日経新聞の読み方が止まっていました。
今日で3日目ですね。
そう
「どうして土曜日の日経朝刊が重要なのか?」
ということでした。
それは
経営や経営企画、
IR(インベスターリレーションズ:株主に対する広報活動)などに
携わったことがある社会人くらいしかわからないでしょう。
たまたま私がそれを全部やっていたので(やっているので)わかることです。
では、あなたがA上場企業の社長と仮定として、
A上場会社社長の気持ちになって考えてください。
上場している企業には、多くの決まりに束縛されています。
金融商品取引法(旧証券取引法)、各証券取引所の規則、
会計基準規則やそれらに付随するガイドライン・・・。
多くの上場企業が、毎年度、今年度の売上高や利益の予想を発表します。
その予想は、大体が企業内の経営企画というセクションでつくられるのですが
各会社によって精度が違う。また、経済状況(円高や円安、消費者物価指数など)によっても
変動してくる。ですから、売上高と利益の到達予測というものは大変難しい作業なのです。
ですから、はずれることもある。といっても大きくはずれるのではなく、
一度発表したときよりも、年度が進んでいくにつれて、予想数値が何%かずれてくることがわかる。
利益や売上が上向きにずれたときはいい。このときは上方修正といって
世の中発表する。
しかし、その反対の売上や利益が下向きにずれたときは、たいへんです。
「下方修正」を発表しなくてはならない。
そのときは、経営企画担当の役員は、取締役会で袋だだきになっています。(笑)
さあ、その「上方修正」「下方修正」とは発表しなければならないのでしょうか?
残念ながら、企業にとっていいことも悪いことも発表しなければならない。
各証券取引所の規則の中で決まっています。
「経常利益が予想値よりも20%変動する場合は、遅滞無く発表しなければならない」
などどと。
どうしてこんな規則が出来たかというと、つまりは投資家に平等に企業の情報を告知し
投資判断をしてもらうためです。
あなた、A上場企業の社長は、経営企画・IR担当役員から、
経常利益が発表した予想値よりも、円高の営業を受け、半減することを知らされる。
さあ、たいへんです。取引所の規則どおり遅滞無く発表しなければならない。
経常利益が半減すれば、経済紙の記者も取材に来るだろうし、
それよりも、株価が急落する。そして、IR担当部署には株主から苦情が殺到する。
それがまた、株主総会が近ければ大変です。直接、あなた、A上場企業社長が
株主から質問攻めにあって、株主総会も迷走しかねない。
・・・あああ、嫌なことばっかりですね。でも規則は守らなければならない。
嫌なことは最小限度に抑えたい。株価の急落も最小限度にしたい。
「その時、歴史が変わった」
という某国営放送の番組ではないですが、いつ発表するかです。
A社長、いつ発表しますか? A社長はあなたですよ。
A社長、いつ発表しますか?
アホな部下を持つと、持たないとでは、ここ差が出てくる。
アホ部下は、今すぐに!と進言する。
今、水曜日に午前11時。午後1時に取引所のシステムを通して、全世界発表される。
そうすると、午後の取引から、株価が急落し、
その週も金曜日まで続落の一途をたどる。
会社のIR担当部署には、株主からじゃんじゃかじゃんじゃか電話がかかってくる。
もちろん苦情電話。
経済紙からは、社長の取材を申し込まれ、断りたいけど、断ると何をかかれるかわからない。
・・・・・
となるのです。
アホでない部下をもつと、
今は、水曜日午前11時。
部下は
「数字に間違いがないか再計算をして、もっと詳細な数値を出す時間が必要です。
その作業には、2、3日必要です。ですから、発表は最終的に取締役会で承認を得て、
金曜日の午後4時に発表しましょう」
という。
金曜日の午後4時に下方修正を発表しました。
しかし、今週の株式市場は終わっているので、株価にすぐに影響はでません。
たまたま、お国のお決めになった、祝日を月曜日にずらす、ハッピーマンデーのため、
会社は土曜日から月曜日まで取り合わせは受け付けられません。
また、その下方修正の情報は、金曜日の午後4時に発表したので
日経新聞には、土曜日の朝刊に掲載される。
でも、土曜日の朝刊は比較的読まれる可能性が低い。
アンテナの敏感な株主でも、取引所が閉まっているので、売ろうにも売れない。
苦情電話もかけられない。
そうしているうちに、発表してから、金曜日の取引所がしまって後、土曜日、
日曜日、ハッピーマンデーの月曜日、
この3日と半日で、株主の怒りも多少なりとも収まってくる。
少なくとも、狼狽売りで、「何日続落」「底値見えず」なんて活字は躍らない。
A社長、あなたですよ。
どっちの部下がいいですか?
私は後者をとります。実際、後者をやってきました。
もう、ここまで来ればわかるでしょう。
悪い情報は、金曜日の取引所がしまった後、大体が午後3時以降に発表される。
だから、日経新聞としては、それから一番早い、土曜日の朝刊にその情報を掲載する。
社会人として、いい情報はよく耳にします。
けど、取引先の悪い情報なんて、取引先からわざわざ言い出すわけがありません。
そんなことすると、まかりまちがったら、インサイダー情報の漏洩にもなりかねません。
土曜日の日経朝刊には、企業の嫌な情報がつまっている。
それは、自分自身の勤めている会社にとって悪い情報であるかもしれないし、
競合会社の悪い情報で自分の会社にとってはいい情報かもしれない。
記事の取り方によって大きく違う。
しかし、少なくとも、「日経土曜朝刊」にいろんなドラマがあって、
重要であるかをわかっていただけたでしょうか。