猫の腎臓病 治療 | パティ動物病院

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パティ動物病院のオフィシャルブログです。
院長の見津が、病院の情報や飼い主の皆さんに役立つ情報やつぶやきを発信します。

最近はめっきり寒くなってきましたゲホゲホ

人間も動物も体調を崩しやすくなるので

気をつけましょう。

 

今回は腎臓の治療について話します。

腎臓の治療には

急性腎障害時の治療と

慢性腎臓病の治療とあり、

今回は慢性腎臓病についての

治療について解説します。

 

今までの回でお話ししているように

・腎臓病は悪くなる一方

・猫の場合尿が薄くなり脱水をおこす

という特徴があり、

ひどくなってくると

・体の電解質バランスが崩れる

・貧血になる

といったことが起きてきます。

最終的には腎機能不全に陥り

死に至ります。

 

慢性腎臓病の治療は、

「できるだけ腎臓病の

進行スピードを遅らせて、

生活の質を極力維持して

余生を過ごしてもらう」といった

感じでイメージしてください。

 

けっして完治を目指すものではありません。

※例外的に腎移植は腎機能改善を

期待できることがありますが

ハードルは高いです。

 

猫の腎臓病の治療では

以下の治療を主に行います。

・血圧降圧剤

・尿細管血管保護

・腎臓病用療法食 

・脱水対策

・貧血対策

・電解質異常対策

            など

 

・血圧降圧剤

腎臓の機能が落ちてくると

身体は腎臓に余計働かせるために

血圧を上げます。

(必要な仕事量をこなさせるため)

そうすると疲れた腎臓に鞭を打って

働かせるので腎臓が早く限界が来ます。

 

それだけでなく高血圧で

網膜剥離など起こすこともあります。

腎臓を長く持たせるために、

多少仕事がこなしきれなくても生活の質が

落ちない程度に過度の負担を

かけないようにする必要があります。

そこで血圧を下げる薬を使います。

 

しかし血圧を下げる治療は注意が必要です。

猫の腎臓病は脱水しやすいです。

脱水すると血流量が低下します。

この状態で血圧が低下すると

腎臓への血流が減って

逆に腎臓にダメージを出すことになります。

血圧を下げる薬は

脱水が起こらない対策をした上で

投与することが望ましいです。

 

・尿細管血管保護

猫の腎臓病では尿細管がダメになります。

尿細管にはたくさんの毛細血管が

絡みついて酸素を供給していますが、

この血管が減ってくる

と尿細管壊死が進行します。

猫用の薬でこの血管の血流を

改善し保護する薬が販売されています。

 

・腎臓病用療法食

各種メーカーから腎臓病用ご飯が出ています。

腎臓病の猫に適切な量に

蛋白質や電解質が調整され、

腎臓の炎症が軽減するような

オメガ脂肪酸配合などがなされています。

昔はあまり味が良くなかったですが、

最近ではかなり嗜好性が改善してきています。

 

…といってもグルメなネコさんたちです。

食べない子もいます。

腎臓食にこだわってご飯食べないくらいなら

一般食でも食べてくれた方が身体全体では

良いってこともあります。

 

あと、そもそも食欲がない場合は

食欲増進材や消化管運動促進薬、

胃薬を使うことがあります。

 

・脱水対策

猫の腎臓病では一番大切かも?

尿としてどんどん水分が体外に出ていくので

水分補給が必要です。

飲水量を増やす工夫や

ウェットフードを使います。

必要に応じて皮下補液

(皮下に点滴薬を注入)したりします。

 

・貧血対策

貧血の程度に応じて

造血を促すホルモンを注射します。

週1~数カ月に1回のペースで注射します。

造血を促すために鉄剤を飲ませてもらいます。

 

・電解質異常対策

猫は腎臓病で尿量が増えて

K(カリウム)が排泄されすぎて

不足することがあります。

その場合はカリウムを経口で補給します。

 

腎臓病の猫でIP(リン)が異常値だと

予後が悪いという報告があります。

食べ物から入ってくるリンを減らすために

吸着剤を使ったり、

血中のIPのバランスを取れるように

ビタミンDを内服します。

(Caが上がりやすくなるので

注意が必要ですが吸着剤に比べると

IPのコントロールは楽な印象です)

 

人間だと血液透析なんかもありますが、

動物では使える施設は限られます。

 

正直、腎臓病の治療は年単位になることが多く

検査も定期的に行う必要があります。

投薬の負担は人にもネコにもあります。

全部やれるに越したことはないですが、

治療の選択肢で優先順位をつけて

続けられる治療法を継続するのが

大切なように思います。