「僕だって思っていることを言ったのだから君だって怒ればいいじゃないか!それともこんなことを言われるのは自分が悪いからだってまた謝るつもりなのか?」
「私も、私も悪かったとは思うけど、そうなったのはお母さまや貴方たちにも原因があったと思ってる」
 美沙はもう泣いてはいなかった。
 夫の正面に座り珈琲を飲みながら静かに話し始めた。
「赤ちゃんが駄目になったあと、あなたたちはすごく気を使ってくれた。でもその遠慮が私はこの家族の一員になっていないのだとよけい孤独にさせたの。多分あの頃は精神的にも大分参っていて、みんなの優しさなんかを受け入れられなくなっていたのね。あの時あなたにもっと甘えていればよかった!ごめんなさいって言いながら、本当はもっと強く抱きしめて支えて欲しかった。怒って欲しかった。腫れ物に触るような態度が私をドンドン追い込んでいったの。お互いもっと心を割って話せたらお父さんやお母さんのこと、もっと好きになったと思う」
「あの時君が何を言ってもドンと受け止めてやれたらよかったけど、若かった僕にそれだけの器量は無かったから、君と一緒におろおろしてるだけだったなんて思いだすだけで腹立たしいよ。お袋や親父も正直君をどう扱えばいいのか見当が付かなかったのだと思う」
「そうね、私もあなたたちもお互い相手を思いやっている積りが、結局相手のこと何も理解できなかったのね」
「そうみたいだな」
 美沙と悟は顔を見合わせて小さく笑いあった。