「短歌の経験はあるのですか」
「いいえ。高校時代に石川啄木が好だったのと、後は俵万智さんの「サラダ記念日」を読んだ事があるくらいです。書いた事もないのにやっぱり無理でしょうか?」
「そんなことはありませんよ。感じた事を31文字で書くだけだから。日本語のわかる人なら誰でも書けますよ」
ニッコリ笑いながら言われるとなんとなく自分でも書けそうな気がするから不思議だと麻美は思った。
「此処のやり方は毎回皆さんに一首づつ持ってきていただいて、それを無記名で一枚の用紙にコーピーして、そこからそれぞれが好きな歌を一首選んでいただきます。それを選んだ理由を皆さんに発表してもらいます。技術的に上の人の歌の点数が良いとは限らないのが面白いところなんですよ。最後に私が作者のお名前を発表しながら一首ずつ講評、添削させていただいています。添削といっても文法の間違いとか言葉の使い方が違うかなって思うところを直させてもらうくらいです。今週出していただいたのを次回コピーしてきますので近藤さんの作品はその次からになりますがいいですか」
「はい」
「次回は他の方の作品で楽しんでください」
「よろしくお願いします」
「もしよかったら下で会員の皆さんに紹介しますが」
「ありがとうございます。でも今日はこれで失礼させていただきます。これからちょっと人と会う約束になっていますので」
「それは、お引止めして申し訳なかったかな」
「いいえ、まだ時間は大丈夫ですから。こちらこそお忙しい所ありがとうございました」
 木野は麻美がソファーから立とうとするとすばやく立ち「じゃあ」と麻美を見送った。