「涼子さん」


学校の昇降口で声をかけられて、振り返ると吉村君だった。

一度デートをした隣のクラスの子だ。


考え事をしていてぼうっとしていたので、あわてて顔を整えた。


「明日の午後、デートしない?」


「え」


吉村君は靴の先で地面をならしている。


「いいけど」


「あ、そう?じゃあ、夜メールするわ」


「うん」



一時に駅前で待ち合わせ。

メールをしたときに、どうしてまた誘ったの?と聞きたかったけれど、

自分に都合のいい言葉を聞き出そうとしているみたいで恥ずかしかったから聞かなかった。



県立の博物館に行って、地球環境のことや古代の生き物の展示を見た。

砂漠化の原因についてかいてあるパネルを、

吉村君はじっとよんでいた。

並んで歩くと何度か手の甲があたったけれど、

吉村君は一度も手をつながなかった。


「吉村君」


「なに?」


夕方の空気はその日久し振りに澄んでいて、きもちよかった。


「吉村君って、髪染めてないんだね」


横顔を覗くと、口にこぶしを当ててぷっと笑った。


「デート、二回目なんですけど。しかも、帰り道」


「ごめん」


人気のある人だっていう印象だったから、てっきり髪を染めているような気がしていた。

そういえば、昨日学校ではいていた靴もつぶしたりせず、きれいだった。


「いいよ。この前だって、一回限りのつもりだったんだろ?」


私はなにも答えずに、にっこり笑ってごまかそうとした。

吉村君に怒っている様子はなくて、ちょっとからかっているような、

おもしろがっているような感じだった。


「いいと思うよ。そういうとこも」


どういうのなのか、よくわからなかったけれど、

そういって笑われると、なんだかうれしくていいことのような気がした。