夜に啼く鶯 -18ページ目

夜に啼く鶯

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駅前のドラッグストアの前を通りかかると奇妙な花柄のお揃いのシャツを着たコロンビア人老夫婦にスペイン語訛りの英語で〇〇ガーデンホテルはどこかわかるか?と聞かれる。う~ん、肝心の○○が聞き取れないな、ご婦人。

○○garden-hotel.OK? ○○-GARDEN-HOTEEEL! 強弱変えて繰り返すがそこはわかってんだよストレスアクセントかました日本語部分が聞き取れねえんだよ、わっかんねえかな、なんだよこの婆よく見りゃロン・ウッドにそっくりじゃねえか、おい!後ろの爺!浴衣の女目で追ってんじゃねえ!ツーウィ?ムツゥーウィ?笑顔で聞きなおす私にこのポンコツハポネスがと言わんばかりにキャリーバッグに挟まっていた旅のしおりをどどんと突きつけホテルの名をびしっと指さす。なんだよ最初からそうしろよ、ご婦人。

Mitsui Garden Hotel はいはいはいはい三井ガーデンホテルね、知らねえよ私も旅人だもの。甘すぎる香水の匂いが鼻を突く。旅のしおり大事ですね。

乗りかかった船だししょうがない。たまたま通りかかったたまたま若い女性に「すみません、地元の方ですか?」と声をかけると「そういうのいいですから」と手をひらひらと振られる。それはいけないお嬢さん。君がまだ二酸化炭素だった時、私はすでに蛋白質だったんですよ?若さは時に暴力的だ。

店先の掃除をしていたドラッグストアのスタッフに「血塗れの私が見えますか?(三井ガーデンホテルはどこですか?)」と尋ねるとこのビルの裏ですよと教えてくれたのでそのように教え地獄から離脱する。しかしこんなに単語が出てこないとは。高校生の時の方がよほどましだった気がする。

 

東大門の前ではいつも誰かが写真を撮っている。今はバーベキューから抜け出してきたような格好をした若い白人の男がランニングの途中の様な格好をした若い白人の女にカメラを向けている。両手を挙げてポーズをとる女に男が何か声を掛け、女はポーズを変える。

 

背後には千一体の観音が整然と並び、それを見上げながら人々は雑然と歩を進める。生乾きの洗濯物の饐えた匂いを放つ者がある。そこから布切れ一枚潜って一歩足を進めたこの板の間はいつも人がいなくて来るたびに縁台に腰を下ろし漏れる線香の匂いを嗅ぎながら庭を眺めこの後どうしようかと時間を過ごすが今日はさすがに暑すぎる。年に何度もある記録的な猛暑で汗は蒸発を忘れいつまでも身体から消えない。甘さを欠いた白檀の香りが鼻を抜け、固く凍りついていたものが動き始める。