「えっつ?」
 沙織の言葉に引っ掛かったのだ。
「そんなこと言ってなかったって?どういうことなの。いったいどんな話になっていたって言うの?」
「それは・・・別に深い意味は無くって、ただ大松さんが来る前にお喋りしていた時、そんなことは一言もなかったという事、そうだよね水野さん。もちろん二人が揃った所で初めて言ったんですよ、当然じゃないですか!」
 慌てたような課長の言葉に沙織は黙って俯いた。しかし、それは納得できたという表情からは遠いものだった。

「このことは僕の考えだけではなくて上と相談して決めた事ですから、会社の方針ですから従ってもらいます。他の部の人たちにもキチンと部長から話してもらって、協力してもらうように伝えてもらいますから」
「判りました。じゃあもういいですか?」
「??」
「お話はこれだけなんですよね。そろそろ忙しくなるので仕事に戻りたいのですが」
 私の言葉に課長も沙織も一瞬あっけにとられた様子だったが「もちろんです!では今日から早速頑張ってください。僕も書類の整理を済ませたら応援に行きますので・・・」
 私は黙って頭を下げて事務所に戻った。沙織も慌てて後を追っかけてきた。
 机に戻ると経理の女性が電話を取り一生懸命マニュアルを見ながら商品説明をしていた。
 目でお礼を言って机に座った途端も着信のランプが立て続けに二本点灯した。