「一番ショックだったのはさ、

別れてこうすけくんがいなくなっても何にも困らなかった、ってことなんだよ」


鉄棒を握る手に力がこもった。力みすぎて、語尾まではっきり話しすぎたかもしれない。


「親が死んでも生きていけるんだ。恋人がいなくても困らないのは当然よ。

片割れなんて、そうなるもんじゃないよ。」


そうなるもんじゃない、は、なれるものじゃない、って意味だと思ったけれど、

少しして、ならないほうがいいって意味なのかなとひらめいた。

ただ、まるで片割れのような恋人がいる果歩にそれを聞くのは、ためらわれた。

そうなれるものじゃない、といわれるのはなんとなく空しいし、

ならないほうがいい、と言わせるのはしのびなかった。


かわりに

「私と片割れようよ」

というと、果歩はいつものようにこっちを向いてから少しうつむいて、

唇をそっとあげて笑った。


ああ、関係性が尊いのは、その瞬間だけに過ぎないのだろうか。

果歩とのような関係なら、きっと途絶えたって、永遠にいとしいだろうと思えるのに。

約束が欲しい、言葉が欲しい、安心が、保証が。

恋人には求めるものが多すぎる。


「それは」

愛さえあれば求めなくなるよ、と果歩は言った。