心が軽い。

 

父が認知症病院に入所してから、5ヶ月経った。もうなのか、まだなのか分からない。窮地に追い込まれる思いをしていないと実感できたのが今。これから私が克服したいのは、人間不信、恨み、怒り、やるせなさ、劣等感、不安、恐怖、脅迫感、金銭不安、悪夢。

 

50歳からやっと新しい人生が始まる。長かった。

何一つ、対処が間違えていたらここに至っていない。辛い家庭環境だったが、そのことで誰かの命を落とすことは防げた。

そこに達成感を感じる。

 

そしてここで、特別養護老人ホームに移れることになった。

今は金銭的にも国から援助してもらえて、生活の全てを病院、施設の方にお任せ出来ている。

 

私が背負ってきたことを、多くの人が一緒に背負ってくれている感覚。

ここに、「誰もに助けてもらえない」人間不信を芽生えさせた心に違う感覚を感じる。

 

世の中は嫌なことばかりではない。耐えるばかりではない。解放される時もくる。

 

子供は助けてもらう方法を知らない。というより、置かれている世界の中で、どうやって解決しようかと健気に考える。

「親を心配させると、もっと悪いことが起きる。私がどうにかしなくちゃ」と思い悩む。そう思い悩んでいることさえ、気が付かれないようにしようとする。

 

今は大人の発達障害やうつ病、アルコール依存症など病気の情報やサポートしてくれるところが昔より随分整ってきている。

私が子供の頃はこんなではなかった。

 

母がうつ病のような感じだったので、小学生の時、本屋さんでうつ病のことが書かれている本を立ち読みした。読んでもよく分からなかった。

それはそうだろう。確か、うつ病は心の病気といわれていた頃のこと。

 

中学生の頃、友達にうちに母がいないことが気が付かれ、「入院している」というと、「どこの病院?」と聞かれ、「○○病院」と答えると、その子の母親が看護師だったから知っていたのか、「それって、精神病院じゃん、なんでなんで・・・・・」とたくさんの友達がいる前で言われた。お母さんが入院してて大変だね。。くらいの言葉が返ってくると思っていたのが、母の為にも自分の為にも、母親が病気であることは人に言わない方がいいんだと認識した。

 

そんな認識する前の小学生の頃、母は自分のお腹に赤いマジックでぐるぐる落書きのようなことをしていた。不思議だった。その頃、父の友人の親切なおじさんが、私と弟をテーマパークに遊びに連れていってくれたことがあり、たわいもない話で母の話題になってしまい、そのおじさんに「不思議なんだよ、赤いマジックでね、ぐるぐる書いてて・・」と話してしまった。そのおじさんは「おじさんには話してもいいけど、他の人に話してはいけないよ」とやさしく言ってくれた。おじさんはその何年か後に、病気で亡くなってしまい、とても悲しかった。40年以上経っているけれどおじさんのことは忘れない。

 

私が50年で人より優れてできるようになったことは「心がやさしい人かどうがを見抜く力」だ。直観のようなもの。日常でも仕事場でも分かる。たいていあたっている。

 

日常は誰もが、気分、機嫌が悪いこともあるし、毎日ご機嫌というわけにもいかない。私も含めてみんなそうだと思う。そういう次元のものでないことの話。

 

この人ならという人には、くいつくように訴えて、思いがけないことが起こったり、窮地をしのいできた。だから、「仕事が出来る人を見抜く力」も育ったと思う。普通ではないこと過ぎて、普通では片付けられないことだらけだったから。

 

そう、自分一人ですべて背負ってきたわけでないこと、無数の人の手助けもあってここまできて、一人一人、お顔を思い出せるくらい感謝している。

 

これから、物心ついた頃からの順に記憶をたどって書いてみようと思う。

 

世の中には私よりもっと過酷な試練をたどっている人、今現在、その渦中にいる人もいる。過酷な試練に大きいも小さいもないし、そういう言い方もしっくりこないのだけど。そこに、幸せ、不幸せをあてはめることも違うと思うし。

 

でも、多くの人が置かれている環境を広く平均的にしたら、「子供が安心できない、家族の誰かの命が危ない、切羽つまった状態が50年近く強いられる」のは普通でないと思う。

 

そんな過酷な試練を受けた人が、部分的にも共感して差し上げることが出来たら、ほんの1㎜でも心の傷が癒えたり、前を向く力になったらと思うのです。これは実体験した私だから出来ることだなって。

 

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