いつもそうしていたように、空の見える窓辺に花をかざり、
俺は、窓枠に頬杖をして、
小さな鳥がゆっくり素早く旋回するのをながめた。
鳥がいつもとちがう様子で飛ぶとき、大きな地震が起きるらしい。
いっそもろとも倒れてしまいたいような気持ちで空を見たが、
今日も鳥は規則正しく美しい八の字を描いていた。
この部屋で、美月が死んだのはちょうど九日前の朝だった。
静かに眠る美月に添い寝した俺が目を冷ましたとき、
美月はもう、とても冷たくなっていた。
「美月」
わかっていて名前を呼んだ。
やわらかで白くきれいな頬に、自分の頬を寄せた。
美月はとても冷たくて、頬と頬の間を熱い涙が伝っていった。
身を任せるようにして、初七日が過ぎた。
そのあとはそれぞれがそれぞれの生活に戻り、俺は身を任せるものをなくしてしまった。
自分の生活。
いつもそうしていたように、空の見える窓辺に花をかざり、
俺は窓枠に頬杖をして小さな鳥が、
ゆっくり素早く旋回するのをながめた。
水を飲もうと窓からベッドのほうに向き直ると、
優月がカメラを持って立っていた。
俺と美月が、コンクールで賞を取った優月にお祝いとして贈った一眼レフだ。
美月は真っ直ぐこちらを見て、そうちゃん、と言って、それから、
「もう、姉ちゃんは死んだよ」
と言った。
「知ってる。俺がお前におしえたんだから」
俺は笑って答えた。
「地震なんか、こないよ」
「なんだよ、それ」
「鳥が、いつもとちがう飛び方をしたら、」
「やめろよ」
優月がしゃべるのを遮って言った。
「そうちゃん。姉ちゃんは死んだよ」
俺は下を向いて、床にみつめた。
涙が目から鼻筋を通って、もうじき鼻先から落ちそうだ。
「地震は来ないし、そうちゃんは死んでない」
俺は黙って聞いた。優月の声は揺れていた。
「花なんか、もう誰もみない」
言い切って、優月はわぁっと泣いた。
それから、優月は花瓶の花をつかむと俺に押し付け、
そのまま擦り切れるような手の力で俺を部屋から追い出した。