窓際のしかも一番後ろという最高の立地条件を手に入れるために、一生分の運を使い切ってしまったのでは無いかと心配する程の好物件だ。八ヶ岳の山頂は薄っすらと雪化粧が残っており、その背景の澄み切った空も青く透明である。先ほど配られた英語のテストが自分の中で困難を極めている中、現実逃避にはうってつけの景色である。今年の春に、よくある親の都合により、東京は練馬の大都会(少なくもともクラスの皆に言わせると)からこの街に越して来てから、感動の毎日だった。まだ寒過ぎた春に始まり、暑くなく過ごしやすい夏。秋風が落ち葉と共に空に抜けて行くのがわかる瞬間。そして、凄まじい豪雪。もう直ぐ、二度目の春がやって来る。
ふと、軽く室内に目をやると、開始20分しか経過していないのに半数以上がペンをおいて各々で睡眠やシャープペンシルの解体に勤しんでいる。シンシン、カツカツとダルマストーブが静かに鳴っている。テスト監督の翁像先生は…寝そうだ…。相変わらず自由だな…。
隣の平出は、消しゴムと分解したペンのパーツで戦艦を作り上げていた。
……うん。
嗚呼、この3学期期末テストが終わればいよいよ春休みだな、と考えながら再び視線を窓の外へ向ける。
まだ土地勘の無い街を眺め、この街にある建物の位置関係を、いい加減覚えなくてはならない。
あれ??と、眺めているうちに、見覚えの無い神社を見つけた。しかも、自宅近くだった。 今まで気づかなかったのか…?あんな所に神社なんてあっ
『あと5分だよー、クラス氏名確認して下さい。』
急に指示が出て驚いてしまった。いつの間にか、かなりの時間が経っていたらしい。
2年3組 日暮 涼 よし!
神社は後で行ってみるかと、名前を確認しながら自分の中で予定を確定させた。