「おはようございます」
「おはよう、今日もよろしくお願いしますね」
朝のお店は相変わらず戦争のような忙しさだった。
主人とおかみさんと美幸、それに嫁の由美が出来上がった惣菜を次から次へと容器に移しかえている。
美沙も時子も以前と同じ出勤時間に戻っていた。
息子は主人が復帰して暫くは厨房を手伝っていたが最近はあまり顔を見せなくなっていた。時子に言わせると「何処かで新商売のための下準備でもしてるんじゃないの」ということだが其のことに関しては主人夫婦も由美も何も言わなかった。
「時子さんも美沙ちゃんも一段落したら休憩してね。悪いけど家の人と一緒に三十分ばかり出てくるから」
お上さんはそう言うと割烹着をはずし主人と一緒に店を出て行った。
「何か随分急いでいるみたいね」
時子はパック詰めの手を動かしながら不思議そうに夫婦の後ろ姿を見送った。
「そうですよね、二人してこんな時間にお店を空けるなんてあまりないですよね。何かあったのかしら?」
美沙も慌しく出て行った様子が気になっていたのだった。
厨房の方から由美と美幸がお茶と饅頭をお盆に載せて出てきた。
「時子さんと美沙さんのも此処に置いておきますから区切りがついたら食べてくださいね」
そう言うとカウンターの隅にお盆を置き自分達もそこの丸椅子に腰掛けてお茶を飲み始めた。
「美沙ちゃん私たちも休もうか」
時子は仕事の手を止め美沙を促すと流しで手を洗いカウンターの椅子にヨイショと腰をかけた。
「嫌になっちゃうわね。最近は立つのも座るのも掛け声付きなんだから。あら美味しそうなお菓子!いただきますー」
「いただきます」
時子の横に座ると美沙も一緒にお茶を飲み始めた。