流産は不幸な事故だった。
あの夜眠られないまま口の渇きを覚えた美沙は台所へ降りていこうと思ったのだった。隣を見ると夫が気持ち良さそうに眠っていたので枕もとのスタンドをつけないままベッドを降りた。
その時ベッドの下に置いてあったスリッパを履こうとして足首を捻ってしまったのだった。足首がギクッとしたが痛みもそれ程でないと思いそのまま部屋を出て階段をおり始めた。
二、三段降りた時痛みが突然酷くなり慌てて手すりを握り締めたのだが支えきれずにそのまま下へ転げ落ちてしまった。
目を覚ましたのは病院のベッド、夫、舅、姑の心配そうな顔がボーっと霞んで見えた。
美沙が目を覚ましたのに気づくと夫は真っ赤に泣き腫らした目を嬉しそうに見開き美沙の手を握り締めた。
「よかった!」
ただそれだけを言うのがやっとのように新たな涙を流し、舅や姑はホッとしたように顔を見合わせ夫の肩を軽くたたいて黙って部屋を出て行った。
「大丈夫だから、何も考えないで、もう少し眠るといいよ」
「悟さん、私なにがあったの?どうしてこんな所にいるの?」
「…階段から滑り落ちて、大きな音に吃驚したお袋が気づいて救急車を呼んだんだ。三時間以上目を覚まさなかったから、みんな心配して、でももう大丈夫だから親父達には家に帰ってもらった。僕がずっと付いてるからゆっくり眠るといいよ」
お腹が痛い、確か怪我したのは足首だったのに、お腹と腰が酷く痛む。何故か涙が溢れた。
「わたし、大丈夫よね!赤ちゃんも大丈夫よね」
「……」
「赤ちゃん、大丈夫よね!」
「君が無事だった、それだけで感謝している。赤ちゃんは残念だけど、君の命を救ってくれたと思っている」
「そう…私赤ちゃん殺しちゃったのね」
「バカな事をいうな!事故だったんだ!美沙ちゃん頼むからそんなこと言わないで」
涙は出なかった。赤ちゃんはきっと生まれてきたくなかったんだと思った。こんな私がお母さんになるなんて出来るはずなかった。
(バチダ、バチガ アタッタンダ。ユウチャンノコトハズカシイナンテ オモッタカラ。ユウチャンイナケレバイイノニナンテ オモッタカモシレナイカラ)
頭が割れるように痛かった。
すがるような目で見つめる夫の顔がグルグル回り始め、美沙は頭痛のため意識が朦朧としてきた。
あの夜眠られないまま口の渇きを覚えた美沙は台所へ降りていこうと思ったのだった。隣を見ると夫が気持ち良さそうに眠っていたので枕もとのスタンドをつけないままベッドを降りた。
その時ベッドの下に置いてあったスリッパを履こうとして足首を捻ってしまったのだった。足首がギクッとしたが痛みもそれ程でないと思いそのまま部屋を出て階段をおり始めた。
二、三段降りた時痛みが突然酷くなり慌てて手すりを握り締めたのだが支えきれずにそのまま下へ転げ落ちてしまった。
目を覚ましたのは病院のベッド、夫、舅、姑の心配そうな顔がボーっと霞んで見えた。
美沙が目を覚ましたのに気づくと夫は真っ赤に泣き腫らした目を嬉しそうに見開き美沙の手を握り締めた。
「よかった!」
ただそれだけを言うのがやっとのように新たな涙を流し、舅や姑はホッとしたように顔を見合わせ夫の肩を軽くたたいて黙って部屋を出て行った。
「大丈夫だから、何も考えないで、もう少し眠るといいよ」
「悟さん、私なにがあったの?どうしてこんな所にいるの?」
「…階段から滑り落ちて、大きな音に吃驚したお袋が気づいて救急車を呼んだんだ。三時間以上目を覚まさなかったから、みんな心配して、でももう大丈夫だから親父達には家に帰ってもらった。僕がずっと付いてるからゆっくり眠るといいよ」
お腹が痛い、確か怪我したのは足首だったのに、お腹と腰が酷く痛む。何故か涙が溢れた。
「わたし、大丈夫よね!赤ちゃんも大丈夫よね」
「……」
「赤ちゃん、大丈夫よね!」
「君が無事だった、それだけで感謝している。赤ちゃんは残念だけど、君の命を救ってくれたと思っている」
「そう…私赤ちゃん殺しちゃったのね」
「バカな事をいうな!事故だったんだ!美沙ちゃん頼むからそんなこと言わないで」
涙は出なかった。赤ちゃんはきっと生まれてきたくなかったんだと思った。こんな私がお母さんになるなんて出来るはずなかった。
(バチダ、バチガ アタッタンダ。ユウチャンノコトハズカシイナンテ オモッタカラ。ユウチャンイナケレバイイノニナンテ オモッタカモシレナイカラ)
頭が割れるように痛かった。
すがるような目で見つめる夫の顔がグルグル回り始め、美沙は頭痛のため意識が朦朧としてきた。