まやこがテーブルに置かれた小さな鏡の中を見ながら、
まつ毛に美容液を塗っている。
そんなのを塗ることがどうしてそんなに大事なのかわからないが、
何度言っても聞かないので、そうとう重要なことなのだろう。
「まや、まだ?」
タオル地のパジャマに包まれたまやこが小さくてかわいくて、
すぐに触りたい。
「んー。もうちょっとね」
こちらのことなどかまっていられない、という感じでまやこが言う。
「ねえ、早く来てよ。そんなのいいって」
「ちょっと、大事なんだってば。言ってるじゃん」
ちょっと言うとすぐに怒るので、それに対しておれはいつも怒っている。
だが、どちらかが引かないといけない、と思うのでおれはひく。
「もう、じゃあやめるよ」
そんな言い方をされて、やめられてももううれしくもなんともないのに。
まやこはまったくもう、って顔をしてベッドに上がってくる。
少し冷たい空気と、あったかいまやこの体が同時に入ってきて、
おれはまやこだけを布団の中にいれるようにして布団をかけなおしてやる。
おれに身を寄せてきたまやこが、胸のあたりで上機嫌に笑っている。
「怒ったの?」
「おこってないよ」
「怒ったんでしょ。すーぐ怒るよね、じゅんちゃん」
顎にキスをされた。
本当は、こんな風に優位に立たれるのも嫌いなんだ。
だけど、まやこが動くたび髪から女の子のにおいがして、
そしてまやこに体を触られると、もうどうでもいいような気がしてしまう。
「まや」
「ん」
胸に手を当てながらまやこを呼ぶ。
セックスをする前の、何にも考えてない、素直そうな顔をしてまやこが答えた。
「ごめんね。一緒にいっぱいエッチしてね」
袖で半分隠れた手でおれの顔にふれながらキスをしてきた。
「ごめん」
頬にもう一度キスして離れたまやこをかき抱く。
「いいよ。もう、いいや。すげえ、もう、いいや」
小さく笑ったまやこにキスをすると、舌が入ってきて、
その小さくてあっつい舌を味わううちに、
いとしさみたいなものだけが体を満たした。