そう、いつも口癖のように君が一番という彼の言葉はわたしの頭を素通りしていたのかも知れない。
 そう決める事がどんなに大変だったのかなんて思いもせずに(また言ってる)って軽く考えていた。
 失くしてみて初めて気が付く。
 それが如何に大切なものかって。気が付いた時は大抵もう手遅れなのだ。

 五年前あなたは突然いなくなった。
 あなたがあんな形で消えてしまうなんて思っていなくて、二人で過ごした最後の時間、わたしはいつものように海の見える喫茶店でソーダ水を飲みながら、原稿を書いているあなたの手元をボンヤリ見ていた。
 11月最後の日にしては暖かかったけど、昨日と変わらない平凡な夕暮れ時。
 明日も明後日もこんな時間が来る事を疑いもしないで。