疑似科学

 

電波妄想は疑似科学というのが持論なのですが、疑似科学という概念は科学哲学の学術領域になります。

 

科学哲学の大きなテーマとしては、科学なのか、それとも疑似科学なのかを区別するということがあります。科学と疑似科学の境界を決めるときに反証可能性という要因で判断することがあります。

 

 

 

 

疑似科学として教科書に掲載されている事例としては、創造論から派生した創造科学とか、インテリジェント・デザインになります。

 

創造論は、旧約聖書にあるように、神様が生物や人間を創造したというものです。生物学では、進化論が通説であり、創造論はそもそも科学でないとされます。

 

創造論そのものでなく、神とか創造主という宗教用語を使用することなく、知的な存在が生命の創造とか進化に関与したインテリジェント・デザインという学説があります。そうすると、インテリジェント・デザインは科学か疑似科学か議論されたりします。

 

科学哲学

 

さて、疑似科学に関する説明から昨日に開催されたオンラインセミナーにトピックを戻します。

 

昨日、2月27日、日曜日に、日本生理学会若手の会が「生命科学者のための科学哲学セミナ-」をオンライン開催したので、このセミナーをオンライン聴講いたしました。

 

このセミナーに参加した動機になるのですが、日本生理学会の会員になっているということだけでなく、科学哲学、特に疑似科学について関心があります。

 

オンラインセミナーでは3件の講演がありました。

 

最初の講演は、大阪大学教授の森田邦久先生の「科学に反証可能性はあるか?」というものでした。反証可能性というのは、前述したように、科学と疑似科学の境界を用いるときに用いられる概念です。

 

2番目の講演として、東海大学の松本俊吉先生は、「生命科学の哲学入門-観察の理論負荷性・観察者バイアス・理論の決定不全性」という演題でした。

 

観察の理論負荷性などは省略し、ここでは観察者バイアスについて紹介します。

 

観察者バイアス、実験者期待効果、確証バイアスは同義語ですが、観察者バイアスに関する有名な実験が紹介されていました。下記の論文ですね。

 

Robert Rosenthal, Kermit L. Fode, “the effect of experimenter bias on the performance of the albino rats”, Behavioral Science, vol. 8, no. 3, pp. 183-189, 1963

 

ネズミさんの行動を観察するとき、観察者が期待する効果を観察する傾向にあるとのこと。

 

最後に瀬戸口明久先生は、「客観性とは何かー観察と図像の歴史から」というテーマで講演しました。

 

2021年8月に名古屋大学出版会から「客観性」という書籍が刊行されたのですが、講演者はこの書籍の翻訳者であり、この講演は本書の概要を紹介しています。

 

 

「客観性」という書籍は、人間と自然との関係について膨大な学術領域を紹介しています。

 

個人的には「自然」とはどのような意味で使っているのかに関心があります。スピノザ哲学の汎神論では、神即自然というか、自然と神は同様とされていますが、スピノザ哲学における「自然」のことではないのかな。どうでしょうね。

 

要するに、人間と自然との関係性といっても、人間と神との関係性について述べているように思えます。

 

このような文脈では、実在論は、神が実在する、存在するという意味となり、反実在論は、人間が神を創ったということになります。

 

人間が神を創ったという点については、19世紀のドイツ人哲学者ルドビッグ・フォイエルバッハは、”the Essence of Christianity”で人間が神を創ったと立論しています。

 

「客観性」という書籍でも19世紀半ばに「客観性」という概念が生まれたとされているのですが、哲学者フォイエルバッハが活躍した時代になります。