私の友人のえりちゃんのおじいちゃんが、亡くなり、葬式は経験がなく、しかも相談できる男性(ご主人とか、お父さんとか、、、)がいなくて、おばあちゃんは週3回透析を受けている状態で、おじいちゃんが病院に運ばれた時も おばあちゃんは透析の途中でした。
「今、病院にいるんだけど、心臓マッサージしても、もう回復の見込みがなくて、後は静かにご家族で時間を過ごしてくださいって言われたんだけど、この先どうしたらいいの?」
そう電話がありました。
 わたしも以前お付き合いしていた元彼と連絡すれば、いろいろが聞けるんだけど、、どうしたらいいんだろ~~っていうのが頭にありましたが、えりちゃんには「亡くなったらね、すぐに葬儀屋さんに迎えに来てもらわなくてはいけないからね。まずは葬式にいくらかけるか、だけど、準備しているお金はいくらで、自宅で祭壇飾りもしない家族葬にするのか、葬儀社のホールを借りてやるのか、葬儀社に頼んだら、最低100万はかかるんじゃないかな?それプラスお寺さんのお布施料かかるから、おばあちゃんはどういってるの?」
「なんかね、おばあちゃんは互助会に入っているっていってるんだけど、私はお金かけたくないの、どうしたらいい?」
「じゃあ、とりあえずその互助会の掛け金がいくらあるかを知りたいから、連絡先教えてね」

おじいちゃんはとうとう帰らぬ人となり、葬儀社の連絡先がわかり、私はすぐにそこに電話をして「親戚のものですが、今、何口かけているかと聞きますと
「4口あります」
「じゃあ、その範囲で葬儀をしたいんですけど、弔問の人は呼ばずにひっそりと執り行う要望がありますが、小さいホールはありますか?」
「はい、家族葬向けの1日1件のホールがあります。掛け金の範囲内で出来ますので、そちらにしましょうか?」
「はい、では病院に今からお迎えに行ってもらったら、自宅には帰らず直接そのホールに搬送をお願いします」
という感じで、すべて、えりちゃんと、おばあちゃんから任された私はちゃっちゃと決めてしまい、電話が終わってから、ホールは決めたから、そこで待っててね、私も今から向かうからね」

1時間半かけてホールに到着すると、もう打ち合わせの最中で、担当の人が私を待っていました。
湯灌は葬儀の中に含まれていますが、それはどうしましょう?棺だけ用意して、あとはすべて私にまかせることも出来ます、といいました。
どうしようか?とえりちゃんとおばあちゃんを見ても、何にも言ってくれません。私に縁りょうしているんでしょうね、と思い、
「おばあちゃん、最期のお風呂、おじいちゃんに入ってもらいましょうね、そのあとの化粧、納棺からは私にやらせてね」そうおばあちゃんに言い、
担当の人にも、湯灌お願いします、と言いました。

その後、おじいちゃんの ご安置されている部屋に行き、おじいちゃんの顔にかかってある白い布をとってお顔を拝見しました。
少し眉間に皺と、唇がきゅっと中に入り込んでいるから、それを直したくても、やっぱり縁りょがあって、すぐに白い布をかけました。
今日はえりちゃんも息子2人、おばあちゃんとみんなでおじいちゃんといっしょに寝るのだそうです。
「ねえ、このハンカチは取っておいてもいいの?」とえりちゃんが聞きました。
「いいよ。おじいちゃんは、みんなが起きている時は起きていたいと思うし、みんなが寝ている時は寝ますから、その時にハンカチをかけて上げればいいと思います。
じゃあ、もう少しおじいちゃんが安らかなお顔になるように、眉間の皺と、唇がいま、お口の中にきゅっと入っちゃっているから、それを出してあげたいのだけど、やらせてくれる?」
「うん、おねがいします」
さっそく、車の中から、化粧バックを持ってきて、唇が出るように、綿を入れて、マッサージクリームでお顔全体をマッサージしながら眉間の皺をのばしました。
「あっくん、愛ちゃんの仕事をよく見てきなさいよ」
そうえりちゃんが言いますと、あっ君(中学3年)は横でじっと見ています。
右側が壁にピタッとついていて、右側の髭が剃りにくく、立てひざでやっていると腰が痛くなって
「やりにくいから、ちょっとお布団をずらしてもいいかな?」というと、あっ君がすぐに布団に手をかけて一緒に手伝ってくれました。
鼻毛がもじゃもじゃとあったので、それもすっきりとさせて、口も微笑んでいるように口角をあげて
「どう?おじいちゃん、すっきりしたでしょ?」
「ほんと、笑ってる、」
そういってくれました。
おばあちゃんも、見ていると「おいっ」って声をかけてくれる感じだ~」と言います。

次の日は11時から湯灌、納棺で、その葬儀社の湯灌の人と一緒に施行しました。お願いしていた通り、化粧、納棺は、私に任せてくれました。
納棺飾りの色の希望は長男の祐哉くんに聞きました。
長男は口数の少ない子ですが、3歳の時から、おじちゃんとおばあちゃんに育ててもらい、一番おじいちゃんのことを好きなのはこの子かな?と思ったからです。
「今日ね、4時に目が覚めて、襟飾りの色は紺じゃ~~っておじいちゃんが言ったのよ。だから急きょ、紺色を作って持ってきたの?襟の上に紫と紺をおいてみるから見てみてね」と湯灌の始まる前に
長男と打ち合わせをしたのでした。
やはり、襟もとの色は紺では顔がきつく映るから、紫で、羽織の色は紺に決まりました。
よかった、、、ひらめいて、、、
「ねえ、本当におじいちゃんがいったの?」とえりちゃんがいいました。
「うそよ、でも、朝一番にひらめいたのは事実」

いよいおお棺にご安置のときも、長男に頭元を持ってもらい、あっ君には胴を持ってもらいました。
長男はどこまでいっても長男で、今後もおばあちゃん、お母さんをひっぱっていかなきゃいけないのよ、そういった思いを込めてそうしました。

夜7時からの通夜式にあわせてホールに行くと、担当の人が「おじいちゃん、とっても綺麗な顔ですね!飾りもすごくいいです」と私の仕事を認めてくれた感じでした。
「うちの湯灌はどうでしたか?」と聞かれ
「はい、とても丁寧な施行で感動しました。私にもきずかっていただき、本来ならお仕事のペースがくずれたり、やりにくかったと思うのですが、嫌な顔もせされないで、感謝しています。よろしく言っておいてください。」と言いました。

えりちゃんの長年のお友達もかけつけ、「おじいちゃんの顔色がすごく綺麗だけど、亡くなった人は
普通、もっと真っ白な顔をしているんだけど、血色のいい、生きているような顔のいろだけど、愛ちゃんの化粧のおかげ?」
「うん、血色がよくみえるように、ファンデーションの色を濃い色にしてるからかな」

えりちゃんが岐阜に行ってから友達になった仕事仲間もかけ付けて、えりちゃんはおじいちゃんの顔をみてもらって、私の事を「納棺師のあいちゃんにやってもらったの」私を紹介してくれます。
「おじいちゃん、好い男になたね~~」と口々に言ってくれました。

今回、身内のように私に色々を任せてくれて控え室でえりちゃんが泣いて私に「ありがとう」といってくれました。「私一人でどうしようって思っていたとき、愛ちゃんがいてくれてよかった。ほんとに感謝しているの」
「私はね、こんなに自由に私の思うままに仕事が出来て、ありがたいって感謝しているの。ありがとう」
私は納棺師としてもっと大きくなりたい、それにはやっぱり、営業に回って私の仕事を認めてくれるところをもっと捜していくべき、とさっそくパンフレットを作ってみました。