前回フィラリアの予防の必要性について話しました。
- 命に関わる感染症である。
- フィラリア症の治療が大変である。
- 安全かつ有効な予防法がある。
今回はなぜ「昨年予防していたのに
今年予防を始める前に感染してないかの
検査が必要」なのか説明していきます。
フィラリア予防薬の種類についても触れたいと思います。
これは、当院で処方するフィラリア予防薬の
添付書の一部です。
どういうことかというと、
犬糸状虫が感染し、
成虫まで成長しており
ミクロフィラリアを生んでいるとします。
予防薬といっても、
ミクロフィラリアを殺す効果があるので
感染していると知らずに
予防薬を使用した場合、
大量のミクロフィラリアが一斉に死んで
ショックを起こすことがあるのです。
つまり安全に使用するためには
ミクロフィラリアがいないことを
確認してから使用するようにと
書いてあるわけです。
「毎年予防シーズンは
きっちり飲ませているから
大丈夫じゃないの?
」
と思われる方もいるでしょう。
しかし、
実は一回飲ませ忘れていただとか、
飼い主が見ていないところで
薬を吐き出していただとか、
大量の蚊に刺される機会があっただとか、
思わぬ落とし穴があるとも言い切れません。![]()
フィラリアの検査はごく少量の
血液ででき負担も少なく短時間で
行えます。
しっかり確認してから予防を開始しましょう。
※ただしフィラリアの検査には落とし穴があります。![]()
というより検査というもの全般的に落とし穴があります。![]()
別の機会にお話しできればと思っています。
☆フィラリアの予防シーズン
開始:蚊の活動開始時期から30日以内
終了:蚊が見られなくなって30日後まで
地域によりますが、
1カ月に1回の予防薬では
1シーズン7、8回の投与になります。
フィラリア予防薬の種類についても
話していきましょう。
フィラリアの予防薬は
マクロライド系と言われる抗菌薬(抗生剤)に
含まれるものの中でアベルメクチン系、ミルべマイシン系
に属する薬剤です。いくつか紹介します。
アベルメクチン系
・イベルメクチン
犬糸状虫予防、消化管寄生虫や外部寄生虫の
駆除にも使われます。
高用量で使用したり、
コリーやオーストラリアン・シェパードといった
犬種で見られる、
薬の代謝に関係する
ABCB1(MDR1)という遺伝子に
変異のある個体では
神経症状が出ることがあります。
・セラメクチン
皮膚に塗布できるタイプのフィラリア予防薬で、
ヒゼンダニ(疥癬)やノミの駆除にも使われます。
イベルメクチン同様ABCB1に変異がある犬種は
注意が必要です。
ミルべマイシン系
・ミルベマイシンオキシム
主にフィラリア予防や犬糸状虫成虫駆除後に
ミクロフィラリア駆除に使われます。
ニキビダニや疥癬の治療に使われることもあります。
ABCB1に変異がある犬種では薬を安全に使用できる
用量の範囲が狭いので用法用量を厳密に守る
必要があります。
・モキシデクチン
経口薬は比較的ABCB1が変異した犬種でも
安全に使えると言われています。
1年間効果が持続する注射薬も
販売されています。
注射薬では稀に重篤な副作用が
報告されています。
今はフィラリア予防だけでなく
ノミやマダニの予防もできる
合剤タイプも作られています。
獣医師とよく相談して選び
忘れず予防しましょう。![]()
ちなみにABCB1遺伝子の変異で
影響を受ける薬はフィラリア予防薬に
限りません。
コリー、シェルティー、
オーストラリアン・シェパードといった犬種では
遺伝子の検査も検討してもいいかもしれません。
次回はペット博の報告か
フィラリア予防の続きを更新予定です。
