
含み綿に適している綿は、黄綿(オウメ)と言われる綿で、脱脂以前のものことです。
この綿がなぜいいかと言うと、試しに、水の中に綿をいれてみるとわかります。
ずっと、コップの中で浮いているのです。
普通の綿は水を吸収しますので、直ぐにしたに沈みます。
だから化粧水をコットンにしたして、顔にパッテングする綿は普通の綿 脱脂綿といいます。
それに比べて、含み綿用の綿は、水を吸収しないので、故人様の口を整えるのに、
口の中の体液、唾液などを吸収せず、頬の沈んでいるところにピンポイントで
入れて、形が整えられる「魔法の綿」なんです。
以前に働いていた会社では、コスト削減のために、脱脂綿にしてましたが、
唾液を含んでしまい、一つの所にくちゃっと固まってしまい、なかなか思ったような
形に整えられませんでした。
最近は病院によっては、本当に綺麗にファンデーション、口紅を付けてあるのです。
それでも、口の中の綿はアメを含んだ様にポコンと固まっていて
お家の方から「口の辺りの感じが、ちょっと生前の父の口元ではないので
直してもらえませんか?」と言われますので、口のなかの綿をピンセットで取りますと
水分を含んでクチャッとなっています。
口元をもう一度、黄綿で整え直して、お家の方にみて頂きますと
「よかったーこれでお父さんの顔になった」そう言ってもらえました。
「納棺師」が不要になる時期が来るかもしれない。
いや、「必要ない」と言えばそうなのかもしれない。
病院で亡くなられた故人様は、綺麗に身体を拭いてもらいます。
そして、化粧もしてもらえます。
「やっぱり、プロを頼んでよかった」
そう言われるには、それ以上の技術と、お家の方の気持ちに沿った
施行をする。
それが必要なのかと自分に言い聞かせて、一つ一つの施行を頑張っています。
そして、最後、送り出す時には「ありがとうございます」
と霊柩車が見えなくなるまで合掌をして感謝の気持ちで送ります。
在家にお邪魔すると、私の耳はいつも、ダンボになっています。
「ちょっと顔色が悪くなってきたねー」そう親戚の人が、
故人様の顔を覗き込んでおっしゃったとき、それを聞き逃さず
「お顔の色が生前と違うとお聞きしましたが、どうですか?」
「はい、ちょっと黒い感じになってきたような、、」
では、目の周りが少し、お色が変わっていらっしゃいますので、其処を
ファンデーションでカバーさせて頂いてもよろしいでしょうか?
全体を薄く、お顔の色に合わせたファンデーションで血色よく見える様に
整えさせて頂いてもろしいでしょうか?」
とお化粧をする、という感覚ではなく、生前のお顔に出来るだけ近くするためのメイク。
そのことを理解していただく為にも、一つ一つの動作を、お家の方に確認を取りながら行います。
病院では、それがされていない為に男性に頬紅を塗ったり、口紅を塗ったり
してあるのですが、それが嫌というお家の方の意見がよく聞かれます。
もし、口紅の色にしても、「この色でいいでしょうか」という確認をもらってから
塗る動作があれば、「嫌」ということにはならないのですが、、、
口紅もなぜ塗るかという所まで説明をします。
全部が整い、唇に少し血色があれば、もっと生前のお顔に近ずく為の口紅です。
と説明をして、少し塗って、色をみてもらう。
1時間の施行の中で、決して自己満足になってはいけない、
私の思いは、アドバイスとして申し上げることはあっても、決定権はお家の方。
そんな事を気をつけながら、いつも施行をしています。