最後に私のところへ挨拶に来た由美は「もしよかったら一緒に飲みに行きませんか?」と小声で囁いた。
 もちろんオッケー、私は黙って頷くと、「お世話になりました」という由美の挨拶に「あなたが居なくなると淋しいけど、お母さまの介護頑張ってね」と大きな声で答えた。
 沙織も側によって来て「本当に由美さんが辞められるなんてまだ信じられないくらいです」と涙声で話しかけてきた。
 由美は「新しい人が明日から来られるみたいだから、沙織さんも色々教えてあげてね」と沙織の肩をたたくとじゃあねと出て行った。一度も振り向かずに。
 五時きっかりに仕事を終わり着替えを済ませ外に出ると待っていたように携帯がなり、会社の人に会いたくないから私の降りる駅の側にある居酒屋で待っているからと言う。
 
 「急に辞めるって言い出して、三日後から有給とって休んでしまうなんて、ビックリしたわ。でも最初辞めるって聞いたときはひょっとして寿退社かなって思った」
 生ビールのジョッキで軽く乾杯をし、次々に運ばれてくる料理を二人とも黙々と食べた。由美もどうして誘ったのか何も言わず、私も辞める本当の理由を聞かず、ひたすら食べ続けた。
 由美がジョッキのお代わりを注文し、「大松さんは?」と聞いた。
 「まだいいは」と答えたのをきっかけにジョッキをテーブルに置き由美の顔を見て問いかけた。