本当は8時の予約にしたかったけれど、
込み合っているとかで7時からの二時間制、ということになったから、
僕はバイトが終わるとよりこの職場へと迎えに行き、
そこから直接お店に行くことにした。
職場に行くのははじめてだったから、少し早めに行動したら、
よりこの仕事が終わる15分前に着いてしまった。
たばこを吸いたかったけれど喫煙場所が見つからず、
なんとなく居心地のよいところを見つけて待つことにした。
よりこ、よりこ。
最近は、こう呼ぶことになれたけれど、
出会った頃はよりこさん、と呼んでいた。
今、そう呼んだらちょっとはじかしいな。よりこはどんな顔をするだろう。
年上だけど、間抜けなところがあって、
思わずなじるように名前を呼んでしまう。
よりこ、よりこ。
「よりこ」
声の方に目をやると、よりこが傘を広げようとしたまま振り返っているのが見えた。
離れてみると、よりいっそう華奢だ。
それに、後ろに立ってる熊のような男と比べると、いっそう。
男はまさしくクマのように大きく、そして穏やかそうな印象だ。
同僚だろうか。
名前を呼んだその男は、よりこのバッグをもった手を少し上げると、
少しあきれたような面白がるような表情をして、
それを見たよりこは、あ、と言ってから、男に近づいてバッグを受け取ると、
男を見上げて、ひひ、と笑っていた。
たぶん、しっかりしろよ、と言いながら男はまた中へ消えていった。
一人になったよりこに手を振ろうとしたが、
よりこが一向にこっちを向かず、真っすぐ男を見送っていたのでできなかった。
それが、なんとなくいやだった。
僕はたばこを吸うことにした。
よりこは僕がいることに気づき、煙草を吸っていることに気づき、
たぶん、少しがっかりしていた。