初めて触れる言葉があった。
初めて聞く響きが、漂う懐かしくもある香りを震わせた。
躊躇し震える指先を伸ばし確かめる。
激しく求めていたものがそこにはあった。
言葉が光を帯びて零れた。
朱に塗られた短い橋を渡る。苔も石畳も濡れている。
前日の台風の雨が下を流れる小さな川を我先に下っていく。
滑りの悪い水車がギイィと音を立てる。
あの頃なら言えたのに。
古い歌を聴いていた。
せめて同じ歌を聴いていてくれたら。
掴んだ掌には何もない。
何してたのと聞けたのに。
ただ会いたいと言えたのに。
石燈籠の中を覗き込む。あの時二人で隠した赤い石は。