父はいわゆるエリートサラリーマンというやつらしい。
背が高くて、髪はまっすぐ黒く、
年甲斐もなくジーパンなんてはいたりするけれど、私は好き。
「香水、つけてるんですか」
朝、洗面台にむかっていると父が言った。
「嫌い?」
「いえ、私の女ではないので結構です」
「そう。これは真人君がくれた香水なの。
会いますか、真人君に」
初めてのボーイフレンドができたとき、
父は会わなかった。
「栞さんには似合わないネックレスを送る人に、
僕は興味ないです」
かっこいいなあ、と思ってしまった。
そして、彼とは別れてしまった。
「その香水」
父は私の肩までおりた髪を手にとって、
「なかなかかもしれませんね。
良い恋をね」
「ありがとう。真人君は、父と同じ匂いがするんだ」
父はこまったように笑って、
「避妊はしっかり」
といった。