カウンセリングはいつも、
先生の「さて、どうですか?」の言葉で始まる。
ここからは私の自由な時間。好きなことを喋ってくれたらいい。
それを促すように。

最初の頃は、これまでの生い立ち、
家族のこと、会社のこと、人間関係のこと…
心に衝撃を受けた出来事を中心に、それなりに話すことはあった。

でも一通り話し終えると、話のネタがなくなった。

最初に書いた通り、私は現在進行形で
具体的な問題を抱えているわけではなかった。

家族がいる、住む家がある、生活に困らないくらいの収入がある。
充分幸せなはずだ。

それなのに私は、常に不安で、苛立っていて、全てに悲観的だった。
何故幸せを実感出来ないんだろう。心から感謝出来ないんだろう。
これが当たり前だと思っていたら、いつか罰が当たる。
そういくら自分に言い聞かせても、心は沈んだまま。

以前、カウンセリングしてもらった他のカウンセラーには、
「それがあなたの求めてる幸せじゃないからでしょう?」と言われた。

私の周りには人がいない。誰にも必要とされていない。
その事実が常に気持ちを沈ませているのかもしれない。

新しい人間関係を築こうとあがいた時期もあった。
でもダメだった。
私のことを「ものすごく壁を感じる」と言った人もいた。
実際そうなのだろうと思う。

だからこの時点では、人と繋がることは諦めていて、
そこをどうにかしたいという気はなかった。
ただ、この憂鬱さから抜け出したかった。


どうすれば心に折り合いをつけられるのか。
その答えを知りたい。
それがカウンセリングに求めたことだった。