5月21日(金)あなた達は伝えようとしただろうか?

 夏のように暑い一日。午前中ジムに向かう時、タンクトップの上に一応Gジャンを着て出かけたのだが、アパートのエントランスを出た途端に脱いでしまった。今日は講談社から出る京極夏彦さんの新作小説が、「iPad」向け電子書籍として発売することが決まったというニュースがあった。また、ソニーとグーグルが提携して、今秋にはアメリカでインターネットテレビが発売されるそうだ。これらに関し「報道ステーション」で、元新聞記者としての意見を求められた鳥越俊太郎氏は、「新聞にはインターネットの検索に無い知識を拾い読む面白さがある、それを若い人達にも知って欲しい」と語り、古舘伊知郎さんは「本には紙の持つ独自の暖かさがありますからね」というようなことを言っていた。やれやれ、である。

 僕は、鳥越さんも古舘さんもとても好きな人達だが、ひとこと言わせて貰いたい。新聞や本がネットやiPadに脅かされるのは何故なのか? それは面白さを失ったからではないか。そして新聞をつまらなくしたのは誰なのだ、活字文化を衰退させたのはいったいどの世代なんですか、と。宅配というシステムに寄りかかり、洗剤やら野球のチケットで釣ることばかりを考えて、新聞を中身の面白さで売ろうとしてこなかったのはいったい誰だ? 「再販制度が無くなると良書が駆逐される」と大ウソついて、本屋を潰してきたのは何処の誰なんでしょう? あなた達の世代ではないか。少なくとも若い世代ではないぞ。それをあなた達は「若者の活字離れ」と嘘に嘘を重ねて誤魔化し続けて来たのだ。「日本人は本を読まなくなった」なんて真っ赤な嘘だ。だったら何で、『1Q84』みたいな長い長い小説が累計で300万部も売れるんだ?

 僕は30年くらい前の事を思い出す。団塊の世代の連中は我々によくこう言ったものだ。「お前達はあの時代を何も知らない、70年安保の闘争とその挫折を知らない」「だからお前らはダメなんだ」と。しかし、そう誰かを非難する前に、あなた達は伝えようとしただろうか? 当時はまだ子供だった我々の世代に、まだ生まれていなかったもっと若い世代に、一度として真摯に教えようとしたことがあるのだろうか。

 団塊の世代に限って言えば、先に『1Q84』の例を出したが、村上春樹という作家が未だ、若い世代から圧倒的な支持を受けているのは何故だと思いますか? それは彼が誰よりも自らの世代を引き受け、若い人に伝えようとしているからだ。その方法論は決して直接的ではないけれど、『ノルウェイの森』や『羊をめぐる冒険』、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』を読めば、あの時代をリアルタイムに体験しなかった者達も判る。肌で感じることが出来る。つまり彼だけが、あなた達が大好きなあの嫌ったらしい表現を使えば、「自分の世代にオトシマエをつけている」のだ。

 安保の問題も沖縄の基地の問題も同じだ。大人達は一度でも、子供達に判りやすく伝えようとしたことがあるだろうか? 中学でも高校でも、歴史の授業ではほとんど現代史を教えない。何故なら教えても入試には出ないからだ。試験に出ないことは学ばなくても良い、試験に出る問題だけ勉強して、良い大学に入り、良い会社に入って出世することが大切と、インチキを言い続けて来たのは何処の誰なんだろう? その挙げ句「今の子供は歴史を知らない」「アメリカと戦争したことすら知らない」「活字を読まない」と言っている。歴史を殺し、活字を殺し、戦争を隠蔽してきたのは誰なのだ?

 でもまあ、もうそんなことはもうどうでも良いのかもしれない。これからの賢い子供達はインターネットで歴史を学ぶだろう、iPadで好きなだけ、面白い本を読むだろう。 

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 この人はホントいいこと言う。 優しい人なんだろうなー