今日、2021年10月30日(土)に第52回日本消化吸収学会総会と第1回トランスポーター研究会関西部会がオンライン共催された。

 

トランスポーター研究会年会は毎年、開催されているのだが、本年は開催が見送られ、その代わりに関西部会が開催されるとのこと。

 

今まで、日本消化吸収学会総会もトランスポーター研究会も出席したことはなかったのだが、運命の気紛れでオンライン出席した。

 

午前は、第52回日本消化吸収学会総会を聴講し、午後はトランスポーター研究会関西部会を聴講した。

 

第52回日本消化吸収学会総会では、京都府立医科大学消化器内科学教室、高木智久准教授が「クローン病診療の最前線」について講義なさった。具体的には、炎症性腸疾患の病態、クローン病の内科治療などについて講義なさった。

 

最初にクローン病の症状の例示として、回腸多発狭窄の説明をなさった。

 

クローン病の病態は炎症型、狭窄型、穿孔型に大別される。クローン病の臨床経過としては、最初は炎症型が多いのだが、次第に炎症型が減る一方、狭窄型、穿孔型が増える。

 

鉄の摂取が多いと、発症リスクであり、亜鉛の摂取が多いと、予防になる。

 

マウスを用いた実験であるが、亜鉛錯体を投与すると、腸管炎症が憎悪するという因果関係が見出されている。

 

ここで、亜鉛錯体では、キレート剤が亜鉛イオンに配位結合して、錯体を形成している。亜鉛錯体を摂取したときには、亜鉛イオンが生体内に摂取されず、亜鉛が欠乏することになる。

 

亜鉛イオンは、亜鉛トランスポーターを通過して細胞内に移動することができるのに対して、亜鉛錯体は、亜鉛トランスポーターを通過することができず、細胞内に移動することができない。

 

クローン病に関連して、腸内細菌叢に関する研究成果が紹介された。腸内細菌叢といっても、粘膜近傍の腸内細菌叢は、腸管の中央部、主要部の腸内細菌叢と異なる。

 

粘膜近傍の細菌叢が厚いと、健康であるのに対して、粘膜界隈の細菌叢が薄いと病態となっている。

 

具体的には、食物繊維が多い食事で、粘膜界隈の細菌叢が厚くなる。

 

クローン病では経腸栄養療法が用いられるが、具体的には脂質の摂取量が極端に低い食事が推奨される。

 

今日の講義後、アレコレ調べたのだが、どうやらエレンタール(登録商標)がクローン病の経腸栄養療法に用いられるようである。

 

経腸栄養剤に含まれるアミノ酸が、腸管炎症に対して、良いとのこと。

 

また、TNFα、腫瘍壊死因子tumor necrosis factorというサイトカインがクローン病に関連する。TNFαは、炎症性サイトカインであり、炎症、免疫などに関わる因子である。

 

抗TNF-α抗体製剤についても講義なさったが、その詳細は省略する。

 

クローン病、炎症性腸疾患については、医師に相談するようにお願い申し上げます。

 

トランスポーター研究会関西部会では、多くの講演があったのだが、

CFTR(Cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)の講演や、亜鉛トランスポーターの講演などを聴講した。

 

亜鉛トランスポーターでは、4つのアミノ酸残基が亜鉛イオンに正四面体構造で配位結合していた。

 

昔、大学院では錯体化学が専門であったので、イオントランスポーターという膜貫通タンパク質で金属イオンがアミノ酸残基に配位結合しているというのは、馴染み深い。