短頭種に多い腫瘍 髄膜腫など頭蓋内腫瘍 | パティ動物病院

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久々に腫瘍について説明していきます。

 

今回は短頭種に多い腫瘍として

頭蓋内腫瘍を取り上げます。いわゆる脳腫瘍ですね。

 

犬における頭蓋内腫瘍の発生は

腫瘍全体の2~5%程度とされており

イングリッシュブルドッグやフレンチブルドッグ、ボクサーなどの

短頭種でとくに多いとされています。

日本では飼育頭数から特にフレンチブルドッグで多いようです。

 

通常高齢での発生が多く

高齢のフレンチブルドックでの脳神経症状は

頭蓋内腫瘍を強く疑います。

 

犬の頭蓋内腫瘍では

髄膜腫、神経膠腫、脈絡叢の腫瘍がみられ

髄膜腫が最も多いといわれています。

他の部位の腫瘍からの転移のこともあります。

場所が場所なので生検で確定診断できないこともあります。

ただ、どんな腫瘍であれ頭蓋骨内という限られたスペースで

大きくなる頭蓋内腫瘍は脳を著しく圧迫するするため

最終的には死に至らしめます。そういう意味では悪性です。

腫瘍の種類はMRIやCTの写り方や

発生部位によって推測されることもあります。

種類によって放射線治療などの

治療の反応性が変わるとされています。

 

症状は発生部位によって

脳のどの部分に影響を及ぼすかでことなります。

痙攣発作が中心なこともあれば、

斜頸や運動失調が主な症状なこともあります。

部位によっては失明することもあります。

脳圧の上昇などで痛みを生じたり

意識レベルが低下することや、

脳への影響から性格が変わるといった症状が

見られることもあります。

痛みの症状は犬ではまれとされていますが

正確に評価できていないと思われます。

 

診断は見られる症状が他疾患によるものでないと除外されたうえで

CT,MRIによって判断されます。

 

治療は部位によっては手術が適応されます。

手術が難しい部位は主に放射線治療がされます。

抗がん剤は一部有用と思われるものもあります。

 

手術以外での完治は非常に困難で、

進行を遅らせ、対症療法で生活の質が落ちないように努めます。

 

外科治療や放射線治療は全身麻酔が前提であり

その都度CTやMRI撮影も必要となるため

高額になります。

抗がん剤も腫瘍の種類にもよりますが、基本的に効果は限定的です。

外科手術と放射線治療や抗がん剤投与を併用できる場合は

数年生存できる可能性が高くなります。

 

頭蓋内腫瘍は治療が難しいですが、

対症療法せずに放っておくと著しく生活の質を損ないます。

予後は基本的に悪いです。

 

よって脳神経症状が見られた際に

頭蓋内腫瘍かそうでないかは高齢の犬にとって

余命が大きく変わる可能性があります。

治療も脳圧を下げる治療や

圧迫による脳の浮腫を抑える必要があるかどうか変わってきます。

そこのところをはっきりさせるためにも

頭蓋内腫瘍が疑われる場合は速やかに

CT,MRIの撮影を行うことが望ましいです。

 

頭蓋内で発生する腫瘍に関しては残念ながら

現時点で予防できるようなものではなさそうです。