今日、1月21日、金曜日に東京大学AIセンター連続シンポジウム第6回「AI時代の哲学を考える」がオンライン開催されたのですが、この講演を聴講いたしました。

 

この連続シンポジウムの開催趣旨を下記に引用いたします。

 

第3次AIブームにより人工知能の技術がより多くの人々の関心を集めるようになって以来、人工知能を取り巻く哲学についてさまざまな議論がされるようになりました。従来はコンピュータサイエンスや工学の文脈で議論されていた人工知能は、今やそれを成り立たせている思想的な背景および社会実装をした際に直面するさまざまな課題や整備を進めていくべき法制度を考える足がかりとしての哲学も議論の対象となっています。それはとりもなおさず、技術と人間社会の関係がどうあるべきかを改めて考えなければならない時代に私たちが差し掛かっていることを意味しています。

 

本イベントでは、人工知能と哲学の関係についての考察をしてきた識者をお招きし、それぞれの知見を共有しながら、AIの社会実装が進む時代における哲学について議論します。

 

今日のイベントでは、松原仁先生、塚田有那先生が司会を担当するとともに、4人が講演をいたしました。

 

最初に講演したのは、立教大学大学院人工知能科学研究科の村上祐子教授ですが、「哲学は人工知能とどのような関係にあるのか、あるべきか」というテーマで講義いたしました。

 

最初に自己紹介として、学生時代の研究テーマに言及していました。基本的にはこの講義のアウトラインは次の4つの主張になります。

 

主張1 哲学的課題への数学的・計算的手法によるアプローチ=人工知能

主張2:手法そのものの開発と課題への論理的回答は車の両輪

主張3:既存の哲学理論をそのまま適用しようとするのは時代錯誤

主張4:現在得られる計算的・科学的知見に照らして哲学理論構築すべき

 

次の講演者は、株式会社スクウェア・エニックスの三宅陽一郎氏になります。日頃はゲームの開発をしているのですが、「人工知能のための哲学塾」、「ゲームAI技術入門」などの著書があります。

 

 

 

 

 

 

今日のイベントでは、「人工知能の足場として哲学はいかに機能するか」というテーマで講義いたしました。

 

人工知能の研究をすることは、人間を探求することになるのですが、大学などのアカデミックと、エンターテインメントの現場では、人工知能を研究するアプローチが異なるという指摘をしています。

 

ジェームズ・ホーガンの著書、「未来の二つの顔」(1979)には、人工知能に人の痛みを教えるという逸話があるとのこと。

 

 

 

また、テセウスの船のパラドックスを紹介していました。

 

東京大学大学院総合文化研究科の鈴木貴之先生は、「人工知能の哲学2.0を目指して」というテーマで講義しました。鈴木先生のご専門は、心の哲学、哲学方法論、科学論。

 

哲学者ジョン・サールの「心・脳・科学」から中国語の部屋を紹介して、人工知能は意味を理解していないとのことですが、言語学の意味論に関連するトピックになります。

 

 

また、哲学者ダニエル・デネットの「コグニティブホイール」を引用しつつ、フレーム問題について言及しました。この講演では、関連性、重要性を判断し、無視すべきことを確実に無視することができるシステムを設計するのが肝要としている。

 

ちなみに、フレーム問題では、ロボットがハムレットのように思い悩み、行動できない状況に陥ります。

 

ところで、今日のイベント終了後、フレーム問題に関する文献について復習を始めたところ、いくらでも文献を入手することができ、文献を読んでも読んでも終わらない、という状況に陥りました。

 

いつの間にかロボットでなく、私自分がフレーム問題を体験しているので、早々に切り上げて、このようにブログ記事を執筆しています。

 

話題の一つとして、深層学習に関する理論的な疑問として、「なぜ過学習を回避できるのか」「なぜ深層になると、うまくいくのか」を指摘しました。

 

2000年に刊行された書籍「進化と人間行動」では、生物の知能は進化の歴史と認知的な資源による制約があり、限定的合理性bounded rationalityを達成しているとしています。

 

汎用AIの実現可能性に関連して、ダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」を紹介していました。

 

 

 

 

人間の知能は、汎用性は高いのだが、個々の課題の解決はそれほどでもない。一方、特化型AIは、汎用性は乏しいが、特定のタスクについては人間を凌駕する。

 

それでは、汎用AIは、汎用性が高く、かつ、あらゆるタスクに対応できるのだろうか。

 

最後に東京大学AIセンターの松原仁先生は、「人工知能になぜ哲学が必要か」という演題で講義いたしました。

 

松原仁先生は永年、公立はこだて未来大学教授でしたが、最近、東大に移りました。

 

1980年代に人工知能の2回目のブームがあったのですが、その当時、哲学者とAI研究者の勉強会がありました。産業図書の江面さんが勉強会のスポンサーになったのですが、日本認知科学会が契機となって勉強会が始まったとのこと。

 

長くなったので、このあたりで切り上げます。