中制の組織原則と相いれない

②「核抑止抜きの専守防衛」なるものを唱え、党綱領と、綱領にもとづく党の安保・自衛隊政策に対して攻撃した

③鈴木元氏の本の出版を急ぐという党攻撃の分派活動を行った

④異論を保留する権利も行使することなく、党規約および党綱領に対する攻撃を行った

 

 

 

素人でも批判できる論点だ。

 

 

これで名誉棄損が成立すれば、除名処分の手続きの不備を指摘することになるのだろう。

 

党大会では概括的に決定されてしまったが、松竹氏が指摘している事実だけでも党大会決定を争うことはできるだろう。

 

(1)地区委員会で日程が告げられず、弁明の機会を保障されなかった。

(2)分派活動の定義を求めたが、説明がなかった。

(3)地区委員会での審議の前に、「しんぶん赤旗」で論評が掲載されたり、最初から決まっていたという党出版物での証言もあり、中央委員会による除名処分の恣意性がある。

(4)再審査請求では、決定を下した機関や関係者への再調査もしなかった。

(5)党大会の代議員が審議せず、大会幹部団だけで決定し、党大会では報告をしただけであった。

 

もう、この問題について書くのを止めようと思ったが、松竹さんの記者会見を見て、適当にお付き合いしてみようと思った。

 

いや、民主主義の人類史からは、スターリン主義的中央集権主義がアジアで飛び地的に残っている政党内での政治的自由を求める闘争として意義ある行動ではある。

 

この裁判は、1990年前後にイタリア共産党の党員たちが党内民主主義を求めた闘いに匹敵する。

それはスターリン主義的中央集権制の解体過程だった。

 

頑張れ、松竹さん!

応援します!!!