○○□□年×月△日
今日は、わしの92歳の誕生日じゃわい…
ひ孫の朱烈久も遊びに来てくれたぞい
若いころの婆さんに似て、可愛い女の子じゃぞ…
婆さんや… 元気でやってるかい…
―――――
○○◇◇年×月△日
今日は、わしの72歳の誕生日じゃ
今日という一日は、わしにとって
一生忘れられない悪夢のような日になった
婆さんは素敵な人じゃ
わしの誕生日ケーキにロウソクを歳の数だけ灯そうと
ロウソク72本、近所のデパートに買い出しに行った。
婆さんが家に帰ってきた。
だが、婆さんは40本のロウソクしか持っていなかった。
デパートをくまなく探したのだが、クリスマスでもない季節、そんなにロウソクは売っていないらしい。
わしは婆さんの気持ちがとても嬉しかった。ロウソクなんて1本でも良かったのじゃが、婆さんは決めたことを最後までやらなきゃ気が済まない人でのぅ、
隣街のデパートまで出かけて行ったのじゃ。
だが、事件は起こった―
わしが家の電話に出て、警察の声がしたときは嫌な予感がした。
国道の交差点で信号を無視し、左折してきおった 大型モーターボートにはねられたそうだ…
わしは納得いかなかった
なぜ被害者であるはずの婆さんが加害者にされるのか
婆さんはモーターボートに轢かれたはずが、相手のモーターボートごとぺしゃんこに潰してしまったようじゃ。
この前代未聞な事件は、公の市民には伏せることにした。
そして婆さんは死刑になった。
わしは必死に弁護したのじゃが、
小学4年生の裁判長は死刑という判決を曲げなかった。
わしは諦めた。はっきり言って面倒くさかった。
○○◇◇年×月☆日
婆さんの死刑執行日から 3日が経つ。
わしが途方にくれていると、テレビから奇妙なニュースが目に入った。
~臨時ニュースです。今日未明、死刑囚であったはずの♪♪容疑者(70)が監獄から消えました。
くれぐれも、監獄付近の市民は身の回りに注意して下さい。国の警察はたった今動き出した模様。~
婆さんが脱獄!?!?!?
3日前に死刑執行されたはずの婆さんが、生きて脱獄!?
わしは驚いたショックで心停止した。
わしは天国へフライアウェイしたのじゃ。
三途の川を渡る途中、声が聞こえた…
……や………爺さんや……帰ってきておくれ……あたしゃここにおりますから……
わしは声がする方向へひたすらに歩いた―――
目が覚めると― そこはわしの家じゃった。
周りには家族もいる。隣には婆さんがぐったり倒れていた。
息子の酒劣苦に事情を尋ねると、婆さんは家に帰ってきた瞬間倒れたらしい。
過労死だったようだ。
わしは思ったのじゃ…
婆さんがわしを現世に戻してくれたのじゃないかと…
婆さんの命と引き換えに…
わしは婆さんの手元を見て、驚いた。
なんと、右手に32本のロウソクを握っていた。
脱獄できたのに、そのあとも警察から逃れながら
必死でロウソクを集めてきたんじゃな…
わしの誕生日の72本のロウソクを集めるために…
わしの為に…
わしは涙が止まらなかった。
発すべき言葉もみつからなかった。
○○◇◇年×月Ω日
弔いの日
わしは、婆さんの遺体と そのロウソク72本を海へ放り投げた。
すると、海から神秘的な光が放たれた。
女神さまじゃ…
女神さまが現れた。よく顔をみると婆さんと似てる…
「あなたが落としたのは婆さんですか?それとも、婆さんですか?」
わしはわしと答えた。
わしは鷲になった。
鷲は和紙になった。
こうして世の中にリサイクルという方針が生まれたのであった。
○○□□年×月△日
今日は、わしの92歳の誕生日じゃわい…
ひ孫の朱烈久も遊びに来てくれたぞい
若いころの婆さんに似て、可愛い女の子じゃぞ…
婆さんや… 元気でやってるかい…
婆さんや…あれから20年も経つんじゃのぅ…
ロウソク92本…期待しておるよ…ぐふひひひひひひひひひひひひ…
-完-