おはようございます!
今日もいい天気ですね!
私の仕事がパティシエ(講師)と知った、最近知り合った人から
「レストランで
『タルト タタン』
を食べたら凄く美味しかった!」
『タルト タタンはアップルパイとは違うの?』
と聞かれました。
私は普段、洋菓子業界の人やお菓子好きな人とばかり付き合っているせいもあり、この質問はコレまでされたことがありませんでした。
新しい環境に身を置くと新しい気付きがあり嬉しいです。
ソコでこのページでは
『タルト タタン』と
『アップルパイ』
のお話しをしてみようと思います。
大きな括りでは一緒ですが、やはり少し違うので
『タルト タタン』
をベースにお話ししてみます。
『タルト タタン』
【Tarte Tatin】
最近では”お菓子好きの人”からは知られるようになった
リンゴのお菓子です。
フランスの家庭でも作られます。
フランスはリンゴがイッパイです!フランス人はみんなメッチャリンゴをよく食べます。
タタンは女性姉妹の名前で、ホテルデザートの失敗から出来たのが
『タルト タタン』
【Tarte Tatin】
と言われていますが、詳しい発祥の話はフランス食文化の先生に聞いて下さい。
フランスではデザート菓子として
〈レストラン〉
〈ブラッスリー〉
〈カフェ〉
などで提供されていますがパティスリー(洋菓子店)ではあまり販売されている事はありません。
理由は後ほど
私が働いていたパリのパティスリーでも
『タルト タタン』は焼いていましたが、近くのカフェやブラッスリーから受けた注文分だけでした。
元々の
『タルト タタン』の作り方はフライパンに厚くバターを塗り砂糖を敷いた上に、半割もしくは1/4にカットしたリンゴをぎっしりと並べてガス台又はオーブンで焼いた後、パイ生地をかぶせ再びオーブンで焼き上げます。
冷めたらお皿にひっくり返してサービスします。
常温
サービスはそのままカットして出すか、無糖か少量加糖したホイップクリームを添えるのが一般的です。
レストランなどによっては少し温め直したり、お客様のご要望があればアイスクリームを添える事もあります。
フライパンで焼くので出来上がった
『タルト タタン』を横から見ると
台形をしています。
現在のパティスリーではフライパンで焼くことは少なく、銅製で内側にスズメッキされている厚手の
「マンケ型」※
【Moule à manqué】
を使って焼くお店が多いと思います。
銅製は熱伝導率がメッチャ良いので、表面を綺麗に”ムラ”無く焼く(色付ける)ことが出来ます。
光沢のあるカラメル色
しかし銅製の型は高いので、ブリキやステンレスの型を使っているお店も多くあります。
※他にシリコン製、耐熱ガラス製などもあります。
数日分にリンゴ
だけ焼いて冷蔵庫に寝かせる場合は金属製の型だと金っ気が出て美味しくありません。
金属の腐食を防ぐためにもスズメッキされているか、内側がシリコン加工されているマンケ型が良いと思います。
レストランでは今でもフライパンで焼くお店が多くあります。
家庭では持ち手の取れるフライパンならオーブンにも入るので使いやすいと思います。
※マンケ型【Moule à manqué】
の【manqué】は
・「欠けた」とか、「失敗した」とか、「出来損ない」
みたいな意味です。(Mouleは型)
この名前の由来は
昔フランスのパティシエ見習いがケーキを作って型から外したところ、形が保てず裾が広がりそのお菓子は失敗したそうです。
しかしその広がった姿が、見た目にも仕込み的にも良いと敢えて台形の型を作り
『マンケ型【Moule à manqué】』と呼んだ、とフランス人達から聞きました。
多分製菓学校でも同じことを聞いた記憶があります。
『タルト タタン』の出来上がりはパイ生地が下になります。
パイがリンゴの水分を短時間で吸ってしまい、パティスリーのテイクアウトにはあまり向かないと思います。
販売しているお店もあります。
多くの仕込みをする場合、いったん大きなバットやプレートなどで沢山のリンゴをオーブンで焼き、冷めてからマンケ型に移し並べ、パイ生地を乗せて焼く方法。
また予め別に丸く焼いたパイ生地を乗せて仕上げる方法もあり、この場合準備だけしておけばサービスの直前に仕上げる事が出来ます。
仕上がりの表面はピカッと艶のあるカラメル色に焼き上げるのが理想だと思います。
お店によっては更に砂糖を振りかけ
〈焼きごて〉で
キャラメリゼ(砂糖を焦す)する事もあります。
材料は
〈リンゴ・バター・砂糖・パイ生地〉
が基本で、他に香り付けなどはしません。
※バニラシュガーを使う事もありますが基本リンゴ勝負です。
当然リンゴ選びは重要で、味・食感に大きく影響します。
特に品種や鮮度などの要因で、焼いている間に溶けてピューレ状になってしまうリンゴがありますので注意が必要です。
好みもありますが
「トロケル様な食感」や
少し
「シャキシャキ感」
が残っている食感など
リンゴによって違いがあります。
焼来上がり、カラメルのほろ苦さとバターの風味に負けずにバランスの良いメリハリが出やすいので、酸味が強いリンゴが良いとされています。
私がパリ働いていたパティスリー(洋菓子店)では、薄い緑色のリンゴを使っていました。
甘味がしっかりしていて酸味もあるリンゴですが、熟し過ぎて(生で食べるなら美味しい状態です)黄色くなったものをタタンに使うと、焼いている途中でピューレ状になってしまいます。
溶けた…
少し若い方が酸味が残り食感もありつつ滑らかな印象で、美味しいタルト タタンになったと記憶しています。
このリンゴはフランスではメッチャどこにでも売られていて一番多く栽培されているリンゴです。
みんな
「ゴールデン」と呼んでいましたが
「ゴールデンデリシャス」のことです。
※ただ青森県などで栽培されている
「ゴールデンデリシャス」
の方がフランスに比べてジューシーで大きめだと思います。
アップルパイの系列のお菓子で
『ショーソン・オ・ポンム』
【Chausson aux pommes】
というパイ菓子があります。
フランスでは大変ポピュラーなお菓子で、ほとんど全てのパティスリーで作られています。
パイ生地で包むリンゴはコンポートと呼ばれ、加熱してピューレ状にしたものでやはりシナモンなどの香辛料は使いません。
『ショーソン・オ・ポンム』はどのパティスリーも販売数が大変多いので、コンポートの使用量も大量です。
多くのパティスリーで業務用に売られている大きな缶詰のコンポートを使っています。
自家製でコンポートを仕込んでいるお店もたまにありますが、やはりシナモンなどは入れずに作ります。
カルヴァドス(リンゴのブランデー)などで風味を付けたりする事はあります。
【Chausson aux pommes】
楕円形にのしたパイ生地を二つ折りにして合わせるように成形します。
木の葉模様が基本です。
【Chausson】は元々【スリッパ】の意味で、その形状がスリッパのつま先部分に似ている事からショーソン・オ・ポンムと呼ばれています。
シナモンが苦手な人はアップルパイも苦手だと思いますがフランスの
『タルト タタン』や
『ショーソン・オ・ポンム』
ならシナモンは入っていませんので、チャンスがあったら試しに召し上がってみて下さい。
※日本のパティスリーだとたまにシナモンも使っている事があります。苦手な人はちょっと注意してください。
最後にザックリとした特徴を幾つか上げておきます。
アップルパイは生地で包んで焼く事もありますが
タタンは型で焼きます。
タタンはシナモンなど香料・香辛料を使わない
アップルパイは好みで香辛料を使う。
タタンはリンゴ以外の素材は入らない
アップルパイは好みでレーズンやクルミなども入る事がある。
※「シナモン」のお話しをしたページ⇐よかったら
アップルパイのことも、このページの中でお話ししようと思っていましたが、長くなったのでココまでにします。
※参考までに
良かったら
のページを見て頂くとアップルぱいのお話しもしています。
それでは皆さん
愛ある一日を!
~追記~2024.3
リンゴのコンポートを作って
フランスでは定番のタルトポンムにしました。
やってることは意外とプロの仕事ですが、頑張れば家庭でも出来ると思います。
生地からは大変だと思いますので冷凍生地を活用してみて下さい。