追憶 | ぱすブロ

追憶


私があの街に移り住んだのは幼稚園を卒園する数ヵ月前だったでしょうか…

新しい環境に馴染むのが苦手だった私の手を取ってリードしてくれた1人の女の子…

そんな出来事を忘れ、中学3年になった私は、その女の子Bさんと再会しました。

「久しぶり」と声をかけてくれたBさんから幼少期の話を聞き思い出した私は直ぐにBさんと仲良くなりました。

周りから「お似合い。カップルみたい。付き合っちゃえば(笑)」等と囃し立てられ、正直、私もそう思っていたので、思い切って告白しました。

けれどBさんの返事はNOでした。

しかし関係がギクシャクする事はなく、今まで通り「仲の良い幼馴染み」として過ごし、卒業を迎え「また会おうね」と約束しました。

私は幼少期からの夢を叶えるべく、Bさんとは違う高校へ進学し、新たな学園生活を送っていました。

そんな1学期の終わりが見え始めたある日、Bさんから手紙が届きました。

そこには「久しぶりに会いたいからココに来て」と簡単な地図と住所が書いてありました。

夏休みに入ってまもなく、私は手紙に記されていた場所へ向かってみたところ、そこは病院でした。

状況が理解できなかった私は取り合えず受付でBさんの名前を言うと病室の部屋番号を伝えられ、その部屋に行きました。

するとBさんの名前が書かれたプレートが差してあり、一呼吸おいてからノックしました。

すると「どうぞ」と聞き覚えのある声で返事が聞こえたので中に入ると、ベッドに横になりながら、にっこり笑うBさんがいました。

Bさん曰く「体調不良で入院してる」との事で、中学時代と変わらない元気な様子で話してました。

1時間くらい話したトコで私が「そろそろ帰るよ」と立ち上がるとBさんが「近くに来て」と言いながら私の手を取り、強く引きました。

気が付くと私の目の前にBさんの顔があり、唇に初めての温もりを感じました。

どのくらいの時が経ったのでしょう…
暫くするとBさんが「バイバイ、またね」と囁き、私は我に帰り「バイバイ、またね」と病室をあとにしました。

そして翌日、Bさんはお星さまになりました。

その事を知ったのは2ヶ月ほど経ってから届いた1通の手紙でした。

それはBさんのご両親から届いた手紙で、Bさんが亡くなったあとに見つかったらしく、私に渡して欲しいとの事でした。

そこにはBさんの言葉で
「幼少の頃からずっと好きだった」事
「中学の時から病気を患っていた」事
「別れる時お互い辛くなるのが嫌だったから付き合わなかった」事
Bさんの想いが綴られていました。

今、思えば同じ筆箱だったのも、嫌がっていたメガネを「似合ってるよ」と私が言ったからかけるようになったのも、幼少期からずっと私の事を好きでいてくれたからだったのかもしれません。

そして最期に
「私は自分のやりたい事をやり通した。
だからA君もやりたい事をやり遂げて!」

「私の事は忘れて…
と言ってもA君の事だから、きっと忘れないよね。ありがとう。」

「けどA君はA君の人生を送って!
人生なんて一度きりなのだから…」

と書いてありました。


あれから21年…

Bさんの想いを尊重した私はやりたい仕事に就き、悔いのない人生を送っていました。

そんな時、今まで無かった…

この先ありはしないと思っていた出会いがあったとしたら…

もしも名前やアダ名、容姿や雰囲気がBさんに似てる人が自分の前に現れたら…


あなたならどうしますか…