私が子供の頃に聞いた話があります。子供の頃の事なので人の名前も土地の名前もわかりません。  ただうろ覚えの話ですが、なんでもこんな事でした。日本のある博士が数名の外国人と一緒に、ドイツを旅行していた時のこと、珍しい外国人と見て、多数の子供たちがサインをせがんできました。幸い博士だけが、胸に万年筆を持っていましたので真先にサインをし、その万年筆が次から次へと手渡っている中にバスの発車の時間になりました。博士は自分のペンの事を忘れ、そのまま出発しましたが、窓の外で何か子供の叫ぶ声が聞こえるので、ふと見ると、一人の子供が博士のペンを片手に高く持って、バスに追いつこうと必死にかけて来るのです。けれども、子供の足ではとても追いつけるはずもなく、みるみる引き離された子供は、とうとうあきらめたのか立ち止まってしまい、博士の方でも、まあ、万年筆の一本ぐらいとあきらめ、そのまま旅行を続けて、日本に帰国しましたが、それから数ヶ月たって、突然ドイツから一つの小包が送られて来ました。

 あけて見ると、ペシャンコに押しつぶされた博士の例の万年筆と一通の手紙が出て来ました。何気なく読みすすむうちに、博士の胸はしめつけられるような感動を覚えました。

 「日本の見知らぬ先生に一筆、先生の万年筆を手に、ボンヤリと家に帰ってきた私の子供は、それからというもの、毎日毎日先生の住所を探すのに夢中でした。新聞社をはじめ、少しでも関係のありそうなところへは残らず手紙を出して、先生のお所を聞きましたがわからず、とうとう数ヶ月が過ぎました。ところが、今から一週間ばかり前のこと、子供は、外から勢いよくかけこんで来ると、『お母さん、日本の博士のおところがわかったよ、わかったよ」と、こおどりしながら、さっそく先生のペンを小包にして、『お母さん、郵便局に行って来ます』と元気に大喜びで外に飛び出しましたが、それが子供の最後の姿でした。喜びで夢中になった子供は、横から走って来る自動車に気がつかなかったのです。子供はひかれて死にました。先生の万年筆も、子供の胸の下で、つぶれました。けれでもお送りします。私の最愛の子供のまごころと一緒に、こわれた先生の万年筆をお返しします。
どうぞ、ドイツの子供は不正直だと思わないで下さいまし」

手紙には、そう書いてあったのです。
皆さん、正しさを追い求めて生きるいのちの尊さを学びたいものですね。
では、今夜もどうやら時間が来たようです。静かにおやすみなさい。
  
 http://www.aritearu.com/7day/Spirit/New2006.htm こちらから勝手に転載しました   
 やさしさって何なのか・・・考えれば考えるほど分からないが、子供のまっすぐな気持ちにはとてつもなく大きな優しさが溢れてると思います。 
 しかしそれを大人になったらどこに忘れてきたものか・・・・・・・・・  ・・・・・・・・・・・・・・