四十年以上胸のうちに押し込めていた不実を言葉にすることで、涙を流すことで体の中にあった大きな塊が少しずつ溶けていくような気がした。
「高校を卒業して銀行に就職して、そしてあなたと出会って今までの自分から逃げ出すような気持ちで結婚したのかもしれない。お母さんがおばあちゃんの介護と姉の世話で凄く大変なことわかっていたのに、その家から逃げ出したかった。私の事だけをみつめていてくれる人、そんな家族が欲しかったの。あなたにとって、私にとって、お互いがかけがえの無い存在だと信じられたし、お父さまやお母さまもまるで娘のように優しくって、本当に幸せだった。そして、妊娠がわかって、お母さんになれるなんて夢のようだった。まだ十九だったけど不安なんて全然無くってばら色の未来が来ることを疑いも無く信じていた。だけど・・・お母さまに「できたものは仕方ない」と言われて冷や水を浴びせられた気がしたの。あなたはまだここの家族じゃないと言われた気がして」